注目ラインと待ち合わせ場所について
私のnote記事は不親切極まると常々各方面から苦情が寄せられるのだが
まず大前提として自分自身のために書いている。トレードを教えるとか
手法を伝授するといった気持ちはきわめて希薄だ。それでもそんな記事から
気付きやヒントやアイデアを得て、ご自身のトレードに活かしている読者が
少なからずいることは、とてもありがたく思う。
来る1週間における注目すべき重要なラインという記事にいたっては
個人的な週間展望にすぎない。私が自分でトレードするためのものである。
それでもこれをトレードの参考にしたいという問い合わせが数件あったので
ごくごく簡単な「取説」を記すことにする。
こんな質問があった。パラフレーズすると
私がこれまで色々勉強してきたラインの引き方と全く違っている。
実体で引くのでもなく、ヒゲを意識して引いているようにも見えない。
目立った過去の高値安値を基準しているかというとそうでもなさそうだ。
一体このラインはどういう根拠によって引いているのか?
世間一般のライントレードというのは、過去の値動きを観察して
意識されたラインを重要だと判断し、将来においてもそれらのラインが
意識される確率が高いだろうという考え方を基本とする。
それに対して落ち穂ライン(と、うっかり名付けてしまったが)は
過去の値動きを参考にして判断する確率論に拠っていない。一言でいうなら
これから先、価格が吸い寄せられたり、そこで止まったり、そこから
反発・反転するべきラインなのである。
さっさと手の内を明かせば
ピボット、出来高プロファイル(マーケットプロファイル)
フィボナッチ、ギャン、ルーカス数列(Lucas Numbers)
ということになる。
世のライントレーダーは、大勢の人が意識しているラインが
機能するラインであると考えている。ピボットとプロファイルは
見ている人が世界中に多くいるだろう。だが、フィボナッチ、ギャン、
ルーカスはそうではない。フィボナッチについては、YouTuberらが
解説しているような引き方・使い方をしない。完全にオリジナルである。
つまり、誰も見ていない、意識している人がほとんどいないラインでも
しっかり機能するのである。「大勢の人が見ているから」というのは
実はたぶん一種の都市伝説だと私には思われる。あるラインを世界で何人の
トレーダーが意識しているかアンケートを実施したわけではないのだから。
機能するラインは、過去の値動きに基づく確率論によるのではない。
それはまた、どれほど多くの人が意識しているかという多数決によらない。
機能するラインというのは、マーケットの内部構造に起因するのである。
機能するラインはマーケットが教えてくれる。それを可視化するのが
ピボットであり、プロファイルであり、フィボナッチ、ギャンであるのだ。
それならその方法を教えてくれと言うであろう。
ピボットと出来高プロファイルについては”不親切”ながらいくつか
記事にした。こんな簡単な内容で全貌を伝え切ったとは思っていない。
さて、フィボナッチとギャンだが、そう簡単には教えられない。
こっそり自分だけで使おうというケチな料簡で言うのではない。
その内容と分量からもし教えるとしても一朝一夕一筋縄とはいかないのだ。
noteの駄文で伝えられる内容ではなく、1年潰して本に纏めるだけの根気と
親切心を持ち合わせない。口伝でもつきっきりで三月半年を要するだろう。
非線形物理学やカオス理論によると、エネルギー(運動)は「最も抵抗が少ない所」(the path of least resistance)を移動する。この考え方を一般大衆に身近なものにしたのが、Robert Fritzが書いた「The Path of Least Resistance 」(1989)であろう。日本語では「最小抵抗経路」と訳しているらしい。
空気の流れ、水の流れ、渡り鳥の飛行、高速道路の交通、人間関係における感情などなどありとあらゆる運動エネルギーは、いちばん楽に動ける所、一番抵抗が少ない所に沿って移動する。マーケットにおける価格の動きすなわち値動きもこの法則の例外ではない。Price always follows the path of least resistance. プライスはいつでも最も抵抗が少ない道筋に沿って動く。つまり、ローソク足はチャート上の最も抵抗が少ないところを動くという法則がある。それは、節目となるラインやゾーンの間である。出来高プロファイルで見れば、出来高が少ない谷の部分(LVN=Low Volume Node)である。
本稿は「注目ライン」に関する解説なので、抵抗線、支持線、節目を例にとって書いているが、「the path of least resistance」はラインに限定される考え方ではない。出来高が薄い所=最小抵抗経路というだけではないのだ。それは当然ながらカオス(新たな情報、情報の変化)との関係性において考えなければならない。
レビヤタンシステムにおけるBalance Lineすなわちワニの口就中その顎(青色の線)について言えば、価格がBalance Lineから遠ざかる(離れてゆく)動きは「最小抵抗経路」に沿っている。Balance Lineの上においては、価格の上昇は「the path of least resistance」による動きであり、Balance Lineの下では、価格の下降は「the path of least resistance」に沿った動きなのである。トレンド中に推進波が修正波より大きくなるのはこの理由による。
とすれば、上昇トレンド中の推進波を下回る大きな押しや、下降トレンド中の推進波を越える大きな戻りが形成された場合には、「the path of least resistance」(最小抵抗経路)の道筋が変わったという判断ができるのだ。
少し脇へそれた。戻ろう。
ローソク足の動きひいてはチャート形成を決定づける「the path of least resistance」は、あらかじめ決定された構造によって規定される。この構造は明確ではありながらほとんどの場合目には見えない。その目には見えない構造をたとえその一端でもいいから可視化することができれば、値動きの道筋を予め読むことが可能となる。落ち穂ラインはこの理論に基づいている。
川の流れは、水量や川床の形状や深さ浅さや小石や大きな岩などの障害物などによって規定される。すべてを完全に解析するためには膨大な情報と複雑な計算が必要でおそらくそれは不可能に近いだろう。けれども、勾配によって川が上に流れるか下に流れるかは判断できる。流れの先に強風で倒れた巨木が横たわっていれば、そこに差し掛かったとき川の流れがどう変化するかをかなりの確からしさで予め知ることができる。
これが落ち穂ラインである。抵抗となるべきラインやゾーンを規定することで、最も抵抗が少ない道筋(the path of least resistance)を行こうとする値動きを先読みするのだ。
レビヤタンシステムは、相場の現在の状況を可視化する。ワニ、フラクタル、AOは「What's happening in the market now?」を可視化している。一歩進んで落ち穂ラインは「the path of least resistance」とこれから先の値動きの道筋を可視化する試みなのだ。
落ち穂ラインや待ち合わせ場所の指定は、将来の値動きを言い当てることが目的ではない。「山は動くな」にも書いたように「待つ」ことが目的だ。
これから先の値動きを予め想定するのは、エントリーに根拠を持たせるためだ。結果的に根拠がないところでのエントリーを控える、待つということができるようになるのだ。
【追記】
東野圭吾に「ラプラスの魔女」という著作がある。広瀬すず主演で映画化されている。「the path of least resistance」という概念がもしかしたら少し身近に感じられるかもしれない。
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