パズル6(2次小説:類つく)
※このお話は花より男子の2次小説(類つく)です。作者様・出版社様とは関わりがありません。妄想の世界へようこそ…
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〜回想〜
つくしは大学4年生。社会人になった類はJrとして鍛えろとの社長の命令で毎日が忙しかった。つくしも最後の実習や卒論の追われて寂しいと感じる暇もない程だった。そんな中でも類のマンションで2人で過ごす時間はとても幸せで、彼の愛情を心と体、全てで感じる事ができ、とてもとても充実した日々だった。
9月に入り、単位も取り終わり後期の授業はほぼ無く、卒論の準備も早くからやっていたので完成間近だった。2人は類の夏季休暇に合わせてゆっくりと旅行に行こうと計画をしていた。もうすぐ休みが取れそうだと思っていたある日、上司から海外へ1ヶ月以上の出張を命じられた。落胆したが出張先のドイツにつくしも内緒で帯同させようと目論む。上司に気づかれた訳でもないのに、その出張が優秀な新人10人と共に行く研修になってしまいホテルもみんな一緒。
類「今年から始まった研修で、将来の俺の片腕を見極める為だって上司から言われた。断る事も出来ないよね…」
あまりに落胆する類につくしは精一杯の強がりを言った
つくし「お仕事だから仕方ないよ…私なら大丈夫だから!帰国したら今度こそ 一緒に旅行に行こうよ。楽しみに待ってるね」
まさか…それがあんな事になるなんて…
出張前夜、類はつくしを何度も何度も求め続けた。まるでこの後の事を予感していたかのように…
次の朝 旅立つ時に
類「俺の印が消えても他の男に見向きなんてしちゃダメだよ。ちゃんと帰って来るから待ってて…愛してるよ…つくし」
ギュッと強く抱きしめられ…初めて『つくし』と名前を呼ばれた日だった それが類がくれた最後の言葉だった。
類のいないこの部屋で泊まる事はしない…寂しさが倍増しちゃう気がするから そう思いシーツなど大物も洗濯をし終わり、時計を見るともう飛行機は飛びだっている時間になっていた。
ピンポン…ピンポン
護「牧野さん、いるんだろう?類の父です。開けてくれないか」
その声は硬く冷たく聞こえ、私は震える手でドアを開けた。
そこには花沢邸で一度見かけ、挨拶だけ交わした事のある類の父親に間違いなかった。そして…もう1人見知らぬ男性が立っていた。
玄関を開けると当然のように部屋に入って来て、2人はリビングのソファーに座った。お茶を入れようとしたが座って欲しいと言われて正面に座った。
護「牧野さん、君とは一度屋敷で顔を合わせてことがありましたが、類の父の 花沢護です。こちらは私の古くからの友人で白井総合病院の医院長です。彼には類は幼い頃から世話になっているんだ。」
つくし「あの時はきちんとご挨拶も出来ずすみませんでした。牧野つくしです。類さんが出張中にすみません。部屋のお掃除や洗濯を頼まれていまして…もう失礼する所でした。」
別に頼まれてやった事ではないけれど…なんだか嘘をついてしまう
護「いや、ここにいてくれて助かりましたよ。実は…白井君のお嬢さんと類の 婚約が整ったので、牧野さんに話さなければならないと思いましてね。」
やっぱり…たぶん そんな話なんだろうって予想は出来ていたけど、膝の上で握っていた手が震えてしまう。私はなんて言えば正解なの?俯いて黙っている私に類のお父様が驚くような話を始めた…
護「実は…この話を類はまだ知りません。類に話す前に牧野さん、あなたに頼みがあってやって来たんです。この婚約は偽装です。」
つくし「ぎ…偽装?」
類のお父様が何を言っているのか…頭が回らない。呆然と聞いていたら、それまで黙っていた白井さんと言う人が話を始めた。
白井「私の娘は琴音と言って20歳になります。先日、貧血で倒れたのでうちの病院で念のためにと精密検査をしました。信じられない事に娘には血液の病気が見つかり、もう長くは生きられないと診断されたんです。信じられますか? まだ20歳の若さで余命が半年だと言うんですよ?
琴音は1人娘で大切に大切に育てて来たんです。もう長くないのならあの子の望みをなんでも叶えてあげたい。そんな親心、わかってもらえますか?
琴音は小さい頃から類君に憧れていましてね。よくせがまれて花沢の屋敷にも遊びに行きました。娘はよく『大きくなったら類兄さまのお嫁さんになりたい』 そう言ってました。せめて死ぬ前に琴音にウェディングドレスを着せてあげたい。大好きな類君と結婚の真似だけでもさせたいんです。」
白井さんが涙ながらに訴える…類のお父様も涙ぐんでる?
護「白井は私の親友でしてね…親としても彼の気持ちはよくわかります。この話を聞いて、なんとしても協力したい!ただ…類はあんな子です。あなたがいるのに他の女性と偽装でも結婚式を挙げてくれるとは思えないんですよ。
そこで…あなたにお願いに来たんです。」
つくし「私に類さんを説得しろ…そう仰りたいのですか?」
護「いや…たとえあなたの頼みでも類は聞かないでしょう。あなたには…琴音さんが生きている間、消えてもらいたいんです。」
この人達は何を言ってるんだろう…突然の出来事にもう頭の中がいっぱいいっぱいでどうしていいかわからなず沈黙するしかなかった。
護「勝手な話だと呆れるだろうが…どう考えてもそれしか方法がないんです。 琴音さんとの事はあくまでも偽装です。この話を呑んで耐えてくれるなら… その後は正式に類の妻として、あなたを迎えましょう。約束します。」
白井「琴音の余命は半年と言われています。あなたも辛いでしょうが…娘のために協力してもらえないでしょうか?娘が幸せな最後を迎えられたら…あなたを私の養女として迎えても良い、後ろ盾にもなりましょう。
失礼だが…君の事はいろいろと調べさせてもらいました。道明寺さんとは身分違いでずいぶんと苦労したんじゃないですか?同じ過ちは踏みたくないでしょう?」
類と私の身分が違う事くらいよくわかっている…
つくし「でも…突然、私がいなくなったりしたら類さんが怪しむと思いますが… それに隠れろと言われてもどこに隠れれば…」
白井「心配には及びません。あなたは海外に所有している私の別荘でのんびりと暮らしてもらえばいい。花沢に嫁ぐ為の準備でもして下さい。」
護「類にもそう話します。花沢に嫁ぐ為の準備として海外の大学に留学してもらった。そう話します、2人の将来の為だ悪い話ではないでしょう?」
つくし「少しだけ…考える時間をいただけませんか?」
護「そう長くは待てませんよ。もし断ると言うなら…類との将来も終わるでしょう。この話は類にはもちろん、類の幼馴染やあなたの友人、ご両親にも内密にして下さい。琴音さんが傷つく事になっては困る。あなた自身でよく考えてください。」
つくし「わかりました…」
どんなに考えたとしても…私の答えは決まっていると思う。断れば…類との交際を反対され別れが待っている。いつかは別れが来るとは思っていたけど…もし半年我慢すれば…そんな考えが頭をよぎってしまった。
この時は負い目もあって気づく事が出来なかったけれど…今思えばおかしな事 ばかりだった。類がなんで長期の海外出張に出されたのか…誰にも相談してはいけなかったのか…もっともっと冷静になって考えれば良かったのに…