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「BLUE SOUNDS」は新しいシーンを創れるのか?〜サバイバルオーディションのその先ついて考える(FINAL公演1)〜


12月21日、いよいよ「BLUE SOUNDS‐24TOKYO FINAL」が始まった。
場所は渋谷のDAIA。キャパ120名のライブハウス。
9月から定期公演が始まった「BLUE SOUNDS」今日は満員御礼の大入りだ。いつもは余裕のあるスタンディングエリアであったが、今日は立ち位置を確保するのが難しい。
会場は奥の階段部分まで観客でひしめいている。


”Yeah~Dear my friend,Dear my friend,Dear my friend"
オールキャストによるOpening songが鳴り響いた。いつもながらライブの始まりにしては不思議なフレーズだ。
”ディア、マイフレンド 親愛なる友達に向けた歌”から今日もステージの幕は開けた。


1.Lil Noah と「2番線のホーム」


「あの人苦手…ちょっと喋りすぎ」
初回公演のあと友人が言った。
確かにLil Noahはよくしゃべる。間髪いれず入れる鋭いツッコミは自分のフィールドで磨いたスキルか、もともとおちゃらけた性格なのか。

「お金では買えない夢を掴みたい”と熱い思いを胸に芸能界に飛び込んだ。俳優としても活躍中の超セレブイケメン。」 webサイトで見つけたのはなんだか逆フィルターかかっちゃうような酷いプロフィール(笑)

「Noahくん、普通に優しい人だった」
11月の第三章公演の後、落としたピアスを探しにいった友人が言った。
なんと、たまたま居合わせたLil Noahが心配してピアスを探す友人にしゃがんで声をかけてくれたらしい。その日からあっけなく私たちのLil Noah評は覆った。(笑)
実は例の逆フィルターのせいかここまであまり心に入ってこなかったLil Noahの歌。そんな先入観も取り除かれたファイナル公演前に彼の音楽を遡ってみた。

2つのフルアルバムに4つのシングルとEP。featuringも多くブルサンメンバーの中ではリリース数も1番多い。(俳優業の傍らでこんなに?)
果敢に多彩なジャンルに挑戦し、やりたいことで溢れている楽曲がずらり。
そこには音楽への誠実で熱い思いと試行錯誤の日々が感じられる。
(きっと勉強家で努力家、そして絶対音楽が好きな人。)
セレブの道楽稼業かと勝手に避けていてごめんなさい(笑)

夕暮れ時のような少し切ないイントロが満員のフロアに流れた。
「僕がBLUE SOUNDS初めてのときに1番最初にやった曲です。」
Noahが振り返るように言った。
「2番線のホーム」はNoahとiyoのfeaturingソング。BSサウンドの中では指折りの名曲だ。
まだ不定期開催だった第一回BLUE SOUNDSの公演で、Noahがiyoのfeaturingゲストとして招かれ初披露した。Noahにとっては思い入れの強い楽曲だろう。

”2番線のホームに君がいなくても僕はいて”

感傷的なリリックをNoahはあくまで無機質に歌い始めた。
たくさんの音楽にリーチしている彼ならではの狙いか、ボカロ系の表現のようだ。ビジュアルの強いNoahだが是非二次元映像で聴いてみたいとも思わせる。

”残る2ショット、今1人重症、移り変わる街並みは空虚”
勉強家なNoahの感情的かつ秀逸な韻踏みが光る。平らなつぶやきは何度でも繰り返し聴いていたい癖になるフレーズだ。

心の痛みを1枚1枚細やかにアルバムにしまい込んでいくような丁寧に綴られていくリリック。
Noahの情景描写には広い視野と同時に繊細な感性を想像させる。
そこにiyoの色のあるボーカルが加わり
BLUE SOUNDSのステージは完全に夕焼けの2番線のホームに変わった。

”あの日出会えて腕に抱いて、繰り返す日々に嫌気がさして
終電間際1人君を待つ改札終わりにしたくて”


(あの日の恋を手放したのは優しさか。)
知らない人の落とし物まで一緒に探してしまう、そんな優しいNoahはいろんなことに自分で区切りをつけながら生きてきたのかもしれない。

おちゃらけたキャラは会場を盛り上げるための優しさ。鋭いツッコミは大人しい共演者への思いやり。
誰よりもBLUE SOUNDSを俯瞰でみてるNoah。

公演最後、オーガナイザーのYOROが目配せしながらNoahにラストの定番ソング「Ⅰdo」の曲ふりを頼んだ。
「ブルサンと言えば~」
オーディエンスが次の一言を息を凝らして待っている。

「ブルサンと言えば~!月が綺麗ですね!」
今日一番会場が盛り上がった瞬間を瞬時に切り取った鋭い返しに会場が沸いた。
今日もNoahは最後までフロアを盛り上げてくれた。

2.roomR(RICK、 REIJI)と「Dobi-dobi」


roomRはMCが苦手だ。
彼らの所属しているボーイズグループMaisonBでは2人はラップ担当で鋭いラップを展開しているが、MCタイムとなるといつも遠慮がちであまり話さない。

「僕らMC苦手なんで…」
第一章の時RICKが言った。(あー、言っちゃった…)ブルサンメンバーはみんな頑張ってる。
オーディエンスの皆さんがどう思うのか心配になった。

控えめで謙虚な彼らはどこのフェスでも後ろに下がりがち。サバイバルオーディションなら真っ先に落とされるタイプの人間だ。
KEN THE 390に見出された若き才能に期待を寄せているroomRファンの一人としてはいつもそれで気を揉んでいる。

今年8月にリリースされた1stアルバム「UP2U」に収録されている「Dobi-dobi」はフックで繰り返す「ドビドビ」というキーワードが耳に残るアップチューン。
“Dobi-dobi”とは服が伸びるというroomRスラングで”自分たちの未知の領域に飛び込んでいき、ステージもスタンスも大きくしていこう”
というroomRの強い意志が込められている。

そんな気持ちをオーディエンスに伝えることもなく終わってしまった第一章。
それでもブルサンメンバーは優しい。後ろでDobi-dobiポーズ(Tシャツを肩で摘み上げるポーズ)まで入れて懸命に盛り上げてくれる。

BLUE SOUNDSは暖かい。
(もっと思いっきり飛び込んでほしい。)そんな気持ちを込めて次からはこれまで以上に声出しに励んだ。
11月の第三章からはDJ MST(MaisonBのメンバー)が後方支援に加わったこともあり、Dobi-dobiは少しづつオーディエンスの反応を感じ始めた。
roomRスラング「ドビドビ」がだいぶブルサンに浸透してきたようだ。


馴染みのある愉快なイントロが会場を駆け回った。観客のボルテージが一気に上昇する。4度目のDobi-dobiは始まりからオーディエンスの期待で満ち溢れていた。

「BLUE SOUNDS FINAL 、Dobi-dobiで行けますか!」
歓声に応えるようにREIJIが後方を仰ぎながら満席のフロアを煽った。

”Dobi-dobi!”「Dobi-dobi!」
”Dobi-dobi!”「Dobi-dobi!」

客席のレスポンスは今日一番の跳ね方だ。

後方応援のはずのDJ MSTと、なんとサプライズでMaisonBのメンバーの1人TECOがステージに上がった。
4人の息の合ったステージングでフロアはその時最高潮の盛り上がりに達した。
roomRファンだけではなく後ろにいた他のアーティストファンも自分たち以上に大きな声を出して盛り上がってくれているのが聞こえた。
あとで振り返って聞いたところ「roomRのステージは楽しい!!」と頬を紅潮させながら語ってくれた。何より嬉しいお褒めの言葉だ。

ブルサンメンバーとオーディエンスの優しさに包まれ「Dobi-dobi」は思いっきり騒げる楽しい楽曲に大きく成長した。
ありがとう皆さん!!!(※このあたりは冷静にレポできないことをお許しくいただきたい、泣)
そして毎回誠実に試行錯誤をステージにぶつけてくれたroomRにも心からのリスペクトを送りたい。

BLUE SOUNDSでパンパンに膨れ上がったTシャツはこれから少しづづ伸ばしてもっともっとDobi-dobiにしていかないとならない。
「Dobi-dobi」はオーディエンスと共にこれからもどんどん大きく育っていくはずだ。


「BLUE SOUNDS」って?


「BLUE SOUNDS」はアーティストを育てるだけではない。

「BLUE SOUNDS」に参加して今回で4度目だが、すべてのブルサンアーティストが化学反応を起こして影響し合い、あらゆる面で成長を加速しあっていることに驚いている。
回を重ねるごとに熱が高まっていくフロアは単に観客が場慣れしたからではない。純粋にパフォーマンスの質がどんどん向上しているのだ。

そして前回のレポでは豪胆にも揶揄ってしまった客席のスタイルだがそこにも明らかに変化が見え始めている。
私たちオーディエンスもまたフロアを暖める”BLUE SOUNDS流”の楽しみ方を学びつつある。

ファインダー越しで構わないので彼らのリリックにたくさん耳を傾けてほしい。彼らが身を削り吐き出したその言葉からは今の彼らの等身大の気持ちがより伝わるはずだ。
そうすることでまたアーティストとオーディエンスの距離が縮まりお互いにさらに成長していくだろう。
新しいシーンを創っていくのは何もアーティストだけではないのだ。

そして随所に散りばめられているオーガナイザーYOROの揺るぐことのない熱い信条とブルーな仕掛けを謎解きのように探っていくのもまたこの「BLUE SOUNDS」の楽しみ方の一つだろう。(機会があればまた自分なりの解答を投稿していきたい。)

新しいシーンの輪郭はまだ見えていない。
でもやはりここに”何かがある”ことだけは感じずにいられないのである。



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