パズル21(2次小説:類つく)
このお話は花より男子の2次小説(類つく)です。作者様・出版社様とは関わりがありません。妄想の世界へようこそ…
時は少し戻り、つくしが目覚めてすぐ…
司の思いがけない行動でつくしはどうにか救出され、直ぐに道明寺系列の病院に搬送された。あと少し遅かったら命は無かっただろう…
処置が終わると翌日深夜、楓の指示でつくしは東京の道明寺邸に移された。目立つ行動は危険が伴うと思っていたからだった。
つくしは3日ほど過ぎて目覚めたが、心だけどこか遠くに行ってしまった様に医師の問いかけにも無反応だった。誰の呼び掛けにも反応せず点滴で栄養を体に入れるような状態が3ヶ月も続いて、自分では起き上がる事も出来ない人形のようだった。そんな彼女を心配して桜子はほぼ毎日、道明寺邸に通っていた
医師「これ以上点滴だけの栄養は危険です。然るべき病院に入れる事をお勧めします。」
楓は医師から報告を受け悩んでいたが…その何日か後にタマから連絡があった。
タマ「奥様…つくしがスープを飲みました。桜子様が泣きながら差し出したスプーンから飲んだんです。」
つくしさんの事を心から慕う彼女の必死な訴えにきっと心が少し動いたのでしょうね。それからは料理長が滋養たっぷりなスープを毎日作ってくれて、桜子さんが飲ませてくれていたわ。それでも…つくしさんには表情も無く…言葉も発してくれなかった。筋力が戻るようにマッサージをして自分でお皿からスープを飲むようになるのにはまた1ヶ月かかった。仕事の合間にあきら君、総二郎君も顔を出して声をかけてくれたけど反応は無いとの報告だった。
全てを思い出した司は離婚に向けて動き出しNYをあまり離れられなかったけれど、昔に戻ったような司が嬉しかった。司の妻にも他に想う人がいての政略結婚だったから生まれてくる子供を手放す事にすんなり了承してくれ、彼女の希望も叶えての離婚は3ヶ月ほどで成立した。赤ちゃんは生後ひと月ほどで道明寺邸に引き渡すからと彼女は日本で出産してくれた。きっと情が湧かない為だと思う…
10月に生まれた司の息子は彼そっくりで、『翼』と名付けた。
11月も終わる頃…彼女の弁護士に抱かれて翼が道明寺邸にやって来た。
その時には翼の為に何人かのメイドも決めていてタマにも頼んでいた
タマ心の声『本当に坊ちゃんの赤ちゃんの頃にそっくりだね。翼様がつくしの子供だったらどんなに幸せだったかね…それにしてもつくしはいつになったら正気に戻るんだろうね…やっぱり荒療治が必要かね…』
**つくし(22歳初冬 回想)
ベッドにもたれて1日窓の外を見ている…私はなんで生きているんだろう。
類はなぜ迎えに来てくれないんだろう。早く死にたい…そんな事ばかり考えていたけど、桜子にあんな風に泣かれて戸惑ってしまったの。私のかわいい後輩の桜子、辛くて何を話しかけられても返事もせずに無視しているのに毎日ここに来る
『ごめんね…もう私なんて放っておいて』心の中で叫んでいたけど…わかったよ
あなたの優しさには贖えない。心の中でそう言ってスープを飲む。
嬉しそうに私の腕をマッサージしてくれて
桜子「ご自分でも飲めるようになって下さいね。」そう言われて頷いていた 私は言葉を忘れてしまったみたい…
窓の景色がまた変わったけれど私は今日もベッドの上から眺めるだけ… 自分でスープを飲むだけで疲れてしまい眠ってしまう
「フゥエッ…エッ…」
直ぐそばから聞こえる鳴き声に目が覚めて横を向くと… 真っ赤な顔して泣く赤ちゃん
「な…泣かないで…」かすれて上手く話せないの。鳴き声が大きくなるのに誰もそばに居ない…恐る恐る頭を撫でたら、小さな指が私の服を掴んだの… そっと抱き上げて見るとジッ…と私を見ている様だった。腕の中にその子の温もりを感じた「かわ…いい」
いつの間にかタマは側にいた
タマ「その子は翼だよ。まだ生まれてひと月ちょっとさ…お腹が空いて泣いていたのかね。つくしミルクあげてくれるかい?」
タマさんは私が疲れない様に膝の上に枕を置いて
タマ「これならあんたでも大丈夫だろう?」
渡された哺乳瓶を赤ちゃんの唇に持っていくとゴクゴクと飲み出す
タマ「生まれたばかりの赤ん坊だって、お腹が空いたって泣いて教えてくれる。生きるために一生懸命にミルクを飲んでるんだよ、つくし…あんたはどうなんだい?今のあんたはこの子にも負けてるよ」
その日から…朝が来るとタマさんは『翼』という赤ちゃんを私のベッドに寝かせて部屋を出て行ってしまう。眠っている翼君をじ〜っと見つめていると心の中が温かくなって…筋力がなくて抱っこもちゃんと出来ない自分が悲しくなった。
その日から少しづつ変化が起きた…スープを残さず飲むようになり、試しに用意したお粥に手を出し食事を取るようになった。
『翼君…私もあなたと一緒に生き直してみようかな… こんな私を類が見たら悲しむよね。私が死にたいって頼んでも類は迎えに来てくれなかったの。だから…きっとどこかで生きているんじゃないかな?そう思って生き直してもいいよね?』
今日もタマはそっとつくしのベッドに翼を置く為に部屋に入った
つくし「タマ先輩…おはようございます」
半年ぶりに聞いたつくしの声だった
タマ「つくし…」
つくし「すみません…体がまだ動かなくて…今までごめんなさい」
タマ「当たり前だよ!半年もベッドの上から動かずスープしか摂っていないんだ。もう…大丈夫なんだね」
つくし「皆んなにたくさん心配かけてごめんなさい。私…翼君と一緒に生き直してみたいです」
タマは直ぐに楓社長に連絡を入れ、栄養士や医師のリハビリを開始することになった。今日もやって来た桜子に
つくし「桜子…毎日ありがとう。ちゃんと聞こえてたよ、感謝もしていたの。 でも…声の出し方も笑い方もみんな忘れちゃったみたいだったの…たくさん泣かせちゃったよね…ごめんね」
やっと気持ちを伝えられた。
桜子「先輩…良かった…本当に良かったです」
ポロポロと泣き出しつくしに抱きついた。そんな2人の姿をあきらが見つめていた。
翼が成長するようにつくしの体も元に戻っていき、3ヶ月ほどで体重も戻り通常の生活ができるようになると、帰国していた楓社長の部屋を訪れた
つくし「楓さん、今まで本当にありがとうございました。せっかく守っていただいたのに自分の命を粗末にするような真似をした事を本当に反省しています。このまま甘えている事も出来ませんので、近いうちにここを出て行こうと思います。」
つくしが深々と頭を下げているとトントン…部屋がノックされ大泣きする翼を抱いたメイドが入って来た。
メイド「お話中申し訳ありません。翼ぼっちゃまがつくしさんを探して泣き出して…私達では泣き止んで貰えないんです」
つくしを見つけるとメイドから手を伸ばして泣く翼、つくしが抱っこすると直ぐに泣き止んだ。
楓「つくしさん、あなたはこの翼を放って何処かに行くつもりなの?私に感謝してくれる気持ちがあるのなら、このままここで翼と暮らしてくれないかしら? あなたは幼児教育の資格を持っているでしょう?翼の教育係としてここで働いて欲しいの。いかが?」
自分の腕の中で泣き止みニコニコと笑顔を見せる翼につくしも断る事は出来ず、道明寺邸での暮らしが始まった。