レビヤタンシステム 第3講 Fractals
本講は第3回目である。まず第1講と第2講をお読みいただきたい。
Awesome Oscillatorは、相場のモメンタムを可視化する。
Alligatorは、トレンドのはじまりと継続と終わりを可視化する。
Fractalsは、値動きの位相関数を可視化する。
この講でいうFractalsとは、「チャートのフラクタル構造」のことではなく
ビル・ウィリアムズが独自に開発したインジケーターの名称である。
当然この名称は、フラクタル幾何やカオス理論に由来する。
線形幾何と線形物理学(つまりはユークリッドやニュートン)に基づく
従来のテクニカル分析は、過去データの数値化であるがゆえに
相場の現在性に関しては役に立たない、というのが
ビル・ウィリアムズの立場だ。
カオス理論によれば、過去の値動きと現在さらには未来の値動きには
なんの関連性もない。過去は将来を示唆しない。過去を知ることは
未来を予測するになんら益するところがない。
この考えから、ビル・ウィリアムズは、統計学や標準偏差を使った
従来のテクニカル分析には優位性がないと結論づける。
トレーダーが知るべき必要なことは
マーケットの構造 Market Structure と値動きの現在性なのである。
マーケットが今何をしているのか、これから何をしようとしているのか
これがわかれば、マーケットとシンクロしたトレードが可能になる。
ビル・ウィリアムズが考案したFractalsというインジケーターは
「マーケットの今」"What's happening now in the market?"
を可視化するためのものである。
フラクタル幾何のブノワ・マンデルブロ(Benoît B. Mandelbrot)の用語では
「フラクタル」は「行動における変化」を意味する。
チャートで考えると、価格の上下変動が「フラクタル」に相当する。
市場参加者(大衆)の行動における変化をFractalsは可視化する。
かの有名なダウ理論というものは
世界がアリストテレス一辺倒であった時代
人類がユークリッドやニュートンしか知らなかった時代の”遺物”である。
ビル・ウィリアムズが考案したFractalsは
アインシュタインやフラクタル幾何やカオス理論以降の世界における
21世紀型「ダウ理論」といってもよいのかもしれない。
最低5本のバー(ローソク足)で方向性がわかることを
ビル・ウィリアムズは突き止めた。これをFractalsの最小単位とする。
高値と安値を切り上げたバー(ローソク足)が3本確定したあとで
高値と安値を切り下げたバー(ローソク足)が確定すれば
最高値にFractalの矢印が点灯する。上フラクタルである。
下フラクタルはこれの逆で考えればよい。
下図 A またはそれを逆さに反転した形状のことだ。
このように理想的な形状にならないことのほうが多い。
B、C、D の並びも Fractal 成立と考える。
「手の形」を思い浮かべよとビル・ウィリアムズは言う。
中指を Fractal として、右に2本、左に2本、中指より低い指がある。
上フラクタルが確定するのは、それより低い2本(または2本以上)が
下フラクタルが確定するのは、それより高い2本(または2本以上)が
それぞれ確定したときである。
ゆえに、フラクタルの矢印そのものは売買シグナルとはならない。
これをよく理解しておかないとフラクタル手法はわからない。
たとえば、ネットやYouTubeなどでフラクタルを逆張りに使う手法が
まことしやかに紹介されているのをよく目にする。
出来上がったチャートを見る限りではとても優位性があるかに思える。
しかし上で述べた仕組みがわかるととんでもない勘違いだと気付くだろう。
「弱気フラクタル」「強気フラクタル」という解説をしているブログを
見かけたが、フラクタルには弱気も強気もない。
そもそもビル・ウィリアムズに言わせれば、マーケットにブルもベアもなく
「買われすぎ」「売られすぎ」はトレーダの思い込み・妄想なのだから。
フラクタルには3つの役割がある。種類ではない。役割だ。
同一のフラクタルが3つすべてを、またはそのうちの2つを
兼ね備えることがいくらもある。
フラクタルができたのち、反対側にもうひとつのフラクタルが完成すると
はじめのフラクタルを「フラクタルスタート」と呼ぶ。
そして、反対側に形成されたフラクタルを「フラクタルシグナル」と呼ぶ。
フラクタルスタートからフラクタルシグナルまでの値動きを
下位足(最低100本のローソク足)で見るとエリオット波動が
1波から5波まで形成されていることを発見するであろう。
フラクタルシグナルは、エントリーのシグナルとなる。
逆張りではなくブレイクアウトした方向へ順張りでエントリーする。
上の図でいうと、フラクタルシグナルを下方向にブレイクしたらショート。
具体的には、フラクタルシグナルより 1 pip (+スプレッド) 下に
逆指値注文(ストップ注文)を置く。ブレイクすれば注文が約定する。
そのとき損切りをエントリーした足から数えて反対方向に2つ前の
フラクタルのうち、エントリーした位置から遠いほうに置く。
これが役割の3つ目「フラクタルストップ」である。
エントリーした方向にトレンドが続く場合には
フラクタルストップが形成されるごとに損切り位置を動かし
トレーリングストップでトレンドの波に乗ってゆく。
エントリーは成り行きではなく逆指値注文(ストップ注文)と書いた。
つまり、フラクタルシグナルをブレイクしなければエントリーできない。
これは負けトレードを避けるためのフィルターとして働く。
価格が逆行して、フラクタルスタートの位置まで戻った場合は
逆指値注文(ストップ注文)をキャンセルする。
もしヒゲなどでエントリー注文が約定したあとであったならば
フラクタルストップを待つことなくフラクタルスタートで損切りする。
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Fractalsを単独で使ってNASDAQとDAXで継続的に勝ち続ける
ベルギー人トレーダーがいることを知っている。
同じ手法が、日経225先物ミニでも有効なことも検証済みだ。
けれども Fractals は単体で使うよりも Awesome と Alligator と組み合わせて
総合的に判断することでもっとエッジのあるトレードをすることができる。
次回の第4講「トレード手法」では
レビヤタンシステムの全貌をいよいよ明らかにする。
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