読み間違えがすごく多い。

 俺は、読み間違えがすごく多い。し、多いね、と他人からよく言われる。

 恥ずかしかったのが、琴線をずっとことせんと読んでいて、実は、きんせんと読むと後から知って、ぐわああとなった。布団をぐしゃぐしゃにして喘いだ。と言うのも、知る一ヶ月前くらいの弾き語りライブでけっこう音楽分かってる風のおじさんが多分ポジティブめの評価をくれた時に(まどろっこしい言い方で、最初貶しにきたのかと思った)、「どんな音楽聞くの?」と質問してきて、「中学時代にブルーハーツが、琴線(ことせん)に触れて…」と回答。おじさんの雰囲気に、これは舐められたらあかんな、アホな感じでしゃべったらアホやと思われるな、と身構え難しい言葉を使おうとしたのが原因で、普段使用しないワードが口から出てしまった。おじさんは一瞬ちょっと「ん?」みたいな顔をして、そのまま会話は続いたのだが、後でおじさんがこの人きんせんをことせんって読んではるわ、漢字も読めへんしょーもないやっちゃなとなり、そのおじさんが噂好きで、いやーこの前長谷川っていう琴線をことせんって読んでるやつがいてさーと妻、息子、おじいちゃん、おばあちゃん、いとこ、はとこ、はとこの嫁さん、はとこの長男の栄太郎くん、長女のさやかちゃん、会社の同僚、最近また仲良くなって飲みにいくようになった高校野球でそいつのエラーが元で最後の試合負けたけど、そういう失敗談も今では笑って話せる俺たちっていいよねとなって、老後問題や息子の反抗期問題や腰痛や膝痛などの現実から一緒に逃避してくれるレフトを守っていた中井くんなどに、吹聴して、噂はねずみ講的に広がっていき、界隈では、俺は琴線をことせんって読むやつとして、否応なく認識され、ヒソヒソされ、居場所がなくなり、友人各位も、長谷川くんって琴線をことせんって読むんだ、ダサッとなり失望。俺が、おっすとか挨拶しても、困惑と軽蔑をないまぜにしたような、引き攣った笑みを浮かべ、なんか言ったか言わないかわかんない感じの音を口から漏らして、「ハハッ」と乾いた笑い声で、さっと10メートルくらい離れたところにいる集団の方へ行き、また俺についてヒソヒソしている。
 みたいなことにはならなかったし、俺も流石にそんなことにはならないと思っていたのだけど、それぐらい恥ずかしいのは確かだった。
 あとは、羞恥心をさちしんってずっと読んでた、場末もばまつってずっと読んでいた。指摘されても、後から知っても恥ずかしいなと思う。多分、俺が気づいていないだけで、もっと人前で間違えていると思う。これは、漢字の読み方よく間違えているなーと最近思った、というだけの文章である。

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