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「BLUE SOUNDS」は新しいシーンを創れるのか?〜サバイバルオーディションのその先について考える〜

“ラップのお星様”
YORO が歌う「Blue print」のバースにふと耳が留まった。なかなか強烈な代名詞である。
“アイドルがラップすると飛んでくるビール瓶とFuck”がすぐに頭に浮かんだ。今年は何度も聴いたSKY-HIの楽曲「タイトル未定」
SKY-HIがアイドルラッパーと揶揄された苦しみは何度もライブで聴かされてきた。YOROもまたその1人なのか?

その日は定期公演化された「BLUE SOUNDS 第一章」に初参戦。オーガナイザーの三井瞭は日本最大級のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」に参加したのち日韓合同グローバルグループNIK(現在は解散)を経てYOROとしてソロ活動そして現在は46RecordsのCEO。27歳でなかなか紆余曲折な人生だ。

【DANCE】×【RAP】×【FASHION】新たな“BLUE ”の提案をテーマに発足されたライブイベント「BLUE SOUNDS」
“新たなBLUE?”イマイチ読んだだけでは主旨がわからない。
遅れて会場に入った途端、前列に陣取るスマホを掲げた女性を多く見かけた。“あー今日もそっち系?”自分の中で一旦ボーダーラインが引かれた。

自分のお目当てはroomR。KEN THE 390がプロデュースする本格的ラップユニットだ。roomRを応援し始めていろんなライブ現場に参戦したが、駆け出しで、やはり同じくオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN season2」出身の彼らには若い女性ファンが多く“そっち系”のイベントが多い。
ライブ参戦の主なる目的はスマホ撮影、お目当てアーティストをひたすらスマホで追って自分のカメラに収める。大抵はオーディション時代から追いかけていて熱は高い。ライブ中は手ブレ防止のためかあまり揺れない地蔵スタイルだ。
自分はラップ音楽が好きで聴いているが割と小心者だ。現場が大人しいとそれに釣られてしまいハンズアップした手も自ずと下がってテンションが落ちてしまう。

「スマホで撮ってくださってる皆様…」何曲目かの曲中にYOROが話し始めた。(ん?やっぱり撮影注意するのかな?)
「いつもありがとうございます。でもこうやってここに足を運んでくださったということは少しでも僕たちの音楽に何かを感じてくださったということですよね。撮影はもちろんオッケーですが、少しでも僕らの音楽に何かを感じてくれれば嬉しいです」
YOROの呼びかけはあまりにもソフトだ。掲げながら軽いハンズアップは増えたがスマホを下げた人はほぼいない。
しかし自分には彼の気持ちと優しさが同時に伝わった。(もっと音楽を届けたいんだろうけど、ここでは難しいね。)
彼の想いに少し共感が生まれた。

サングラスが少し不似合いなベビーフェイスなYORO。でも繰り出されるラップは意外に骨太だ。
「Blue Print」YORO安藤優の共作。
安藤優といえばYOROと同じオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」だけでなくBMSGオーディション「MISSION x2」にも参加していた。その後のことは気になっていたがこんなところでラップしてる彼に会えたのは嬉しい。

“今の仕事辞めたいから本気でかます!”と安藤優が叫べば
“時給1,500円じゃ決められる価値なんかじゃ夢すらみれねぇよ。”とYOROが返す。

“トイレの掃除も笑顔でやる今俺C·E·O“
大変だ、CEOはまだバイト中⁈
「BLUE SOUNDS」のスタンディングチケットは3,000円、かなりチープな価格帯だ。これじゃ彼の2時間分の時給にしかならない。

“BLUE ”のタグはどこにある?確かにドレスコードは青だった。青シャツを真面目に着用してきたけどそこじゃない。好きな服しか着ていない自由奔放な出演者たち(笑)あえて言えばオーディション?選ばれなかった人が多いフェスだ。

「BLUE SOUNDS」は9月から毎月計4回定期公演する。
“トイレ掃除のCEO”が心配になった自分はかなり厳しいスケジュールをやりくりして2回目にも参戦した。
この日はいつもの渋谷DAIAではなく六本木のunleavel tokyo ハコの大きさ的には渋谷と同じスタンディングで200人程度。今日はステージ後方と右側に大型カメラで撮影スタッフが待機してる。
1回目の地蔵スタイルでテンションを落とした自分はHIPHOP好きの友人Sと事前に打ち合わせした。
とにかく声出して好きに踊ろう!どんな場所でも自分を貫ける友人は心強い。好きに踊れるライブはやはり楽しい。
「今日はお気づきの通り撮影が入っています。後日映像をYouTubeに上げますので楽しみにしててください」ライブの最後にYOROが話した。ライブの拡散力を上げるため?もしかしてスマホ撮影防止のため?YOROの狙いはわからない。(こんな本格的な撮影、費用高そう…)このころはもう常にCEOの懐を心配するマインドに(笑)

第三章は11月23日。場所はまた渋谷DAIA。
今日もまた友人Sとその仲間と一緒だ。Sは数日前に負傷し全治3週間。ヘルプマークを付けての参戦だ。受付で事情を話すとスタンディングエリアなのに椅子を貸してくれた。ありがたい現場だ。
3回目なので全ての出演者の名前も曲もだいたい覚えてきた。
ラップイベントのはずが実はそんなタグも存在しない。ジャンルもみんなバラバラだ。ラップもあるがロック調もある。聴かせる系のちょっと刹那なラブソング。ダンスメインで見せてもくる。それぞれがオリジナル曲でたっぷり魅せる自分だけの世界観。
ここではアーティストは自分の好きを一歩も譲らないのだ。

今日は友人Sが手負いのため会場の盛り上がりを心配していたが、なんかいつもと違うテンション。初っ端からスタンディングエリア後方から声出しがすごい。見渡せば前方席でも踊ったりハンズアップしたりしてる人がチラホラ。どうしたBS!今日はオープニングから熱い!!

1番楽しみにしてたroomR安藤優のコラボ曲「Force flow」。11/11日に発売された安藤優の1stアルバム「Drink it up」に収録されている。

“頭を抱えていたんだ毎日。だけど掲げていたんだdream。悔しさ溢れていたあの帰りに心の中が言った
“I can’t breath”

何度悔しい帰り道を歩いたんだろう?オーディションは2回しか知らない。でもきっとそれだけじゃないはず、今日は何度目のトライアンドエラー?彼のリリックはそんな自分を絶対に諦めない。

“コベーン!!”
roomRと安藤優の3人が笑いながらのけ反る。“Cobain”、ロックの反逆者カートコバーンのことか?
主流に届かなかった3人は亜流にも流れない。

“ここから吹かせる新しい風”優しい風が会場全体を巻き込んでいく、最高のForce flow

ラストソングはお決まりの「I do」。仲間たちと好きにやりながら道を走り続けることを歌ったマイクリレー。
どこか牧歌的なのどかなメロディーは長い長い旅路でそれぞれが好き勝手に口ずさんでるような緩さと楽しさだ。アーティストたちが好きなフローで気持ちを乗せて届けてくれる。

“BLUE”てなんだろ?みんなまだ旅の途中、終着点は見えていない。でも見せてくれたのは最高の今。
ここから奏でる“SOUNDS ”は熱くて尊い。
後ろから聞こえるアーティストの野次。出演者の笑い声。こんな小さな会場だからみんな気付いてる、でも誰も後ろは振り向かない。

譲れない好きはアーティストだけじゃない、ここにいる観客もみんな自分だけの好きを追いかけてる。主流だけに流れない個性派集団!(笑)でもちゃんと気持ちを受け取るマインドは忘れてない。
自分から勝手に引いていたボーダーラインを少し恥じた。
大丈夫!YOROの気持ちは音楽と共に少しづつみんなに届いてる!

「BLUE SOUNDS」は次(12月21日)でFINAL。この熱い第三章を見せられたらもう次も行くしかない。CEOの懐を心配してるからではない(笑)ここから吹かせる風は今吸っておかないともったいない!
この小さな小さなライブイベントにどれだけの意味があるのかはわからない。でも今、明日も仕事が早い自分にこうやって朝日が見えるまでこの駄文を綴らせるほどには人のこころを動かしているのだ。

引かれたボーダーラインに入れないなら居場所はここから作ればいい。そこから熱い風吹かせればそのうちみんなが振り向くから。

この世界に「BLUE SOUNDS」からまだ見たことのない新しい音楽シーンが生まれることを祈っている。


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