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エクイティと融資の相性

資金調達の際に金額が最重要になって「何のための資金か?」が後回しに感じることがあります。

もちろん、事業計画から算出した必要資金ですので間違っているとは言えません。
ただ、聞いていて納得感がない場合があります。
その際は再度資金使途や事業計画から話を聞き直しています。
(*特定企業の話ではなく、よくあることです。)

【ケース1:出資とエクイティどちらでもいい】
これは金額が至上命題になり、資金の性質を見落としています。
ただし、事業の規模や進捗、資金使途によってはないことではありません。
が、スタートアップや新規事業で新規の投資をする際にどちらでも良い、はあり得ません。

当然ですが融資の場合は返済があります。
5000万円あれば、はその通りですが、5000万円でソフトウェアの開発ができるとしましょう。
その内、投資に回せるのはいくらでしょうか?

会社の財務の状況によりますが、いわゆるスタートアップで現預金もキャッシュフローも余裕がないとします。
(そもそも、その場合に5000万円の融資を受けることは難しいですが・・・)
返済期間もそれぞれですが、一つだけ言えることは5000万円満額を投資できないことです。
当たり前のことを言うなと言われるかもしれませんが、かなり多いです。
例に挙げたステージだと、創業融資や制度融資等、特別なものを活用しない限りはなかなか融資が難しいのです。
本当に5000万円を投資したければ、融資額はそれよりも大きくなるはずです。

先出の記事でも書きましたが、ある程度のCFが確証できる場合は考え方が別です。
返済の猶予期間を設ければ、稼働してからの返済&資金回収が可能になる。
融資は実行できるということになります。

【ケース2:○年分の資金】
事業に専念したい気持ちは重々汲み取りますが、ベンチャーは日進月歩、今より半年後、一年後、二年後の方が企業家価値が上がっていくはずです。
(だからこそ財務の専門家(CFO)が欲しいんです!!)

また、出資サイドから見ても、今の事業進捗では難しいが、半年後のローンチ後、実績が出始める一年後、導入後の経過も見える二年後に出資できるという場合もあります。

そのために必要以上の調達、特にエクイティの場合はダイリューションが起きるためにあまりオススメしません。
(各社のスタンスや攻めるタイミングもありますので、必ずこうあるべきと言うものではありません。)
然るべきタイミングの際に株主の持株比率が歪んでしまっていて断念されるケースもあります。
よく言われることですが、51%はキープしておいて欲しい、です。
できれば代表、でなければ身内、メンバーでと順々の話にはなります。
資本政策は不可逆ですのでやり直しが難しいです。

経営としてできるだけ資金があることに越したことはありませんが、+αは融資ですることです。
(金利も低いので、運転資金確保のための融資はオススメです。)
出資は投資に必要な資金+やや余裕を持った見積り、ぐらいが良いでしょう。

【エクイティ+融資はできるの?】
答えはできます。(*確実にできることをお約束するものではありません。)
理屈ではエクイティは純資産の部、融資は負債の部に計上されます。
出資は返済も不要(*一部条件付きを除く)のため、それを元に融資はしやすくなります。
シンプルに現金が増えますので、事業計画の見せ方次第では余裕を持った会社に見えるからです。

一方でVCと銀行に出す計画書が違う、という話を聞くことがあります。
ストレッチした計画とコンサバな計画、と捉えている方がいますが本質は違います。
それぞれの見る視点が違うからです。

先述の事例の流れで説明すると、

[出資を受けた後に融資を受ける際の計画]
・ストレッチした計画
出資を受けた5000万円を全て開発資金等の投資に当てる、とした場合、融資はしにくいです。
なぜならば返済原資が確保できないからです。
銀行は手堅い計画が良い、と極端に受け取られがちですが、根本は返済できるかどうか、です。

・コンサバな計画
5000万円の内訳が3000万円を投資、2000万円を運転資金や余裕資金、とした場合、2000万円は融資できる可能性があります。
融資の2000万円の資金使途を運転資金とした場合、キャッシュとして2000万円残っているので返済原資があるからです。
7000万円(エクイティ5000万円+融資2000万円)であれば余裕を持って事業に取り組めるでしょう。

[出資を受ける際の計画]
・ストレッチした計画
当然、将来価値を見ますので5000万円出資するとどこまでいけるか、を見ます。
その後にどの様に事業展開や調達を進めていくのかイメージを固めます。

・コンサバな計画
先述のように5000万円の内、3000万円を投資、2000万円を余裕資金とした場合、5000万円を出してもらえるケースは少ないでしょう。
(*ないとは言い切れません。)
基本的な考え方は、最低限の投資でどれだけレバレッジを効かせられるか、です。
余裕資金で出資を受けられるケースは、よほど魅力的な事業に見せて、少しだけでも乗らせて欲しい、と投資家に思わせた場合です。
これは投資家のメリットですので成り立ちます。
振り返りますと、事業をきっちり判断する先は余計な資金を出さない、と言う理屈に戻ります。

[方法論・考え方]
前者の方は本音と建前が違う、と思われるでしょう。
ただ、融資担当者を騙している訳ではありません。
融資する側の都合もあるからです。

当然ですが優良な(回収ができる)先であれば融資を実行したいです。
だからこそ融資できる建前が必要になります。
考え方は融資を受けることは事業の確実性も上がり、融資の可能性も高くなる、つまりはwinwinになる、ということです。

【エクイティと相性の良い融資はないの?】
(*一概に融資先や手法の良し悪しを申し上げるものではありません。)
そもそもエクイティと融資で評価軸が異なるので(先述の事例を除いて)なかなか交わりません。

その中で、企業のステージにもよりますが、日本政策金融公庫の創業融資や劣後ローンは相性が良いと思います。

(創業融資の説明は割愛させて頂きます。)
資本性(劣後)ローンは、期限一括返済(5年1ヵ月以上15年以内)で、期限内は金利のみの返済になります。
無担保・無保証ですし、計上されるのはもちろん負債の部ですが、償還順位も低かったりするために「資本性」のものとしてみなされます。
例えば民間の金融機関も融資をしやすかったり、VC等の投資家も出資しやすくなる場合があります。
良いことばかりではなく、リスクを上げるとすると利益が出ると金利が高くなることです。
そのために手堅く利益を上げていく事業には不向きです。
(通常融資の方が向いている場合もありますので、公庫のご担当社に相談してみてください。)

【活用事例】
過去にFUNDINNOの調達企業で公庫の「事前契約」を活用した企業がありました。
現在はコロナ特例の資本性ローンもありますので、その後の調達(エクイティ・融資)の呼び水となる活用方法#しkもできます。

FUNDINNOで調達の準備(社内審査)を進めるよりも先に公庫の担当者に融資の相談をしていました。
公庫のご担当の方から弊社にヒアリングをしたいと電話を頂き、審査部門で回答しました。

ECFの場合は「掲載≠調達確約」なので、実際に募集が成立しないと資金が入ってきません。
そのため、一般のVC等との間で使う「事前契約」を活用しました。
FUNDINNOの募集が成立(調達成功)したら融資を実行(払い込み)します、という内容です。
実際にその企業は募集が成立し、融資も受けることができました。

***注意点***
上記の活用法は、公庫の全ての支店・担当の方が対応してくれるということではありません。
基本的には国の金融機関の方です。
VCの対応をしたことがない方もいれば、無担保・無保証だったり、国の資金を使っていたりなど、立場上固くならざるをえません。
そのため、受け売りで実績がない方が話を持ちかけても対応して頂けない場合があります。
弊社はもちろん事例はありますが、実績のあるところに対応を相談されることを推奨します。

【最後に】
今回はやや実践的な話もさせて頂きました。
資金調達の基本は相手の立場を理解すること、です。
出資や融資を受けられないのは相手が悪いのではなく、必ず自社に問題があります。
だから100%できない、ではなく、できる方法をビジョンに立ち返って、事業の展開の仕方から改めて整理する必要があります。
もちろん、ビジネスについて興味を持てることが前提ですが、私の方で話伺うことは可能です。
(スケジュールが先になってしまう場合は他の担当をご紹介することも可能です。)

自他推薦問わず、話を聞いてみたいという方はお気軽にご連絡ください。

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