武蔵野のー

 今日暇に任せて、武蔵野公園のあたりを歩いた。午前中に、思い立って今日はめちゃくちゃ歩く日にするぞと決めて。甲州街道を東へ、ほんで看板に文字が見えた多摩霊園というデカすぎる霊園を多分北西方向に通り抜けたら(多摩霊園もレポートしたいが、結構墓参りの人が多くて見て回るのは挙動不審かなと思った)、すぐ野球場があってそこが武蔵野公園だった。

 武蔵野公園はもわっと湿気っぽいもの、霧っぽいものが立ち込めていた。ちょうど昨日雨が降ったのもあるかもしれない。
 バーベキュー場を抜けると野川があった。河川敷はコンクリートなどでの整備は全くなく、植物が繁茂していた。ずっと獣道が続くみたいな川だった。なんか北海道とかにありそうな川だなと思った。小学生がルアーを鯉に向かって投げていた。鯉は一瞬反応して、追うのを止めるを3回くらいやっていた。
 野川をブラブラ歩いて、トンボが飛んでるのを眺めたり、大雨の時に氾濫を防ぐための調節池の説明の看板を読むなどして過ごす。詳しい説明は覚えてないけど、武蔵野公園が全体的に吸水性の高い土地らしいことが書かれていた。なんかグランドや原っぱの地下にも水が流れてる構造で、公園全体がクッションの役割を果たしているらしい。だったような気がする。俺が説明を読み間違えてる可能性はあるので違ったらごめんなさい。なんかでもとにかく、野川の氾濫に備えてまっせ!という気合の入った看板があちこちにあって、この地面からもわもわが現出している感じもそういった土地特有のものなのかなと思った。
 池を通り過ぎて、坂を上がり、コンクリートの道、地図を見て武蔵小金井駅までの地図を見る。携帯の充電が切れていたので。確認して、多分、南西方向へ。
 住宅街と、鬱蒼とした林が隣り合う街は、ちょっと京都の左京区周辺を思い出した。特に修学院とか。木から出るマイナスイオン的なグリーンミスト的なものを東京にきて久しぶりに感じた。街は、高級なんだけど、下卑じゃない、文化度の高い金持ちの雰囲気が漂う。家も、オーダーって感じ。左京区の浄土寺周辺にシェアハウスで住んでいた時とちょっと近いと思った。ただ、左京区は、地の小綺麗な金持ちに混ざって、京大の貧乏学生が共存、共栄していて、その風景がおかしかったなと思う。ええ犬連れた奥さん同士が犬をきっかけに世間話をしている横を、猫背でヒゲボーボーでロン毛の兄ちゃんが通り過ぎる風景を2、3回見たことある。武蔵野公園周辺には、もちろん貧乏学生はいなかった。
 政治姿勢というか、俺が住んでいる周辺は結構保守派の政治ポスターが多いのだけれど、武蔵野公園周辺は結構リベラル系のポスターが多かった。どうも、大きな道路の建設予定地になっているらしく、武蔵野の森林を守ろう!といったスローガンが散見された。説明で読んだのだが、東京を開発して行く時に森林保存の先駆けになったのが武蔵野公園周辺らしい。これもちょっと左京区っぽくて、俺が住んでた周辺では植物園を守ろう!のポスターがめっちゃ貼られていた。
 道を歩いていくと、美術の森といったところがあって、看板が目に入った。この辺りは国分寺崖線と呼ばれ、大岡昇平の『武蔵野夫人』の舞台らしい。読んだことはない。最近読んだ金井美恵子の『快適生活研究』に出てきたので、あっとなった。その本の中にも変に京都に憧れを持っている東京の人たちが出てきたな、と思った。美術の森は閉鎖されていた。

 歩いて行くと、小金井通りに出た。北へ行き、武蔵小金井駅。ちょっとこのまま帰るのも寂しくなって、すき家でチー牛食べて、180円の切符買って、中央線に乗り吉祥寺へ。井の頭公園をいつも通り一周して(大道芸やストリートライブをやっている人が多かった)、ドトールでチャイティー飲んだ後、本買いたいなーと思ったので、古本センターに行った。漫画が多くて、諸星大二郎とか、つげ義春とかが多かった。小説の棚に行って、ちょっと『武蔵野夫人』ないかなと思った。これだけ縁があるならちょっと読んでみたい。講談社学術文庫のゾーンに一冊だけ大岡昇平の別のやつがあったけどそれ以外なかった。代わりに国木田独歩の『武蔵野』があって、それ買おうかなと思った。裏面見たら、武蔵野の美しい自然を観察し、描いた的なことが書いてあって、おお今日の俺のことやんけと思いながら買おうと思ったが、こんぐらいの名作絶対青空文庫にもあるし、図書館にもあるし、ちょっとお金の算段をしちゃって、内田百閒のところ見たら結構豊富で、『間抜けの実在に関する文献』っていう欲しかったやつもあったけど、『武蔵野』買った方が今日の1日にオチがつくよなーと誰に奉仕するでもない自己満足的サービス精神に苛まれながらも、当然調べたら青空文庫にもあったので、結局内田百閒の方にした。名作というものを読んでこなかった人生なので、今年は暇もあるし読まなきゃなーと思ってるんだけどもね。というまあ、なんか特に大したオチのない、決まってはない1日でした。でも楽しかった。

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