ロゴとイラストトーンの関係性
企業が使用するイラストはブランドビジュアルの核となり、ロゴ表現との関係性も切り離せません。
今回は、さまざまなブランドで使用されているイラストとロゴにどんな関係性があるのか。ブランド事例を考察することで、制作に活かしてみましょう。
|同じフォルムをまとう
■ Notion / Only Domains
2つのブランドは、シンボルや書体の形状が角丸で構成されており、イラストもトンマナを合わせた丸みのあるフォルムになっています。
柔らかく親しみのあるイラストは、ブランドが体現したいユーザーとのコミュニケーションのあり方を印象付ける重要な役割を担っています。
■ Boqueria
ローラーでインクを塗った風合いのロゴは手作り感があり、イラストも「魚拓(野菜拓?)」のような表現でレストランらしく、「厳選素材・シズル感」を演出しています。
■ NI
角ばったロゴの印象に合わせ、イラストにも四角のテクスチャを重ねて表現しています。投影されたホログラムのようなテイストは、テクノロジー企業であることや先進性も感じることができます。
|ロゴのテンションの擬人化
■ Oberlo / Upwork
2つのロゴは共通して、シンプルな表現の中にもユニークさを感じさせる調整が施されています。
「Oberlo」は文字のカウンターを円形処理をし、「Upwork」の「up」部分はつながりを表現しています。
イラストはそのロゴのユニークなテンションを具現化しています。
ロゴに凝縮されたシンプルなコンセプト(世界観)をより拡張させる役割をイラストが担っていることがわかりますね。
■ Super She / The Book People
2つのロゴはネーミングがどちらもユニークです。
「SuperShe(なんか凄そうな女の人のイラスト)」と、「The Book People(本で空飛ぶ少年のイラスト)」など、軽妙で不思議なネーミングをイラストで明快に表現することで、ロゴの持つ意味を補強しています。
■ Slack
ロゴの4色表現は、「多種多様な人と関わること」を向き合った人々で表現していて、イラストもそのコンセプトを上手に表しています。
|書体とイラストは同じ世界に住む
■ Derwent Valley
サンセリフ体に「墨取り」処理をすることで、セリフ体に近い繊細なニュアンスを出したロゴです。
サンセリフ体の大胆なイメージと相反するこの繊細さは、アンバランスな表情を生み出し、イラストもそのアンバランスさを取り入れることでこのブランド特有の品あるトンマナを成立させています。
■ Denver Distillery / Ceria
この2つのブランドは、モノグラムとセリフ体(スクリプト体に近い)を使用していて、知的で格式を感じる表現です。
イラストも色調を抑え、アートのような造形美を感じる表現にしています。
(どちらのイラストもアンリ・マティスの切り絵のようで、額に入れて飾りたいです。)
■ Gathering Growth Foundation
ロゴはセリフ体ですが、ウエイト(書体の太さ)があるので骨格に芯があり、知性を持ちながら主張するパーソナリティが感じられます。
イラストもそのトーンに合わせ、年輪の精緻な写実表現が使用されています。
|ブランドストーリーを拡張する
■ Whereby
Wherebyは、「web上にビデオ通話機能を実装できる」サービスを提供する企業です。何もない場所にビデオ通話で”空間を創り出す(異世界感)”ことをコンセプトにしています。
イラストも、少し奇怪なビジュアルを採用することで「未開の地・真新しさ」を示し、それが決して不快な体験ではないことを書体や配色の心地よさでビジュアライズしています。
■ Rippling
サンセリフ体ながら、文字のカーブ調整をすることでOptima書体のような格式ある雰囲気を感じさせます。
Ripplingは、優秀な人材同士「顧客⇄ユーザー」をマッチングさせたり、人材管理をするサービスのため、イラストではナチュラルな配色に、よりリアルな人を感じさせる写実的なポートレート表現がされています。
■ The Balvenie
食品ブランドで扱われるイラストは、時にリアルな商品写真よりも効果的に機能することがあります。
特に、経年変化で味わい深くなるウイスキーは、「味のある風合い」を表現する場合、イメージ写真では「傷や汚れ=不衛生」と勘違いされる可能性も少なくありません。
イラストでは上品なサンセリフ書体と共に、風合いのあるテクスチャでシズル感を出したり、”夜に飲もう”など説明的すぎないシーン訴求も表現できます。
|ロゴとイラストの関係性まとめ
事例を考察することで、ロゴに凝縮された”世界観”をより拡張し、コンセプトに厚みを持たせるイラストの機能的な側面が見えてきたことがわかりました。
こうしたイラストの機能性を理解した上でユーザーとのビジュアルコミュニケーションを設計することで、コンセプトに基づいた世界観づくりや独自のブランド確立につながりそうですね。
|最後に
先ほど紹介した事例も含め、各ブランドをマッピングした資料を貼っておきます。
「親しみ(Familiarity)」と「スマート(Intellectual)」に大きく分けつつ、縦軸で「シンプル→写実的(Simple→Realistic)」でグラデーションの見え方になるような配置にしています。
※イラストを評価対象としており、各企業の理念やサービス内容は考慮せず振り分けています。
▼親しみ
▼スマート
b.labo