[ビジネス考察vol.1]株式会社コーンテック(アグリテック)
【はじめに】
FUNDINNOではアグリテック企業の調達実績もあります。
同社はその中でも『畜産(養豚場)』にアプローチしている企業です。
[株式会社コーンテックHP]
https://corntec.jp
[FUNDINNO募集ページ](*いずれも募集は終了しております。)
https://fundinno.com/projects/103
https://fundinno.com/projects/140
【出会い】
代表の吉角さんとの出会いは、同社CFOの鈴木さんからの紹介でした。
鈴木さんは他にもスタートアップのCFOコンサルを請け負っている方で、同社のボードメンバーに入っています。
熊本が本社のため、吉角さんは月半分ほど東京に来て活動をしていました。
農業県の熊本、広くは九州地方だからこそ「養豚」にアプローチできたのだと思います。
ただ、いわゆるスタートアップと違い、表立って情報がなかったために事前情報が少なく事前の期待値は以下の通りでした。
・事業のユニーク性: A
・ビジネスの蓋然性:?(聞いてみないとわからない。。。)
配合飼料のガリバーがいる業界でどの様な差別化があるのか、楽しみにして話を聞きました。
【事業紹介】:飼料の自家配合(最適化&コスト削減)
同社では自家配合プラントの構築とコンサルで、飼料をつくっている会社ではありません。
ビジネスモデルとしては、ゴールドラッシュに金を掘りに行く人につるはしや作業着を売る、インフラを整える、という話に近いです。
(参照:https://yumiinc.net/2019/01/20/minetheminers1/)
昨今の昆虫食でも取り上げられますが、畜産業は「飼料」のコストが大きなウエイトを占めています。
細かなアルゴリズムはお伝えできませんが、効率が悪くなってしまっていることが要因でした。
素人でも簡単に理解できたものだけでも、
・生育の段階によって必要な栄養素の割合が変わったり、(子供と成長期と大人で違います。)
・冬はやせてしまったり、(豚は寒くなると熱を発するので冬でも暖房はいらないそうです。)
・吸収効率の高い粉砕だったり、(ただ粉々にすれば良いということではないそうです。)
という要因がありました。
これが解決できると20-30%以上のコスト削減ができます。
畜産農家としては大きなインパクトです。
ただ、言っていることはいいのですが、蓋然性の観点で果たしてどれだけ裏付けのあるものなのでしょうか?
[差別化]
既に100か所以上の導入実績がありました。
同事業は新しく考案した「スタートアップ」ではなく、吉角さんのお父さんがされていた「ファミリービジネス」だったのです。
(ビジネスモデルマニアとしてはたまりませんでしたwww)
・技術としても個人になりますが大学教授の研究が裏付けがあり、簡単に真似できるものではありませんでした。
・養豚業界で大手(年間出荷頭数30万頭規模の日本で4番目に大きな農場・林牧場)にも導入されており、二桁億円レベルでのインパクトも出ていました。
ファミリービジネスと言えど、調達の前期は豚コレラの影響で着工が止まってしまったのですが、それ以前は数億円級の売上がありました。
そのため、飼料業界の大手からM&Aの打診もあり、ちょうどファミリービジネスの分岐点でもありました。
FUNDINNOではザルで受け入れることもしませんし、且つ私も調達を勧めることもしません。
吉角さんもどうするのか腹を決める段階だったので、事業として成長させることの背中を押させて頂きました。
【個人的に評価した点】
偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、私が背中を押した理由です。
代表の吉角さん自身に明確な『ビジョン』があったからです。
(詳細は同社HP、もしくはFUNDINNO募集ページをご参照ください。)
ファミリービジネスから脱却し、パブリックカンパニーとして展開した方が良い、というご本人の意思もありました。
[生産者の需要をとらえたマーケットイン]
IT化という言葉が出始めてから、様々なアグリテック企業が出てきていますが、多くはプロダクトアウトが多いと感じています。
タスク管理のノウハウがあるから、AIカメラの技術があるから、管理のノウハウがあるから、等々、良し悪しではないですが、一巡して高齢化している現場が使いきれなかったという声が出てきています。
そのため、現場のニーズ発信のいわゆるマーケットインは珍しいケースです。
[特殊なマーケットだからこそのコスト削減]
コスト削減は、デフレ化で伸びるビジネスです。
リーマンショック後、様々なコスト削減が生まれました。
そこからスタートして上場した会社もあります。
[株式会社プロレド・パートナーズ]:経営コンサル、コスト削減
https://www.prored-p.com
養豚、その中でも飼料は特殊な業界です。
寡占化市場であり、且つクローズドなマーケット、ただ大手商社が入るほどボリュームは大きい。
コスト削減の主な要因は「情報の非対称性」と「信用(実力)」です。
情報が溢れている時代の中でもガラパゴス化している、その中で大手からリプレイスできる信用ができていました。
[飼料米生産を持続させるための養豚]
大豆ミートや培養肉、昆虫食等の代替タンパクが話題を呼んでいます。
豚、食肉文化は無くなるのか?
ここは様々な議論があるので、本記事では事実だけを取り上げます。
国策として田んぼ(米)が減反され、飼料米への転作が進められてきました。
日本はご存知の通り、食料自給率が低いです。
基本的な生育・収穫方法が変わらないため、有事の際に米農家がいない、食糧危機を防ぐという考えがあります。
ただ、つくった分は食べなければなりません。
そこで豚用の飼料として米が利用されています。
つまり日本の農業を維持していくために畜産は切っても切り離せなくなっているのです。
[サーキュラーエコノミー:エコフィードの活用]
また、ESG投資の観点もあります。
地方創生や元の事業だけでも十分なのですが、ここが熊本(地方)ならではです。
それぞれの地域で出る『エコフィードの活用』を掲げていました。
ここも様々な企業が取り組んでいますが、同社はその中でもユニークな存在です。
前出の通り、豚も生き物なのでただ混ぜて与えればいいものではありません。
そのため、複雑なアルゴリズムが必要であり、現状は同社でないと使いこなせません。
そこさえできれば、各地方、強いては国でも応用が効く、グローバルモデルにもなり得るのです。
同社で全てができる訳ではありませんが、これまでぶつ切りだった循環を結びつけるピースにもなり得ます。
マーケットとしても十分期待できる、と考えました。
【調達に至るまで】
守秘義務もあるので全ては言えませんが、調達までに様々な準備をしました。
その一つはカーブアウト(分社化)です。
吉角さんは元々会社を経営しており、本事業をスケールさせていく際に混同しないように事業部を切り出しました。
(*一方で、複数会社を経営している方は敬遠されることもあります。)
また別の異界にご紹介できればとは思いますが、カーブアウトは業歴の長い会社や地方型ビジネスをする際に有用な方法だと考えています。
一方で分社化する際に先述の出資を受けにくくなるリスクや税務上のリスクも発生するので、本記事に書いてあるからと言って安易に実行することはやめた方が良いです。
(*必ず実務経験のある専門家に相談されることをお勧めします。)
同社の場合、その調整で約半年かかりました。
イチ事業として部門別で締めるなど会計をしっかりしていたのに、です。
契約書もしっかり整備し、既存の取引先との調整も行い、、、あげるとキリがありません。
ここでも本人の本気度合いがわかります。
オーナー気質の方は面倒になる傾向がありますが、吉角さんは前向きに取り組んでいました。
細部のプロセスに経営者の資質も見え隠れするものです。
【調達その後】
同社はFUNDINNOで二度の調達をしました。
多くの投資家の方々に支援されたのは、一定の理解が得られたからと考えられます。
予定していた大手企業への導入も順調に進み、中小の養豚場にも導入しやすいように考案したファンド構想のパートナーとも大筋合意に至っております。
一方でコロナの影響も受けています。
養豚場は全国各地にありますし、豚コレラの際もそうでしたが先行投資は控えられる傾向があります。
そのために当初の計画から遅れています。
ただ、コロナ禍も約一年経って導入の動きが戻ってきました。
次なるAIの展開もありますので、 地方発ベンチャー&FUNDINNOで調達したアグリテックの代表として頑張って頂きたいと思っております。
【所感】
同社は地方発ベンチャー、ニッチトップ、コスト削減、アグリテック、ESG投資と様々な観点があります。
地方型のモデルの参考になると思いますので、多少なり参考にして頂けましたら幸いです。
私自身も地方出身、家業が米農家だったこともあり、同業界は常に注目しております。
自他推薦問わず、話を聞いてみたいという方はお気軽にご連絡ください。
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**注意書き**
本記事は事業の紹介が目的であり、事業の成功の確約や投資勧誘を目的としたものではありません。
そのため、これから調達をご検討される方にイメージがつきやすいような構成にしております。
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