日記 桑田佳祐のベストアルバム
母親から「最近は桑田佳祐のベストアルバムを聞いています。普段から「いつか何処かで」を聞いています!とてもいいアルバムだからおすすめ!」といったLINEがくる。ベストアルバムを「とてもいいアルバム」というのがなんかおもしろかった。俺が桑田佳祐だったら「まあ世の中そういうもんだよな」と悟った顔をすると思う。
ふと父親が生きていた頃、外出をした時はいつも車でサザンかドリカムかミスチルがかかっていたことを思い出す。サザンや桑田佳祐は父と母が高校時代から二人で聞いていたとか言っていた気がする。最初に暮らしていた実家で、押入れの中にスイカの缶があって、蓋を開けるとスイカ柄の下着が入っていた、あの映像、幼い頃の記憶が出てくる。
「いつか何処かで」を調べるとリリースされたのは僕が生まれる五年前で、母親の青春時代真っ只中だった。聞きながら死んでしまった父親のことを思い出さないのかと少し気になった。というか父親じゃなくて、彼女にとっては「彼」だ。
「いつか何処かで」がピンとこなかったので聞いてみると、桑田佳祐があのしゃがれた声で
とか言っていて、喫茶店で俺が泣く。俺が泣く。直球すぎ。どんな気持ちであの人はこれを聞いているんだ。「I feel the echo.」ってのは、声が響いているイメージだけど、こだまというか、なんなんだろう、記憶の中で現在聞こえる「声」のことかしら。しっかり辛い。しっかり辛くてよかった。年齢を重ねれば重ねる程、頭の中に残っている母親の年齢に近づいていく。痛みが手に取る様に分かってくる。時間が経てばたつほど、見ないようにしていたことと向き合うようになる。恋人が自殺するってやっぱりヤバいよ。俺だったら、あとを追うと思う。母親強い。バリリスペクト。今でも自殺した親父のことを殺したい程憎んでいるけど、いつかきっと彼にも同情する時がきて、その時俺の心は一度ぶっ壊れると思う。彼が抱えていた痛みを想像したことがない。知らないそんなこと。
父親が死んだことを笑いにするようになったきっかけは、それがめちゃめちゃ辛かったからで、その痛みから逃げるためにやっていたことなんだけど、それじゃダメじゃん、しっかり受け止めた奴にしか笑いにする資格はないじゃん、って思っていたから、安心した。狂ってるから笑えるみたいなの嫌い。まともでありたい。狂ってるやつって弱いよ。虚弱。
それにしても桑田佳祐って結構いいんだな。あんま知らんかった。ベストアルバムいいわ。みんなにもおすすめする。ここ一年暗いことしか書いていないわ。みんなには伝わらないと思うんだけど、俺はめちゃめちゃ明るく生きてます。信じられないくらい。根が明るいのと、頭が悪いのに物事を解決する能力が高いから、深刻になれないの。あはは。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。