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「BLUE SOUNDS」は新しいシーンを創れるのか?〜サバイバルオーディションのその先ついて考える(FINAL公演3)〜
「BLUE とは“音楽に対して誠実”ということです」
YOROは私が前から疑問だった
「BLUEて何だろ?」に答えるかのようにBLUE SOUNDS2024-FINAL-ステージのラスト、こう語った。
(BLUE SOUNDSは誠実…?)
“誠実って少し退屈”などと早合点しがちな自分である。YOROの話はすんなりとは納得できない。
例えばよく聞く
“音楽に真剣に向き合うこと”
しかしスタイルの差はあるにしてもアーティストは大抵そうじゃないのか?
YOROは日韓2つのオーディション番組を経て日韓合同グローバルグループNIKのメンバーとして2022年韓国・日本にてメジャーデビューを果たしている。
しかしその活動は残念ながら2年ほどで幕を閉じた。
とはいえ、その活動の中でだって彼ならきっと音楽に真面目に向き合ってきたのではなかろうか?
YOROの意図はハッキリしなかったが、
ただ一つわかったことは今日まできっと
たくさんの“音楽に不誠実”を目の当たりにしてきたのだ。
そして彼の思う“誠実”を実現するためにここで自ら「BLUE SOUNDS」を始めるしかなかった。
(もしかして、“誠実”でありたかったのに叶わなかった瞬間があったのかもしれない…)
そんなことを思うと、今ここで笑顔を振る舞う彼に、少し胸が痛くなった…。
5.iyoと「Xmas with you」
「メリークリスマスだね」
iyoがフロア向けてにこっと微笑んだ。会場に神聖な鈴の音が鳴り響く。
BLUE SOUNDS最終公演の今日はクリスマスイブ3日前。iyoはとっておきのプレゼントとばかりに「Xmas with you」を歌い始めた。
今日はエスキモーのようなボアがついたフライトキャップを深く被っている。
大きなサングラスで目元は見えないが、いつもながらオシャレで可愛いいでたちだ。
ゆっくりとステージを右往左往しながら歌うiyo。音に乗り軽く揺れながら歌う姿はとても気持ちよさそうに見える。4回目のBLUE SOUNDS。こんなiyoのちょっと緩めなスタイルにもすっかり慣れた。
ビアノの旋律と少しエッジのたったフィルタリングボイスが美しく共鳴する。マイクにによく乗るiyoの声。軽くても切なさがしっかりと伝わる。
「クリスマス、もうすぐですね。この曲今YoutubeにMVとして上がっているんでよかったらiyoで検索してください。最後まで楽しもう、ね」
間奏の間にぼそぼそとしゃべるセリフのようなMC。最後の“ね”がちょっと可愛い。
やる気が無さそうに見えてしっかり告知を忘れないところもいつものiyoだ。
”その痛みを分かるとは言えないけどただ君を守りたい"
慎重に言葉を選ぶ、嘘のないiyoのリアルはいつもリリックの中にいる。
「ありがとう」
歌を届け終わったiyoは小さな声で噛みしめるように呟いた。口元から嬉しそうな白い歯がこぼれる。
ふわっとした暖かい空気がフロアに流れた。
iyoを見てるといつも不思議な気持ちになる。正直言って何を考えてるのかよくわからない(笑)
音楽を通して何かのメッセージを訴えかけるつもりもなさそうに見える。
iyoがファイナルの最後に用意したのはお馴染みの「Feel like」。
「もしもしiyoくん、今日会いに行ってもいい?」
こんな女の子からの電話の誘いがフロアに流れる。
「いいよ」
iyoが少し照れたように答えてイントロが始まる。
会場からは軽く黄色い歓声があがった。
こんな珍しい曲フリに、初めて見た時は一度で存在を強く焼き付けられた。
これもファイナルの今日にはすでにBLUE SOUNDS名物。
この“いいよ”をみんな楽しみに待っている。
“好きというのは夜だけ”
何度も繰り返す「Feel like」のキラーフレーズはかなり不誠実。
YOROの言う誠実とは歌詞のコンプライアンスともあまり関係はなさそうだ(笑)
今日の「Feel like」は他の曲とのメドレーバージョン。間奏で軽く踊りながら曲を繋げていく。
プロフィールによると“振り付けもこなす”とある。もしかしてダンスで見せていた過去があるのかもしれない。
しかし今は、この音にただ乗りたいから好きに動いている。そんな風に見えるラフなスタイル。
iyoは自由気ままだ。
ステージでいつも音と楽しく遊んでいる。
右腕に伸びたタトゥー。今時HIPHOPアーティストなら当たり前に施してるが、それだってアイドル出身者の多いBLUE SOUNDSでは珍しい。
「YOROくんからDMをもらったことから始まった」
iyoはステージのラストでBLUE SOUNDSの始まりをこう語った。
iyoは定期公演化前の初回公演から今日まで最多出演をしている。
自由で個性的なiyoを語るのに“誠実”はあまり似合わない単語だ。
でもYOROはBLUE SOUNDS始まりにiyoのことを真っ先に選んだ。
(BLUE とはiyoのことか…。)
急にそんな風にひらめいた。
自然体のiyoは、YOROが語る傍らで、まるで自分の部屋にいるかのように共演者にイタズラに話しかけている。
自由に音楽を楽しみ、自分の音楽をただ純粋にオーディエンスに披露する。
誰に媚びることもない…。
YOROにとってはiyoこそが
憧れた「BLUE SOUNDS」そのものなのかもしれない。
6.YOROからのDear my friends
思わず、くすりと笑いそうになった。
「FINAL らしく仲間と作ってきた曲をメドレーでやります。仲間を全員ステージに呼んでいいですか?」
YOROがやっとこの時が来たとばかりに目を輝かせてステージに向けてこんな風に声を張り上げたからだ。
FINALの今日、私はYOROがiyoとfeaturingした「Gotta go」を聴きたかった。
「心蝕まれていくダンジョン 世界染めるならBLUEに着色 フィルターじゃ誤魔化されないフィクション 夢と現実境界線引こう」
“Give me love”とサビで歌われるがただのラブソングではなく、始まりの歌だ。
YOROがBLUE SOUNDSに向かうまでに置いてきた過去との決別の日々が綴られてる。
YOROは傷みを歌詞に閉じ込め、
世界をBLUE に染めるためにここにきたのだ。
今日YOROはすでに元NIKの韓国人メンバーHADY と「Make up」、roomRと「Count on me」と新曲コラボを2曲披露している。歌ったソロ曲はショートバージョンの「NEGAPOSI」と「Cider」2曲のみだ。
(あれ、もうおしまい?)という私の軽い落胆をよそに、そんなことより早く仲間をステージに呼びたい様子のYORO。
そんな仲間想いの彼に思わず笑顔になった。
切なげなイントロから始まるメドレー。
暖かい声のフェイクを乗せながらNIisがゆっくりとステージに登場した。
流れゆく記憶の瞬間を切り取ったラブソング「Gone」。切々と感情を込めて2人で順に歌い上げる。
iyoが現れ今度は「Gotta go」を共に歌い会場を盛り上げる。感慨深そうにアイコンタクトしたiyoとYOROはしっかりと握手を交わす。
続けて精悍なイントロで始まる安藤優との「Blue Print」。
誇らしげに2人で掲げるBlue の旗のようなこの曲はBLUE SOUNDSのシグナルだ。
YOROの力強いバースで熱くなったフロアに、激しいビートのロックナンバー「ART」が繋がれた。
Lil Noahがステージに上がり力強く煽りを入れたラップで会場全体を盛り上げて最後にバイブスを伝え締めた。
残念ながら私のお目当ての「gotta go」はお気に入りのバースの直前でブチ切られた(笑)
でも、私は嬉しかった。
なぜならまた一つYOROのBLUEな仕掛けに気づいたからだ。
「これからBLUE SOUNDSの歴史を一緒に見てくれるよね。」
ステージのラストに韓国からゲスト出演したHADYにYOROは聞いた。
すぐには理解できなかったHADYにまた再確認するように語気を強めて言う。
“ずっと一緒に進もう”そんな覚悟の一言だ。
2度目にようやく理解して「是非よろしくお願いします」とHADYは力強く答える。
YOROはしっかりと頷き、笑顔でまた一つ肩に約束を背負い込んだ。
(オーディションは苦手だっただろうな…。)
笑顔のYOROを見ながら考えた。
彼のオーディション番組は観たことがないが、きっとそうだと思う。
あれは例えどんな状況におかれても自分を貫ける人だけが勝ち残れるサバイバル。仲間のことを話す時が何より1番幸せそうな彼には全然向いてない。
しかし“振り返ることを臆さない”そんな少し不器用な歩みが音楽として奏でた時にさらに繊細に澄み渡って響くのだろう。
BLUE SOUNDSのBLUEは、だいぶ透明なのである。
BLUE SOUNDSはYOROの”誠実”を果たす場所。
羽を休めている仲間にはそっと声をかけて、届かなかった仲間の想いはみんなで引き継いで奏でる。
Yeah〜Dear my friends 、Dear my friends 、
これは特別な青いメッセージ。
YOROはいつだって真っ先に後ろを振り返り仲間に呼びかける。
Dear my friends
BLUE SOUNDSは今日もオープニングには少し不似合いなこんな歌で幕を開けた。