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【勝手に書評】初めて握る人のための気管支鏡入門マニュアル 改定第2版

コロナ禍では、学会に行くことがなくなりました。学会といえば、自分の楽しみは新しい医学書を手に取り読むことができるチャンスがありました。先行発売の本も読めるし、ちょっと楽しみでした。しかし、この世の中で本を手に取ることができなくなり、医学書の情報がとても少なくなりました。そこで考えたのが、自分は書評を書くのが結構好きなので、実際読んで参考になった医学書の書評を書くことを始めました。

初めて取り扱う本は、
「初めて握る人」のための気管支鏡入門マニュアル」(MEDICAL VIEW社)です。参考にしていただければと思います。
https://amzn.to/3vFFhVu

すぐにでも気管支鏡を握りたくなる

筆者は呼吸器感染症を沢山扱うようになってから、気管支鏡を握ることが減ってしまいました。というのも、呼吸器内科で気管支鏡を行う疾患のほとんどは、肺がんなどの腫瘍性疾患や、間質性肺炎などのびまん性肺疾患だからです。以前の呼吸器専門病院に居たときは、症例の多くは肺がんでした。もう自分は若手でなかったため、生検や擦過の補助、透視の操作をすることなど、裏方に徹していました。裏方をやっている間にも、気管支鏡には新しい手技が増えていきました。例えばEBUS-GSや、EBUS-TBNAなどです。今の若い先生はこの手技すらもう古いもので、今はクライオバイオプシーだろおじさんたちと感じているかもしれません。しかし、自分としては末梢の肺結節や、縦隔リンパ節にアプローチが出来るなど、昔の透視をみながらのTBLBから、世の中はとても進化したなと感じています。
そして現在、かなりのブランクを経て自分が再び気管支鏡を握るようになるとは思いませんでした。もちろん、スコープの挿入から観察、昔ながらの生検やBALであれば、実践をこなす上であまり時間がかからず以前の腕に戻るでしょう。しかし、それでもそれは昔の技術です。長い時を経て知らないことが積み重なり、さらには、ずっと鍛錬を続けてきたわけではないので、同年代に比べて技術的に劣っていることに対峙しなければなりませんでした。

この気管支鏡入門マニュアルは、そんな私のようなブランクがあるもの、そして初めて気管支鏡を握るシニアレジデントに強く勧めたい一冊と考えています。なぜなら、この本はとても実践的で、かつすぐにでも使える内容が鏤められていからです。

気管支鏡を実践するには、沢山の手順を理解した上で行わなければなりません。具体的には以下のようになります。

・まず、どういう病変・症状に対して、気管支鏡を行うかを決定する。
・そして気管支鏡で「どのような手技」を行うかを決定する。具体的には微慢性肺疾患に対するBALであったり、EBUS-GSによる肺結節のTBLBであるかなど。
・患者さんに、上記の内容と必要性、具体的な検査法と麻酔法、合併症を説明した上で同意をもらう。
・検査の準備を行う。(物品を揃える、N95マスクなど各種防護具、咽頭麻酔、患者さんへのモニター装着、そして静脈麻酔)
・スコープ挿入からの観察手技を行う。
・BAL、EBUS-GS、TBUS-TBNAなど各種手技を行い、合併症の有無を確認し検査を終了する。
・検体処理を行う。病理や細菌検査のオーダを行う。
・内視鏡の洗浄を行う。
・内視鏡のレポートを作成する。

この本のすごいところは、この実践的な内容を一つずつのステップに区切り網羅的に取り上げている上に、見やすい大きな図を沢山つかって説明しているところです。
そして本当にすごいところが、百聞は一見に如かず、具体的にどうやるかを購入者だけが見ることができる動画サイトで解説しているところです。教科書の写真を100回眺めていても、動画の情報量にはまったくかないません。EBUS-TBNAでのリンパ節の出し方とか、内視鏡の洗い方とかマジで勉強になりました。すんなり頭に入り、出来る自信がついてきます。
一方で、もしもこういう手技の解説本が動画だけであったとしたら、一通り再生しなければならないし、勉強にも必要以上に時間がかかります。その点、短い動画と本がセットになっているところも大きな強みだと思います。パソコンを立ち上げて、ディスクを読み込む手間も無いこともとても良いと思います。
とにもかくにも、懇切丁寧と言えるでしょう。CTでの枝の読み方から具体的な手技まで盛りだくさん。読んでいるうちに明日の気管支鏡症例について、今すぐにでももう一度予習したくなってしまいました。流石に今すぐ握ったらいかんですけど。
この本で何度でも予習し、検査が終わったその日の夜にはまた、振り返って読むことを何度も何度も繰り返して行くのが良いと思います。ぜひぜひ僕のような老いぼれでなく、若手のみなさんに勉強にしてほしい一冊です。
個人的には、動画の一部をサンプルで見れるようにしてほしいし、さらに動画の内容が増えていけばいいなと思っています。


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