RISD | VI刷新
デザイン学校(RISD)のVIコンセプト策定のためのフレームワークと、そこから生まれたカスタム書体の考え方が素晴らしかったので紹介します。
|RISDとは
1877年に設立されたRISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)は、ロードアイランド州プロビデンスにある芸術とデザインの学校です。
19の専攻分野で学士号と修士号のプログラムを提供し、約2,500人の学生が在籍しています。常に世界のファインアートプログラムの上位にランクされており、入学時の合格率は約20%(狭き門!)です。
|オープンなフレームワーク
RISDは今回の刷新に伴い、新たに「アイデンティティ・フレームワーク」を作成しています。
このフレームワークはWeb上で公開・バージョン管理されており、その経緯も含めて確認できます。
|フレームワークの構成要素
このフレームワークを設計する上での方向性・指針を示しているページを紹介します。
●理念
コミュニティ全体の指針となる、RISDの存在理由の策定。
●価値提案
他のデザイン学校とRISDの差別化/優位性の明示。
●組織化の原則
RISDの指針と、ビジュアルへの展開を導く論理のためのフレームワーク構築。
●言語ツール
一貫したユニークなトーンを継続させるためのブランドの資質/特徴の作成。
●ビジュアルツール
すべてのタッチポイントで一貫性があり、地域や対象者に応じて柔軟に対応できる、拡張性と適応性に優れたVIの構築。
フレームワーク全体の方向性がブレないような指針が策定されていますね。
個人的に驚いたことは、私立の芸術学校がUXアプローチを用いてアイデンティティを確立し、資料化・公開までしていることでした。
下記の動画にある通り、インタビュー/アンケート/フォーラム開催でステークホルダーの声をキャッチし、長い歴史のRISDが新たな時代・社会における自らの在り方を探求する熱量が素晴らしいです。
|ロゴの刷新
紋章のようなロゴデザインに大きい変化はないものの、細かい調整が施されています。
その中でも旧ロゴとの大きな違いは、「1877 Rhode Island School of Design」の文字を縁取っていた2つの円が削除され、簡素化されたことです。
個々の文字を見てみると、ストロークは太く、セリフ部分の丸みは鋭角に、ハネの部分もより明確に調整されています。
この調整方針はロゴのカリグラフィー表現として、整合性を高めるように工夫・改善されているように感じました。
|カスタム書体について
今回新たに制作された書体は、RISDの新アイデンティティを大きく表現するビジュアル要素の一つです。
そのインスピレーションの基になる"Complete/Incomplete(完全と不完全) "という言葉は、在籍する多くのクリエイターが簡単に理解できる共通言語として設定されています。
この2つの書体は、完全な字形を持つ「Complete」セットと、文字の一部を取り除いたステンシルのようなアプローチの「Incomplete」セットを提供しており、「Complete/Incomplete」の二面性を表現しています。
初めにこの書体を見た時、なぜステンシル書体なのか?と疑問が浮かびましたが、芸術における「創造の過程(プロセス)」を表現していることを知り、なるほどと思いました。
不完全なものも完成された芸術であり、文字⇄図形(読める/読めない)のように、タイポグラフィで表現しているところがデザイン学校らしいですね。
これとは別に、可読性に優れたRISD SerifとRISD Sansも存在しています。
|カラー設計
カラー設計は、RISD校舎の周辺環境などから引用されています。
|アプリケーション展開
|ディスプレイ/サイン
|デジタル展開
|まとめ
コンセプトの核となるビジュアル表現・意図をタイポグラフィに集約し、その経緯(フレームワーク)を資料化することで共通言語化を図る。
特に、今回はRISD+VI構築するデザイン会社+リサーチ会社と3社共同でプロジェクト推進されているようなので、より共通言語化して進める必要も有ったのかもしれません。
フレームワークの内容も、まだ具体的に読み進められていないページもあるので、もっと深堀してみたいと思います。
以上、RISDのVI刷新でした!
b.labo