パズル10(2次小説:類つく)
このお話は花より男子の2次小説(類つく)です。作者様・出版社様とは関わりがありません。妄想の世界へようこそ…
**類父**
スイス療養所
久しぶりにお前の仲良かった楓さんが来てくれたのにやっぱり無表情だったな 亜里沙…お前が正気に戻る日は来るのだろうか
全ては私の愚かさが原因だ…本当にすまない 悔やんでも悔やみきれないよ…
**回想**
私がおかしいと気づいたのはあの結婚式の日だった。それまでも疑問はいくつもあったのに私は何も見ようとはしなかった。
白井との出会いは大学時代、テニスサークルが同じだった。当時の私は花沢の 御曹司として有名だったが、類とは違い社交的だったから友人もたくさんいて、白井は医学部だったが、田舎の病院の次男坊だから気楽な身分だといつも話していた。サークルの中でも彼とは気も合い行動を共にする事も多く…大学4年のあの夏の日もドライブに出かけた。交代で運転をし細い田舎道を私が運転している時、前方を歩いていた女性がよろけ…狭い道で避ける事も出来ずにひいてしまった。近くに目撃者もいなかった。白井は直ぐに救急車を呼んで対応してくれたが私は震えて何も出来ず佇むだけだった。女性は動かない…
救急車を待つ間、白井は俺にそっと耳打ちをした
白井「運転していたのは俺だ。お前は御曹司なんだから問題を起こしたら不味いだろう?俺に任せておけ」
情けないが私はその言葉に従ってしまったんだ。その女性は軽症で後遺症もなく示談に応じてくれ、その費用は私が払った。ただ…卒業後は親の病院で医師になる予定だった白井は事故を起こした息子の噂が広まれば病院が潰れると言われ、残り2年の大学費用を出す代わりに2度と田舎には戻るなと言われてしまった。 それでも「気にするな」と白井は笑ってくれた。
2年後医学部を卒業した白井を私は花沢系列の病院に紹介し、その後独立して病院を建てる時には金銭援助も惜しまなかった。私は彼を大親友の恩人だとずっと思っていたから…
そんな彼が憔悴した様子で私に娘の病気を告白して来た…琴音ちゃんの事は勿論私も知っている。誕生日にはお祝いも送っていたし3人で食事をした事もある。 その時は元気そうに見えたが…あと半年の命とは白井が気の毒過ぎる。そう思って、彼の頼みを私は喜んで引き受けてしまったんだ
類と牧野さんの事は亜里沙から聞いて知っていた。どうやら本気のようだったが半年か長くとも1年の事だから、その後に牧野さんとの結婚を許してやればきっと納得するだろう…甘く考えていた。白井の要望で2人を離す事にしてドイツに類を行かせたが、彼女と連絡が全く取れなくなった事を心配し類は帰国しようとした私はそれも許さななかった。疲れた様子で帰国して直ぐに今回の事を類に話した。
護「牧野さんは琴音さんを気の毒に思っていたよ。琴音さんが亡くなった後は白井の養女になってお前と結婚させると約束もした。それまでお前に相応しい女性になれるように海外で勉強する事になったんだ。費用は私が負担してもう旅立った。」
類「嘘だ…俺に黙ってそんな事をするはずがない!父さん達が脅したんでしょう?彼女の優しさに漬け込んだんだ!」
類は怒って部屋を出て行ってしまい、あきら君や総二郎君達友人の手を借りて 彼女の行方を必死に捜したようだったが、白井がうまく隠しているようで何も 手がかりが掴めず月日が過ぎた。類のあまりの憔悴ぶりに妻の亜里沙は「せめて牧野さんの居場所だけでも教えてあげて欲しい」私に頼んできた。私も迷いが出て白井に会いに行ったが…
白井「やっぱりな…きっとお前はそう言って来ると思ってたよ。今彼女の居場所を教える事は出来ないぜ甘いよ。まずは息子に琴音との結婚を了承させるんだ!琴音はそれを夢見てまだ生きていられてるが確実に死期は近づいている… 早く類君を説得してくれ」
私の言葉に耳を貸すつもりもない。そんな日々が3ヶ月以上も続き類は大学にも会社にも顔を出さずひたすら牧野さんの行方を調べていた
類「あの女からの着信が五月蝿い…無視していたらここまで訪ねて来たよ。もちろん俺は会っていない。でも志乃が出したケーキもペロリと食べたってさ ねぇ彼女って本当に不治の病?他の医師に診せた方がいいんじゃない?俺は白井を信じられない。早く牧野を帰してよ」
この頃は類と白井の両方から責められ私も疲れていたと思う。亜里沙まで類の気持ちを理解してあげてと懇願され困り果てて…ある提案をした。 それが最悪の結果になるとは思いもせずに…
護「白井、教会でウェディングドレスの写真を撮るだけではダメかい?それなら類を説得する。あいつにもタキシードを着せるし俺達も一緒に写真を撮ろう」
白井「教会まで来るなら偽りでいいから式を挙げさせてくれよ。」
類にも頼んだが、『たとえ偽りだったとしても牧野以外の女性と神の前で誓う事なんて出来ない。直ぐに牧野を帰してくれると言うから写真だけは了解したけどそれ以外は断る』そうきっぱり言われた。
どうにか白井も納得してくれて、山の中の小さな教会に白井親子と私達3人で撮影する日が決まった。東京からも離れた場所だったし花沢で用意したカメラマンだったから安心だと類に伝えた。類も牧野さんの身が心配で早くこんな茶番を終わらせたかったのだろう。嬉々としてはしゃぐ琴音さんに亜里沙まで病気を怪しんでいたが、カメラマンの要望で笑顔は見せた。類はずっと無表情だったから白井は少しイラついた様子で私を睨んだ。
琴音「教会をバックに外でも1枚くらいは撮りたいわ!」 彼女の後を追って外に出て6人で並んだ時だった…
フラッシュが眩しく光り、マイクを持った人間が教会の裏から走って私達を取り囲んだ…私達は騙された。類は直ぐに踵を返すと教会に入って行ったがもう遅かった…
護「白井…これはどう言う事だ」
白井「俺はどこにも漏らしてはいないぜ。花沢の誰かがリークしたんじゃないかな?きっと明日のトップニュースに載るな。まぁ仕方ないじゃないか…ほら琴音はあんなに喜んで答えてる。今更偽りですなんて言えないよな?」
類は屋敷には2度と戻って来なかった…
亜里沙「あなた…記事を抑える事は出来ないんですの?」
護「それが…ネットニュースのような記者ばかりで…直ぐに配信されてしまったようだ。すまない…一応会社から抗議はするが下手な手を打つと類が悪く書かれる可能性もあると弁護士に言われた」
亜里沙「かわいそうな類… でも牧野さんはウソだってわかってくれるわよね。 承知して留学しているんでしょう?」
護「あぁ…近いうちに会えると思うよ」
満足した琴音ちゃんが病院に戻り、神に召された後に真実を発表することこれで全ては終わったと私達は思っていたが…本当の悲劇はここからだった。
パズル10(類つく) 類父の回想 類21歳 つくし20歳