パズル64(2次小説:類つく)
*今回は白井親子が報いを受けるお話になります。お嫌な方はスルーしてね。
読んだ後の苦情はお許しください。
時は少し戻り類達が島を訪れてから2週間ほど過ぎた頃…
Dr「ハナザワ、シライは今の状態であれば30分程なら動けるだろう。」
管理棟で暮らしている護にDrからのGoサインが降り、直ぐに楓にも連絡を入れた
楓「そう…いよいよね。後はあの親子に任せましょう。護さんもご苦労様」
〜白井〜
あの日から点滴の数が増え、自分でもわかるくらいに体調に変化があった
そして今日、私は着替えさせてもらい車椅子に乗せられ部屋から出られた
白井「私はどのくらい保ちますか?」
Dr「30分が限界でしょう。最後に強い注射を打つよ」
白井「感謝します。お願いした物は?」
Dr「そのポケットに入れてある」
白井「苦痛は与えませんか?」
Dr「そんな時間も無いだろう」
私はこれから琴音の元に向かう。彼女と最後の時間を過ごすために…
あの人に頼み琴音に一度だけ生きるチャンスをもらったんだ、私の話を琴音が
聞いて改心してくれれば彼女は修道院で一生を過ごす事になる。自由は無いが
生きる事は出来る…藁にも縋る思いだ。
車で30分程ジャングルの中を走ると家が見えて来た…
もう一度注射を打たれ玄関の前まで運ばれ、車は去って行った
車の音が聞こえたのか中から琴音が飛び出して来て車椅子の私を見た
琴音「あなた…誰?
今車の音が聞こえたんだけど助けに来てくれたんじゃないの?」
白井「琴音…パパ…だよ。」
琴音「え?パパなの?その姿はどうしたの?まるで100歳の老人みたいよ」
白井「金城にやられたんだ…家に入れてくれるかい?」
私は嘘をついた。琴音は車椅子を押して部屋に入れてくれた。
こんな日を予想していたのか?家の中に段差は無く琴音でも車椅子は扱える
ようだったが…廊下にはゴミ袋が積まれ通るのもやっとだった。家中に悪臭が漂い、よく見ると琴音も何日もシャワーも浴びてないようだった
琴音「パパ、私を助けに来てくれたんでしょう?酷い部屋だと思わない?
あの女が類様に頼んだのよ!自分と同じ境遇で暮らしてみろですって!
ガスも電気も使えても3日も過ぎると使えなくなるの、もう臭くて気が狂いそう」
白井「つくしさんは何も知らないと思うよ。類君も生きていた。お前が人殺しに
ならなくて良かった」
琴音「は?パパどうかしちゃったの?類様は自分で海に落ちたのよ!牧野つくしはパパが甘いから逃げられちゃったのよ!道明寺司のそばで何不自由なく生きて
いたの!あんな庶民が私より幸せになるなんてありえない」
琴音の言葉に私は呆然とした…あの日、琴音もあの映像を見たはずなのにまだ彼女をそんな風に言えるのか?反省も出来ないのか…
白井「この前、類君に会ったよ。殺されても当然だと思っていた。彼も私を憎しみの目をしてみていた…でもつくしさんの言葉で彼の表情が変わった…私も涙が止まらなかったんだ。あんな優しい人を私は騙して殺そうとしたんだ。
許されるとは思っていないが…気づけて良かったと思っている。琴音はそうは思わないかい?」
琴音「そんな事を言いに来たの?ねぇ…さっきから苦しそうだけど大丈夫?」
強い薬を打ってもらったが体力もそろそろ限界が近づいているようだった
白井「車椅子の横のポケットに水が入っている、薬を飲みたいから出してくれるかい?」
琴音はゴソゴソとポケットを開けて水のペットボトルを出し
琴音「ミネラルウォーターじゃない!私なんて水道の水しか飲めないのよ。
これ、私にちょうだいよ。パパには水持ってくるから」
ペットボトルを開けてゴクゴクと水を飲み、その後で私には洗っていないような
コップに水道の水を入れている。その様子を見ながら私はそっとポケットに手を入れ注射器を持った。
琴音「はい、パパ」
琴音が私にコップを差し出した時、腕を掴み注射を打とうとしたがもうすぐの所で腕を振り払われてしまった…
琴音「何するの?それ…何の?」
白井「これは睡眠薬だよ…この場所が知られないようにお前を眠らせてから車を呼ぶ事になっているんだ。腕を出して?」
琴音「それなら眠ったふりをするわ。誰にも場所なんて話すわけないじゃない
早く連絡してよ!電話持っているんでしょ?貸して!」
琴音は私の体を触り電話を探す…もう体が自由に動けず逆らうことが出来ない
琴音「無いじゃない…どうやって連絡取るの?」
白井「監視カメラが作動してるんだ」
琴音「ウソ…パパは嘘をついてる。」
白井「琴音に嘘をついた事は無いだろう?」
琴音「じゃぁ…その注射、パパの腕に少し打ってみてよ。」
琴音は完全に私を疑っている…
白井「これなら苦しむ事も無いんだ…ぐっすりと眠れる」
琴音「パパ…私を殺しに来たのね?」
白井「違う…私はお前を愛しているよ。これ以上生きていてもお前は幸せに
なれない…人を恨んだり妬んだりするだけだろう?こんなゴミに囲まれても
自分で何もしない。パパと一緒の方が幸せなんだよ」
琴音「そんなお爺さんになったパパじゃぁ私を幸せには出来ないわよね。
でも、ここを出られたら私には希望があるの。さっきの車…この近くで待って
いるんでしょう?そんな死にそうなパパを置き去りにはしないわよね?」
白井「迎えは来ないよ…」
琴音「もうパパの言葉は信じない」
琴音はそう言うと車椅子のポケットを探り鍵を取り出した
琴音「やっぱりね、これフェンスの鍵でしょう?私はパパに殺されそうになったと外にいる人に助けを求めるわ。さよなら…パパ」
白井「琴音…フェンスの外には犬が…危ない…」
最後の力を振り絞って琴音を止めようとしたが声は届かなかったのか琴音は
振り返る事もなく玄関を出て行った。
そして家の周りを囲っているフェンスの扉を探すと鍵を開けた…
『やっぱりここの鍵だったわ。きっとこの近くにパパの居た場所があるのよ』
琴音はジャングルの中に入って行った。
監視カメラでその様子をみていた管理棟の人間が
T「なんだか白井が気の毒になって来たな…もう動かなくなったぞ」
Y「あの状態で動けたのも不思議なくらいだったからな…息絶えたんだろう」
T「あの娘もあの時注射を打たれていた方が幸せだったろうに…」
2人はジャングルに備えてあるカメラに視線を映す
そこには何匹もの大型犬に囲まれ助けを求める琴音が写っていた。
Y「最初に忠告したのに忘れたのかな…あの犬達は狂犬病にかかっている。
噛まれたらあの娘も確実に発症するだろう…噛まれた痛さよりその後が辛い」
T「もうあの犬達も楽にしてあげよう」
機械のボタンを押すとジャングル一帯に薬が撒かれ犬達は眠った
(その後きちんと埋葬しました)
数時間後、白井の遺体は管理棟にあった。琴音はいくつもの犬の噛み跡があったがまだ生きていた
Dr「この娘はどうしますか?あと数時間もすれば発症すると思いますよ」
護「白井に免じてあの薬を打ってあげて下さい。これ以上は苦しまなくても
良い。十分報いは受けた」
その後、2人は島で火葬され遺骨はひっそりと日本に戻したが、
指名手配の彼の家族の墓に埋葬は出来ず
楓「あの男がDrに最後のお願いをしたそうよ。遺骨はあの別荘のあった
山の中に埋め墓は建てないで欲しいそうよ。娘と2人埋めてあげましょう。」
あの土地は道明寺HDが手に入れ、別荘は取り壊し2人の遺骨の側に植林し
樹木葬の形で僧侶に読経してもらった。
護「終わったんですね…楓社長、本当にありがとうございます」
「あなたも…類君もよく我慢したわ。もう全ては過去…あなたも未来を生きて
欲しいわ。山中の両親があの場所を管理してくれるから心配ないわ」
護「はい…あの島はどうなりますか?」
楓「アルフォードが全てを壊し、5年後には一大リゾート施設として生まれ変わるそうよ。」
護「そうですか…滋さんの協力無しでは何も出来ませんでした。本当に感謝しています」
楓「彼女はつくしさんが本当に好きなの。彼女のためならきっと大した事では
なかったんでしょうね、ふふふ。
つくしさんを泣かせたら私達だって危ないわよ」
それは笑い事ではないと護は肝に銘じていた。
その知らせはつくしを除くみんなにも届いた。
類はケビンと…あきらは桜子と…総二郎は優紀と…乾杯をした
司は滋に呼び出されアルフォード夫妻とドバイで祝杯をあげたらしい
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白井親子の顛末です。琴音は最後まで改心する事はなかったですが
誰も知らない場所で2人静に眠っています。山中さんのご両親はきっと
時々、花をたむけてくれているでしょう。