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OHDAIジャーニー【第2話】 旅する鴨台盆踊り-地域から広域へと拡張する盆踊り②- <第14回鴨台盆踊り>

大正大学客員准教授
第14回鴨台盆踊り担当教員
齋藤 知明

※本稿は、大正大学地域構想研究所公式サイトに掲載されたコラムを、このシリーズに沿って表現を変えて転載しています。

アフターコロナで選択される地域行事

前便では、昨年開催した第13回鴨台盆踊りは2日間で1万人以上の来場者を迎えて盛況だったことをお伝えしました。一昨年の第12回鴨台盆踊りでも1万人を超えており、コロナ禍以降、祭りを渇望していた市民がとても多くいたことを実感しました。

新型コロナが五類へと移行した後、全国各地でたくさんの祭りが復活しました。盆踊りも、まちのあちこちで見かけることができました。一方で、祭りの運営や担い手がコロナ禍による空白の3、4年で不在となり、存続を諦めたところも少なくありません。

コロナ禍によって、人々は実際に集まることの意義の再確認と再検討をした上で、祭りの再開あるいは廃止へとそれぞれ舵をきりました。鴨台盆踊りはコロナ禍においてもオンラインで継続的におこなってきたことで対面実施の再開へのハードルは低く、開催した後は幸いにも多くの市民に受け入れてもらいました。ここで重要だったのが「盆踊り自体を実施すること」ではなく、「盆踊りをすることで、地域を盛り上げたい、人々の笑顔をみたい」という理念の醸成だったと感じます。つまり、盆踊り自体は手段であり、あらためて地域振興・社会貢献としての目的を学生や関係者と再確認できた期間がここ数年のことでした。

第12回、第13回の2年をかけてその理念が浸透し、他の地域の盆踊りにはなかなか存在しない20歳前後の担い手が育ったのが鴨台盆踊りです。そして、その理念が内側だけでなく、外側にも伝わっていきました。第13回終了後には、他の盆踊りから鴨台盆踊りにいくつかの出演依頼がありました。ここでは、そのうち2つのイベントについて紹介します。

輪の中心で踊る大学生

子どもに盆踊りの魅力を伝える-さいたま市立大宮小学校創立150周年記念盆踊り-

一つ目は8月19日に開催されたさいたま市立大宮小学校の盆踊りです。この盆踊りは、大宮小学校創立150周年記念イベントの一環でした。45年ぶりに復活させるとのことで、ぜひ大学生に盛り上げてもらい、小学生を楽しませたいと依頼をいただきました。PTAの役員の方からSNSのDMに直接連絡があったのですが、その理念に共感し参加することを決めました。

PTAの方々による手作りの盆踊りでしたが、学生15人とともに大宮小学校を訪問しました。盆踊りが始まってからは、地域の盆踊りサークルの方々と交替しながら櫓の上で踊りを先導。周囲で踊る小学生たちとも、踊りの振りつけを教えながら笑顔で踊ることができました。

フィナーレでは「大学生のお兄さんお姉さんにたくさん盛り上げていただきました。おかげで子どもたちも踊りやすかったと思います。ありがとうございます」との御礼をいただきました。この言葉で鴨台盆踊りの価値を再確認できたと思います。地域の盆踊りを見ると、そこにいるのは高齢者と小学生くらいの子どもが大半で、10代20代30代の若者をなかなか見ることができません。世代間交流のハブとなる若者がいることで子どもたちが踊りやすくなり、どんどんと輪が広がっていきます。今後大宮小学校で継続して盆踊りが実施されるのかはわかりませんが、小学生に確実に盆踊りの魅力が伝わったと感じました。

櫓の上で子ども達と踊る

広く易しく日本文化を伝える-隅田川駅貨物フェスティバル 2023-

二つ目は9月24日に開催された隅田川駅貨物フェスティバル 2023での盆踊り企画です。ここでは、前回紹介した大阪の盆踊り団体・スターダスト河内とともに#万博音頭を踊るため、出演依頼を受けました。万博首長連合が主催しておこなった大阪・関西万博のキャンペーンでしたが、「盆踊り」というコンテンツがいかに日本文化を広く易しく伝える手段となっているかを実感します。

東京オリンピックの閉会式で最も盛り上がったコンテンツが東京音頭でした。わずか5種類の振りを何度も繰り返して、さまざまな国の方々が一斉に踊って一体感になっているのを、今でも覚えている方はいるのではないでしょうか。

この日も、さまざまな地域の盆踊り団体の方と初めて顔を合わせたのですが、一緒に同じ曲を踊ることで、即座に一体感が生まれました。そして、その様子を海外から来たであろう方々が興味深そうに観ていました。盆踊りは、世代間交流・地域間交流のツールであるとともに、さらには国際間交流の"言語"の一つであるとも感じた一幕でした。

様々な団体と一緒に盆踊り交流

今年の盆踊りは・・・

上で紹介した2例以外にも、「Reborn Nakano」「うえの夏まつり〜不忍夢〜 盆踊り」などにも参加しました。鴨台盆踊りは西巣鴨・滝野川の地域を超えて展開し、世代間交流・地域間交流を果たしています。そして、今後ますますその方向性を強めていきたいと思っています。

今年は盆踊りを通じた世代間交流の目玉として、高校生と大学生がともに一から企画を作っていく「高大接続」チームが結成されました。文京学院大学女子高等学校と昭和鉄道高等学校の生徒と大正大学の学生が4月から、周辺地域の若者を巻き込んだ企画を考えています。

また、地域間交流の目玉として、今年1月1日に起こった能登半島地震の被災地である石川県七尾市のみなとヨイサを踊ります。6月上旬に鴨台盆踊りの学生と共に七尾市でボランティアを実施したことを縁に、盆踊りを通じて東京から復興を祈願します。

これ以外にも特徴があるのですがここでは割愛します。ぜひ鴨台盆踊りのSNSをご覧になっていただければと思います。このように、盆踊りを手段として、多くの意義やストーリーを伝えていきたいと考えていますので、ぜひとも7月5日、6日に大正大学にお越しください!

高校生と大学生が一緒に企画を考える

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