パズル59(2次小説:類つく)
##白井親子が自分の罪と向き合う話しです。楽しいお話でも救われる未来でもありませんので、読みたくない場合はスルーして下さいね。読まなくても支障は無いです。##
〜あきら〜
スクリーンに映し出された部屋を見て吐き気がした
ケビン「これは…」
あきら「琴音がここに連れて来られてまだ2ヶ月も過ぎてないですよね?
スクリーンから匂いまで漂って来そうで気分が悪くなった。
確か牧野が監禁されていた時と同じ状態にしているって聞いたけど」
監視チームが隣の画面に初日からの部屋の様子を写してくれた
音声も流れているから類の表情が怒りに変わっている。
ケビン「信じられない…この女性は悪魔です」
類「あぁ…この女には良心なんて存在しないようだ。あの父親が哀れになるよ」
楓「類君、これからあの部屋のスクリーンを下ろすわ。会話も出来る様にするからカメラの前に立ってくれる」
楓さんの声に従い類が少し離れたカメラの前に移動した。
類「会話を始める前につくしが2人の事について話している部分の映像を
見せる事は出来ますか?」
楓「大丈夫よ。では始めるわ」
******
〜琴音〜
部屋の中が臭くてたまらない…いつになったらパパは助けに来るのかしら?
ここが燃えてしまえば流石に救助に来るかも…そう思ってコンロをつけてゴミを
燃やしてみたけれどスプリンクラーが作動して部屋が水浸しになっちゃった。
もう何もする気も起きずにソファーに横たわっていたら
部屋が暗くなり天井からスクリーンが降りて来た。
琴音「ねぇ やっぱり誰か監視してるんでしょう?もういい加減にして欲しいわ
この部屋が見える?ゴミ屋敷みたいでしょう?人権侵害だわ」
怒鳴ってみたけれど反応はなくて…スクリーンにあの女が映った。
琴音「は?バカじゃないの!あの女、類さんが生きてる?そんなはず無いじゃない。はぁ〜偽善者ね!どうせ道明寺さんに色目使って愛人でもやってるんでしょ
余裕ぶっちゃってバカにしてるんだわ。もう消してちょうだい!こんなの見たく
ないから早くここから出してよ!牧野つくし〜もう気が済んだでしょ!」
映像が一度消え、また違う映像が流れ始めた…
青い空と穏やかな海…ベンチに座り微笑み合う2人
洗濯物を干している女性と愛おしそうに彼女を見つめる男性
そこに映っている女性は大学生の時の彼女では無い…
そして彼も…あの時の彼には見えなかった
琴音「え?何よこれ…何の冗談なの?まさか…」
スクリーンには2人の幸せそうなショットが流れていて琴音は「嘘よ」と
髪を掻きむしり怒鳴っている
そして…映像がまた変わった。
******
類「あんた…まだ生きていたんだ」
類の怒りを含んだ低い声が部屋に響いた。琴音は大きく目を見開き
琴音「え?類さん?どこにいるの?私が見えるの?
もしかして…私を助けに来てくれたの?」
類「は?あんた本気でそんな事を言ってるの?」
琴音「違うの!私はあなたを助けようとしたのよ?でも一緒に乗っていたパパの
愛人に止められたの!パパが困る事になるからって…でも隙を見て知らせたのよ。あれは事故だったわよね?あなたが自分で落ちたのよ」
類「あの時…君が見せてくれた写真、あれは誰だったの?
今でも時々夢に出て魘されるんだけど」
琴音「知らないわ…私はパパに渡されただけよ。牧野つくしは死んだってね」
類「俺のつくしの名前を軽々しく呼ぶな!あぁ…俺だってあの時はそう思ったよ
暗がりだったけどよく似ていた。でも、つくしは生きているよ」
琴音「そう、それは良かったわ。他人の空似ってよくある物ね」
類「あんた達親子は何の罪もない女性を整形までさせて…酷い目に遭わせた。
父親の病院代を工面する見返りだったらしいけど、その父親も死んでるよね?」
琴音「類さん、私は何も知らないの。パパに聞いてくれる?」
真相がわかった時に牧野の身代わりになって死んだ女性の事も楓さんは
調べていた。そして白井の所有していたあの愛人のマンションを売却したお金を遺族に渡す手配をしてくれたんだ。もちろん、白井にサインをさせた正式な書類だ。そのお金で母親は2人のお墓を建てると弁護士に話していたらしい
類「ふぅ〜ん。あんたは何も知らなくて悪くないんだ」
琴音「そうなの。あの後…私の病気が誤診だった事がわかってパパの勧めで
結婚したけど…酷い男だったの。もう少しで薬漬けにされる所だったのよ。
誰かが助けてくれてここに連れて来られたみたいなんだけど…酷い部屋でしょう
もう耐えられないの…あ!もしかして類さんがあの時、助けてくれたの?」
俺とケビンは聞いていて頭が痛くなった。この女、バカ過ぎる…
類はずっと無表情だが怒りのオーラが滲み出ている
類「まさか、俺はそんなお人好しじゃない。つくしを苦しめたあんた達親子を
この手で殺してやりたいって思ってここに来たけど、あんたは俺が殺す価値も 無いって良くわかった。あんたの嘘なんて全て知ってるよ。もう2度と会う事も
無いだろう」
類はカメラの前を離れ俺たちの側に戻った。琴音の『待って!助けて』って
声がまだ聞こえて来たけれど俺たちはモニタールームから出て行った。
あきら「あの女サイテ〜だな。父親の方は反省してるみたいだったが娘は
全部、父親のせいにしてた。人間の血が通ってないのかもな」
ケビン「女性は怖い…つくづくそう思ったよ」
俺達はもう一度応接室に戻り飛行機の準備を待っている
類「楓さん、本当にありがとうございます。もうあの2人の事は忘れます
過去に捉われずつくしとの生活を大事に生きていくつもりです。
早くつくしに会いたい…あの笑顔を見たいです」
楓「それが良いわ。あの娘の事は父親がどうにかするでしょう。
意識が戻ったらさっきの映像も見せるわ。彼はギリギリの生命力を薬で
保っているの。娘に会いに行くまでには少し時間が掛かるみたいだけど
会わせるつもりよ。自分の手で引導を渡せば悔いを残さず逝けるでしょう
もう私達の役目は終わり、ここに来る事は2度と無いわね。」
類「いろいろありがとうございます。
ウォルトン夫妻には俺からもお礼を言います。すごい設備でした」
楓「この後、ここはリゾート施設にするそうだから無駄にはならないそうよ」
俺達はロンドンに戻って行った。