もう、頑張っても何にもならない
自分は医者の仕事しかわからないので、アラフィフ世代の医者の気持ちを残しておきたいと思います。
僕は出世競争にも敗れ、上司や病院の方針に疑問を抱いているため、上からも評判は良くありません。
5年更新の職場であるため、次の任期更新では更新を認められず、クビになるのでしょう。
先も見えない中で疲れてきたため、以前よりも仕事を大分若手に任せることが増えました。
だけど、今でも勉強するところは一生懸命勉強して、自分にしか出来ないことは手を抜かないつもりです。
そういう今がなぜあるかを書いていこうと思います。
もう廃れていくメーリングリストですが、その中でも若手にリクルートがあります。
「オンオフがある職場、産休育休に理解がある職場、働きやすい職場。専門医も取得可能!」
こいつらが定時で帰った後の、残務のツケは我々ロスジェネ世代が払っているわけですが、今日の主題はそこではありません。
将来どうなるかを書いてるのはごく少数です。
書いていても、地方の病院で活躍とか、そこで常勤医になれるとか、その程度です。
若いころの僕は、将来は専門医を取るとか、論文を通して博士号をとるとか、出世して部長になるとか、今後も切磋琢磨や競争を重ね成長していくと思っていました。
しかし、実際は全く違いました。
40代後半に近づくと、競争に残れるのはごくわずかです。
例えば、内科医が10人いる病院で、40代の医者が3人だとします。
残りの医者は30代以下です。
その中で医長になれるのは、せいぜい2人です。
2人は医長以上の地位を保ち、降格することはまずありません。
頑張れば昇進できるかもしれませんが、部長になれるのはそのうち1人です。
1人が部長になると、椅子が1つ空くじゃないか、と思うかもしれません。
きちんと仕事をこなせば、40代の自分にも順番が回ってくる。
下剋上や外部からの人事異動がなければ、昇進の機会はあるはずです。
ただ、よく考えてみてください。
その時、自分は何歳でしょうか?
脳も体も衰え、もしかしたら病気になっているかもしれません。
そんな中、僕はこれからも走り続けるのでしょうか。
いつまで走り続けられるのでしょうか。
そのような中、モチベーション高くバイタリティが高く働けるアラフィフがいますよね。
本当に素晴らしいと思っていました。
どうしてそんな力があるのだろう。同じ人間なのに。
ずっと考えてきてやっとわかったんです。簡単なことでした。
あまりにも気が付くのが遅すぎました。
人を蹴落とすためです。
アラフィフになるにつれ、人間性能は明らかに落ちます。
そして、医者の人間性能は個人個人でそんなに変わらないと思います。
では、効率よく差をつけるのは何か。
それは「蹴落とす」ことです。
相手に少しだけ勝っているところがあれば、そこを何度も強調すればよいんです。
僕はこれができるけど、あいつはそれもできない、これもできない。
こんなことも知らない。
陰でも公然でもいろんなところで貶せばよいわけです。
そうすれば、自分が相手よりも相対的に優秀な人間として評価が得られます。
例え貶める内容が妥当でなかったとしても、相対的に評価が高まっている人間が言えば真実となります。
いわゆる「誰が言ったか」ですよね。そういうことか。
ひどくつまらなくなりました。
いつも外来カルテを見返して、最大のマネジメントをこなそうとしたり木曜日にはNew England journal of medicineと推しの子を欠かさず読んでいたのに。
もう、頑張っても何にもなりません。
これからどうしようかなぁ。
でもね、勉強は楽しいんです。
医者で良かったと思うことは、人間の体について知ることができたことです。
この病気はどういう病気で、体に何が起こっていて、どんな症状がでるのか。どんな薬が効くのか。将来どうなるのか。
たくさんのことが分かれば、それだけ仕事も、人生も面白くなります。
その知識を、困っている人や目の前の患者さんに提供できるのもまた、楽しいことです。
感謝されますし。
勉強は悪くないぞ。
木曜日にはNew England journal of medicineと推しの子を読みましょう。
推しの子は今がクライマックスです。