「Trading Chaos」第2版は、Bill Williamsによる最後の著作であり、そのトレード手法の集大成であった。この本の中に「asset allocation」に関する記述がある。平たく言えば、何ロットでエントリーするのが適切かという問題である。
そして「Reverse Pyramiding」という方法を推奨している。5分割でエントリーするが、ロット数に増減をつける。一番最初は5分割中最小のロット数でエントリーする。
我が国の相場の世界で「試し玉」「早仕掛け」と呼ばれるものだ。試しに少しだけ買ってみる。読みが正しかったことの確証が得られたら、もっと多く買い足す。シナリオ通りに値が進めば、買い増す。しかし、いつトレンドが終焉し反転するか誰にもわからないので、買い増しは一回毎に先細らせる。つまり、
1回目のエントリーは、小ロット数で。
2回目のエントリーでは、最初のロット数の5倍で入る。
3回目は増やさないでむしろひとつ減らす。
4回目と5回目も同様に増やさずにひとつずつ減らしてゆく。
これが通常のピラミッティングと異なるところで、だから「逆さピラミッティング」(Reverse Pyramiding」という。
「先物を15枚買う場合で言えば」とBill Williamsは説明する。「最初は1枚、2回目は5枚、4枚を3回目に、3枚を4回目に、そして最後に2枚買い増す」
個別株を15,000株買う場合は、以下のようになるだろう。
1回目 1,000株
2回目 5,000株
3回目 4,000株
4回目 3,000株
5回目 2,000株
Bill WilliamsはFXを取引しなかったので、ここから先は応用である。
1度のトレードで失っても仕方がないと自分で決めている金額を分割する。ATRの2倍とか投資資金の2%などと自分なりのリスク管理があるはずだ。たとえば、3%というルールであるなら、
1回目 0.2%(試し玉、早仕掛け)
2回目 1% (本仕掛け)
3回目 0.8% (増し玉)
4回目 0.6% (増し玉)
5回目 0.4% (増し玉)
たとえば、1.5ロット(15万通貨)でエントリーするのであれば、
1回目 1万通貨(試し玉、早仕掛け)
2回目 5万通貨(本仕掛け)
3回目 4万通貨(増し玉)
4回目 3万通貨(増し玉)
5回目 2万通貨(増し玉)
1回のトレードを5回に分けてエントリーするという考え方だ。
SLは適時引き上げ、値動きが安定してきたら、トレールに切り替える。
明確な利確ポイントがあるときはそこで手仕舞うとよいが、基本的にはトレーリングストップにかかって終了するまで保有する。放置する。
相場の不確実性と向き合うという意味では、これはとてもよく考えられた方法である。期待値や確率論の観点からも有効な方法だと言えるだろう。
【追記】
「Trading Chaos」第2版に関連して、「三賢者」(The 3 Wise Men)について書き記しておく。レビヤタンシステムを学び始めたばかりの人はむしろ混乱するかもしれないので、以下は必要に応じて参考にすればいいだろう。
「相場の達人」という邦訳で日本語になっている「New Trading Dimensions」出版から数年を経て相場の状況が大きく様変わりしたとBill Williamsは言う。「Trading Chaos」第2版ではそれを反映すべくトレンド転換の逆張りエントリー手法が新たに紹介されている。私たちがレビヤタンシステムにおいて「上級エントリー手法」として位置づけているものだ。
第2版ではこれを含めて合計3つのエントリー手法を解説している。それを東方の三博士(三賢者)になぞらえ、The 1st Wise Man、The 2nd Wise Man, The 3rd Wise Manと名付けている。The 1st Wise Manは「上級エントリー手法」だと言った。The 3rd Wise Manは「初級エントリー手法」に相当する。The 2nd Wise Manは「中級エントリー手法」のことではない。二番目の賢者については以下の記事の最後で簡単に触れた。
今回紹介した「Reverse Pyramiding」はWise Menの3つのエントリー方法と併せて使う時に最もその効果を発揮する。
The 1st Wise Man 1回目のエントリー 試し玉、早仕掛け
The 2nd Wise Man 2回目のエントリー 本仕掛け
The 3rd Wise Man 3回目、4回目、5回目のエントリー 増し玉
もっとも、常にこの順番でエントリーしなければいけないというルールーではないとBill Williams本人が明記している。The 3rd Wise Manのシグナルが出現したらエントリーする。順番を守るには及ばない。