2023.5.21 SJC開幕戦
2023年5月20日(土)、名古屋にて日本最高峰のナショナルシリーズ「2024 Stairclimbing Japan Circuit」が開幕しました。
サーキットは全3戦。第1戦の舞台は中部電力ミライタワー。世界屈指の難コースを攻略する過程、並々ならぬ思いで勝ち取ったメダルとライバル達との関係を赤裸々に語ろうと思う。
忘れちゃいけない"心の声"も聴いてね。
大会概要
【会場】中部電力ミライタワー
【高さ】90m
【階数】なし
【段数】415段
【参加人数】500名
【カテゴリー】親子、小学校低学年、小学校高学年、中学生、一般、エリート
1人ずつ1分ごとのウェーブスタート。スタートエリアから約50mをパレード走行し(この区間の計測なし)、計測マットを通過し半屋内階段へ。
細かく切り返すスクエア階段を136段登った後、世界的にも珍しい下り階段を含むトラバース区間へ。長い直登階段を登り、段差が不規則に変化する大きなスクエア階段を越え展望フロアがフィニッシュ。
セクション①スタートから136段地点
セクション②トラバースから60m地点
セクション③フィニッシュまで
分かりやすい3つのセクションで解説する。
出場選手
国内最高峰のサーキット戦ともあり日本トップ選手が揃う。昨年度VJC総合2位の矢島昭輝をはじめ、ステアクライミング世界選手権5位でありスパルタンレース日本チャンピオンの加藤浩、スカイスノーとステアクライミング二足の草鞋を履く高村純太。富士山最速下山記録を持つダウンヒルのスペシャリスト涌嶋優。言わずもがな、国内最高峰に相応しい役者が揃う。
今期海外戦に挑戦している上杉博一はソウル大会で3位、インラインスケーターの戸取大樹はマレーシア大会で4位、昨年のベトナム大会で4位となった中川貴晴は直近のソサイチ(7人制サッカー)でアジアチャンピオン&得点王を獲得している。
上記メキメキと力をつけている選手に加え、SJCエリート初参戦組が怖い存在。スプリント種目を得意にするインラインスケーターの梅村碧一は最年少18歳、1500m3分台の走力を持つ実業団陸上選手の緒方航、イケメン消防士の鈴木一馬。1秒たりとも気が抜けない布陣が出揃った。
スタート
スタートが刻一刻と迫る。1分ごとに選手たちが出走して行く中、今日一番の集中を高める時間。のはずだった。スタート直前に階段王・渡辺良治が喋りかけてくる。
「小山くん、いけるっしょ!矢島倒してよ!コースレコード!」
良くも悪くも、彼の存在で場が和むときもある。いつものことながら右から左へ受け流した。ある意味、集中を高めることは必要なくなったのかもしれない。それだけ準備に時間を費やしてきたから数ヶ月前から集中している。
MCタネの美声を聴いて、いよいよスタートの舞台に立つ。
気持ちの高ぶりを抑えられず、思わずニヤついた。歓声と声援をしっかり受け止めることができた。最高の演出をしてくれるSJC運営チームGood job!!!!
セクション①
既にレースを終えた女子エリート選手からの声援を受け、パレード走行を経てスタートラインへ。大きく深呼吸していざ出陣。
前半の136段は5段-7段と細かく切り返すスクエア階段。いかに無駄なく踊り場を通過し、少ないタイムロスと後半に向けてどれだけ体力温存できるかが勝負。
◎最短歩数
◎外側の腕
2つをテーマにイメージトレーニングを積み重ねてきただけあり、予定していた歩数かつ想定タイム通りに通過することができた。これ以上ないほどロスを最小限に抑えトラバース区間へ。(通過タイムは手元の時計で30"98)※昨年通過タイム31"51
セクション②
気持ち良くトラバース区間へ突入した。5段の下り階段もスムーズに通過し、コース最長の直登階段へ。ここは手すりも使えずリズムが変わる場所なので、思った以上にパワーを使ってしまう区間。
昨年より早く通過しているためか、思ったより疲労している感じがあった。後半のスクエア階段に突入してからは、両手すりを使って全身で登る。
それでも脚は動き続けていた。この冬は月間500km近く走行距離を稼ぐなど、トレーニング量・時間ともに増やした。これまでスピードを磨き続けてきた内容と変わり、短所を克服する練習を積み続けてきた成果が出始めたようだ。
セクション③
いよいよ最終盤に突入。60m地点の通過タイムは1'07"と予定より1"ほど早い通過。この頃になると思考停止状態。
異常なまでに長く感じる時間。この瞬間だけはいつになっても好きになれない。マイナスな感情との戦いだ。昨年はこのタイミングで脚が売り切れ歩いてしまったが、まだ動き続けていた。
「いぃぃっっっっっっ!!!!!!」
試走では何度も確認したはずの段差が変わる区間で珍事。脛を強打した。
と、頭の中ではこんなイメージだったのですが、実際は0.3
秒ぐらいしか経ってません。叫んで痛みを堪えたあとすぐに走り始めていたようです。
その後は記憶がありません。フィニッシュエリアで倒れていたら、後続選手たちがゾロゾロ倒れ込んできたのだけは覚えています。
総合リザルト
選手たちは自身の結果が分からず、これから発表される上位3名の中に自分の名前が入っているかドキドキしています。
僕は正直この時、自分の名前が呼ばれるだなんて微塵も思っていないのです。
MCタネ「エリート男子第3位、タイム1'46"01」
MCタネ「コヤマタカーキ」
自分の結果を聞いてここまで嬉しくて、思わず涙を流してしまったのはステアクライミング人生8年目にして初めてでした。
3位。決して目指していたものを全て手に入れることができたわけではないですが、何故だか報われたように思えた瞬間でした。
優勝は1'42"22の脅威的なタイムを叩き出した高村純太。彼の努力が半端なかったのは知っているし、勝ちへの欲や拘りが強いのは昨シーズンからヒシヒシと伝わってきていました。
準優勝は矢島昭輝。優勝とは1秒未満の大接戦。彼もまた優勝を掲げて日々の生活を送っているだけに、2位という結果には満足していないと思う。ただ間違いなく、観客やファンへ強さの証明はできていると思う。
最後に
みんな口を揃えて言う。この瞬間が好きだ。それはレース後の談笑タイムだ。レース前は張り詰めた空気の中、競技中の過酷な状況を思い出しただけで気持ち悪ささえ感じるこの競技。
共に長いシーズンを戦うからなのか、過酷な時間を共に過ごした安堵感からなのか、レース後は緊張感を忘れ野に放たれたウサギのように喋り出す。
成績度外視で互いが讃え合い、この瞬間に全力を尽くしたことを共有する時間だ。強くなるために練習時間を確保することも知恵を絞って秘密のトレーニングをすることも大事だが、互いに切磋琢磨して分かち合うことほど貴重で誇らしい時間はないと私は思う。
スポーツを楽しんで心から愛するってこういうことなんじゃないかって。
プレゼンターの渡辺良治。現役のプロアスリートとして活動している中、今回はゲスト選手として参加。やっぱり彼もこの場に立ちたいんじゃないかな。
「渡辺良治を倒す」
選手全員が持つ野望だからね。まぁ今すぐじゃなくても、いつかね。
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