【レースレポ】ステアクライミング世界選手権inドバイ🇦🇪
11/12(土)、初開催となる階段登りの世界選手権「STAIRCLIMBING WORLD CHAMPIONSHIP」が、UAEドバイで開催されました。
スタート直後のアクシデントを乗り越え、頂上決戦で如何なるスタイルで臨んだのか、是非とも想像しながらご覧ください。
大会概要
会場: Jumeirah Emirates Towers Hotel
高さ: 265m
階数: 52階
段数: 1,334段
スタート直後に35段の屋外階段。約100mの平地を移動し階段へ。タイミングチップ式計測で、屋外階段を含む全てのコースタイムが計測に反映される。
出場選手
まず、この大会は世界大会だ。各国から選抜された選手で争われる記念すべき第1回世界選手権となった。
現在世界で最も強い選手と言っても過言ではないマレーシアのSoh Waiching選手をはじめ、スピードには定評があるイタリアのFabio Ruga選手、そして小山のライバルでもあるイギリスのLaurence Ball選手などが名を連ねる。
もちろん日本からは階段王こと渡辺良治。加藤浩、遠藤直弥、高村純太、上杉博一の6名がエントリー。
前日のブリーフィングにてコースチェック後、いつも通り作戦を練り始める。
作戦
●前半ぶっ込む
●抜かれ際に少しでも抵抗する
極端なシンプル作戦。小山の真骨頂であるスピードを活かしてポジションを奪取。狭いコース幅で抜かすのは至難の業。とにかく前で勝負をして前半を優位に進める作戦。
呑気にベラベラ喋ってるライバル達を目の前に、沸々と闘志が煮えたぎる。3年ぶりの世界戦、この高揚感を楽しみに毎日ツラ〜いトレーニングを乗り越えてきた。準備万端だ。あとは腹の中空っぽにして寝るだけだ。
スタート
「小山くん、お腹痛いんだけどどうしよう」
俄には信じがたいよく分からんメッセージが届く。渡辺良治からだ。どうやら前日の食事が体に合わなかったらしく、酷い腹痛にやられたようだ。物凄いテンションの低さで部屋にズカズカと入ってきた。
そんなこんなで渡辺良治を含め全員がスタート位置に付く。事の詳細は本人のブログで。
スタートから35段の屋外階段では追い抜き禁止。階段を抜けた時点では8番手。最終段を越えてからスイッチオン。元陸上競技部、100m10秒83の血が騒ぐ。同じく前半ぶっ込み型の高村純太が大外から攻めるというサンドイッチの構図。
ところがどっこい。
階段入口手前の90度カーブでSoh Waiching選手にインからやられ逆転を許す。Soh Waiching選手はトップで階段に入るやいなや、足拭き用のマットがズルっといってしまい転倒、渡辺良治が先頭で階段へ。そのすぐ後ろについていたOmar Bekkali選手が2番手。
Soh Waiching選手が立ち上がるのを見てからソロリと階段へ突入。結果的には4番手で登り始めることになった。
1〜20F
想定していた展開と違うものの、前半ぶっ込んできたことには変わりなし。とにかく喰らい付いて少しでも抵抗する作戦。
ハイスピードで登っていくうちに、やはり身体がストップをかけてくる。5Fを過ぎたあたりから定速とはいわずともギアが一段階落ちる。するとFabio Ruga選手が大外から一気に抜き去ろうとしてきたので若干抵抗。それでもスピードを上げてくるのでこの勝負は負け。
その直後、7Fあたりで加藤浩が迫ってくる。
心の中で楽しみつつも、イン側を大きく空けて素直に譲ることに。その直後に遠藤直弥が続く。
初音ミクのコスプレを解いた遠藤直弥とのマッチアップ。踊り場のターンで抜きにかかってきたので、それに合わせて踊り場でスピードアップ。この10〜15F区間は2人して速くなっていたので、一度離れた加藤浩を再度捉える形に。
痺れを切らした遠藤直弥が踊り場ではなく階段でぶち抜いてきたのでジ・エンド。勝負に破れたと同時に小山の体力も尽き果てる。
20〜35F
みるみるうちに減速していく。それでも1,334段52階を自己ベストで登り切るには十分すぎるぐらいのアドバンテージだ。つまり、ようやく定速に入ったわけだ。
すると後ろに気配を感じる。
Vicente Laurent選手、上杉博一、Laurence Ball選手、Zhelyazkov Dimitar選手ら4名が張り付き金魚の糞が完成。お互い抜くに抜けないし、潰れるのも怖いから誰も勝負してこない。もしかしたらこのまま逃げ切れるか?
28F過ぎから勝負を仕掛けてきたのがVicente Laurent選手だ。躊躇なく大外からぶち抜かれたけど、結構なスピードだったので後から落ちてくることを考えて無視。
30Fではキャップ(上杉博一)とのマッチアップ。一瞬、登りのリズムが噛み合ったので2人でいけるかなーとも思ったけど、呼吸の感じから余裕度ありだったのでインを譲る。ケツをポンと叩いて拍車をかける。
そうなると残りはイギリスのLaurence Ball選手だ。彼との勝負はこれまで1勝1敗。言わずもがな、正真正銘のライバルだ。
35F〜フィニッシュ
一度切れかけた気持ちが再び燃え上がる。相手も様子を伺っている感じで、お互いの能力を知ってるが故に均衡した状態が続く。
38Fから仕掛ける。残り2分強のラストスパートは小山からすれば長すぎる。しかし相手もスピードランナー。切迫詰まった状況に変わりはないはず。歩いていたところを一瞬加速して1フロア分走ってみた。
無論、ローレンスも着いてくる。
42Fで一度減速。ローレンスとの距離が一気に縮まる。しかし体力には余裕が有り余っていたようだ。水を得た魚のようにピチピチ動き出し加速。小山が金魚の糞となり、ちぎられる。
あれよあれよと差は広がり、ズルズルしたまま52Fフィニッシュへなだれ込んだ。写真がないのが心苦しいが、フィニッシュエリアには大量の屍が転がっていた。
総合リザルト
蓋を開けてみれば、2019年VWCで叩き出したタイムを1分以上更新した。
タイム: 8分39秒
順位: 11位
よくよく考えれば、タイムも順位も目標に掲げていなかった。いったいオレは何しに来たんだ。まあ前半突っ込んでレースも冷静に立ち回って、結果的に1分以上更新して世界11位か。
とりあえず来年はワールドシリーズ再開。VJCも大きくなるかもしれないので体制を整えなければならない。結果への貪欲さが欠け始めている中で、金魚の糞とどう向き合っていくか考えていきます。
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