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【10周年イベント文字起こし】代表和田による基調講演

みなさんこんにちは。
11月17日に弊社創立10周年イベントを開催を開催いたしました。
今回は、第一部:弊社代表和田による基調講演の文字起こし版をお届けいたします。

  


自立への原点

株式会社小高ワーカーズベースは、住民ゼロの小高において持続可能な地域づくりを目指しています。その第一歩として100の事業を立ち上げ、この地に新たな風土を根付かせる挑戦を続けています。私たちの原点は、自分自身に対する怒りでした。政治家や企業の意思決定によって人生が左右される現状への憤りから、本当の自立とは何かを問い始めたのです。

私は原発事故で6年間、避難生活を送りました。当初は会津若松に滞在し、ベンチャー企業で働いていたため「お金を稼ぐことこそ自立」と考えていました。しかし、事故当時、食料やガソリンすら手に入らない状況を経験し、金銭によらず助け合える関係性や居場所が生存の鍵であると実感しました。自立とは、そうした支え合いの仕組みを多く持つことなのではないか。避難生活を送りながら、その在り方を模索していったのです。


「卵が先か、鶏が先か」を越えるために

避難指示解除準備区域への立ち入りが自由になったとき、私は会津若松から小高区へ通い、手探りで活動を始めました。
地元商店街と連携して高齢者ファッションショーを開催したり、ゆるキャラの着ぐるみで地域を盛り上げたり、青森・大間町を訪れ原発誘致の現状を自分の目で確かめたり。

さらに消防団に参加するほか、NPO「浮船の里」と養蚕・絹織物再興のプロジェクトを立ち上げるなど、多方面から復興の糸口を探りました。

しかし、街は一向に変わりませんでした。ゴミは回収されず、工場は倒壊したまま。沿岸部も手つかず。七五三で小高神社に申し込んだのは我が家だけという事態に、若者が戻らない現実を痛感しました。暮らしと仕事がなければ誰も帰らない。しかし、サービスを提供する事業者にとっては人がいなければ商売にならない。このジレンマを解決するには、自分で事業をつくり、働く人も顧客も同時に生み出すしかないー。そう決意して小高ワーカーズベースを立ち上げました。

街に仕事と拠点を生み出す

誰もいない街にワーキングスペースを整備し、まずはひとつ、街にあかりを灯しました。


また、日中出入りしている作業員さんや住民に向けて「おだかのひるごはん」という食堂を。さらに南相馬市から受託して「東町エンガワ商店」という仮設スーパーを運営し、若い女性が魅力を感じる仕事を創出するためハンドメイドのガラス工房を起業。8ヶ月ほどで3つの事業を立ち上げたものの、気づけば30代となり、より体系的な経営の知識が必要だと感じ始めました。

世界の再生モデルから得た示唆

私は経営を学ぶためグロービスのビジネススクールに通い、海外へ視察にも赴きました。
ニューオリンズはハリケーン「カトリーナ」被災から10年、投資家が倉庫を購入して起業家を集める「プロペラ」というインキュベーションセンターを設け、教育格差や食料問題を新たなビジネス創出で乗り越えていました。


デトロイトは財政破綻と自動車産業の衰退で人口が激減し、治安も悪化。そこで投資家が廃墟ビルを購入し、起業家を集め公共機能をビジネスで補完することで治安や生活環境を改善。

ポートランドでは地元資源を活かしたアロマオイルの製造や活版印刷の復活、シェア工房「ワーク・トゥギャザー」など、多様な事業が展開されていました。これら世界の動きは、小高パイオニアヴィレッジの構想を生む原動力となりました。


起業家の集積と支援

Next Commons Labと連携して起業家誘致・育成を開始し、小高パイオニアヴィレッジが誕生。NARUは「シェアショップ」のコンセプトで事業を拡大し、NASAプロジェクトとして29歳以下の若者支援にも乗り出しました。



試行錯誤の末、これまでに27の事業を立ち上げ、47人を雇用(現在は15人)。60人を超える学生インターンが関わり、移住者43人、Uターン11人を迎え、その家族や後続の移住者も増えています。


ガイアの夜明けやEテレ「オン・マイ・ウェイ!」での紹介、小中学校の道徳教材としての活用など、多くの方々に認知されるまでになりました。

これからのOWBのあゆみ――地域から全国へ

社会はこの10年で大きく好転したとは言えず、分断や戦争、災害の激甚化など課題は山積しています。そこで私たちはビジョン「自立した地域を地域者が実現する」と、「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」ミッションは継続しつつ、対象を「小高」から「全国の地方」へ広げます。


社名は「OWB株式会社」へ。小高ワーカーズベースの頭文字を取りつつ、「Our Will Becomes…」という意味を込め、ロゴも群青色に刷新します。


これからは大規模災害時のレジリエンス向上やリスクヘッジを視野に入れ、教育や研修事業を通じ、他の地域が自力で課題解決できる支援を行います。また、福島県で顕著な女性減少の問題に取り組み、子育て世代の女性が求める仕事を創出し、地域課題の解消へと繋げていきます。

改めて、深い感謝――新たな10年へ向けて

ここまで活動できたのは、多くの方々の助力があったからこそです。私たちを支えてくださった皆様へ心からの感謝を捧げます。これまでの歩み、これからの挑戦に共感いただける方々は、ぜひ小高に足を運んでください。これからの10年も、どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴、誠にありがとうございました。


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