おじさんのお料理教室残酷日記
実は月1回、僕はこっそりと吉祥寺のような遠いところに通っています。
今回で3か月目です。
実は「習い事」に来ています。
おしゃれをしに来たわけではありません。吉祥寺の雰囲気にのまれて
うわーっと盛り上がって気が付けばZARAのチェックコートを大人買いしに来たわけではありません。えっと、20,000円しました。よい買い物でした。
42歳のおじさんが鬱屈としているのは今までの日記の通りで、自分自身がこのまま衰えて死にゆく人生をどう過ごしていいのか性懲りもなく考えていました。だいぶ時間の無駄とわかってきましたが、そういうお年頃なのでしょう。
僕は運が良くて、たまたま一生懸命努力をしたため、仕事に恵まれていました。自分に費やせるある程度のお金があったのです。そこで、習い事を始めるに至りました。
40を超えての習い事では、何か才能が開花したり、すごいことができるわけではありません。体力も脳もだいぶ衰えています。仕事のようにこだわり続けては、きっとなにも続きません。とにかくゆるっと何か楽しいこと・スキルを増やしたいわけです。これ以上専門医を増やすよりも断然よいのではと思いました。
とにかく、大切なのは続けること。僕はとっても面倒くさがり屋なので、とにかくハードルは低く、志は低く、なんなら死なない程度を目標として習い事を考えました。
以下に、おじさんが習い事を選択する自分なりのプロセスを考えましたので明記いたします。
1)自分の得になる(かもしれない)
2)始める努力は限りなく低く(初期投資は低い)
3)気合がいらない(地元の駅に乗れば乗り換えずについてしまう、なんならやらなければ家に帰れない)
4)基本は人に習う。自分で勉強するのは後から。(必要以上に時間を奪われない)
この項目を満たせる習い事は地理的な要件がかなり大きく、そうは多くありません。その中で敢えて今回選んだのが、お料理教室なのです。できるものは複数ありました。ボイトレでアニメソングを思いっきり歌って、Youtubeで歌い手デビュー(イケボ)なんて考えましたが、エアロゾル的に絶対無理なわけですよ。くそうコロナめ。そこで、まことに険しい道のりですがこちらを選びました。
いまここに伝説が始まるのです。
なぜお料理教室なのか。目的は「好感度」でした。
はたから見たらおじさんが一生懸命料理をしようとがんばってるわけですよ?なんかいいひとそうじゃないですか。好感度しかないわけじゃないですか。Facebookとかに上げたら、超いいね!(ふーん)とか、いいね!(どうでも)とか、大切だね(体を大事にしろよ)がいっぱいつくわけですよ。
そこで、「いやーぼく最近、料理教室で習い始めたはじめたんだけど、この年で料理まともにやったことなくて、なかなか難しくってさー」という場がお葬式にならない程度の自虐ネタを挟めるようになれば、「えー面白い何作ったんですか~?」とか「料理ってどんな人にも必要な技術ですよ~?」とか、会話のきっかけができるわけです。人間との会話が広がるわけじゃないですか!承認欲求満たされまくりを想定した、あざといメンズなわけですよ。そうなれば
とかおじさん構文書いても怒られな・・・いや・・・そりゃアウトか。
まあそうやって始まったんですよ。地獄の黙示録が。
完全に誤算でした。料理教室に人とのコミュニケーションがいるなんて。本当に誤算でした。
お料理入門コースを選んだわけですよ。そうしたらさ、普通ほら、僕みたいなモテようとして何かをこじらせたみたいなおじさんが複数あつまって パンツマンお料理動画(ニコニコ動画時代から見てた)よりもおしゃれなものを作ろうと奮起するものと思っていたんです。おじさんたちの友情ものですよ。
しかし、現実は違いました。
花嫁修業とかいうものかもしれませんが、若くてきれいなねーちゃんが多数なんですよ。おじさん2:若いメンズ2:ねーちゃん6みたいな割合でした。
男性専門コースは受け付けてなかったけど、世の中料理やりたい男性は多いんだろう。女性はもっと難しいコースに行くと思っていたんです。まあまさかこうなるとは思っていませんでしたね。本当に想定外でした。
料理教室はペアで行います。ところがですよ、なぜか男女1名ずつで強制的にペアになることが多いのです。
今から考えたら、チームのバランスのためであるなぁとは思うんですが・・・男だけの集団で、今から二人組になってくださーいと言われてもペアが作れない僕が、前世でどれほど悪いことをしたら男女ペアを組まされるのか。二人の共同作業で2人分つくるわけですよ。無理おぶ無理。not for me。頼む、おじさん同士で気楽にさせてくれ・・・・
というわけで 今日は マカロニグラタンと生ハムのサラダでぇす☆
今回もきれいなねーちゃんと組むことになりました。すまん、ねーちゃんほんとすまん。・・・てかよ、あんた入門する必要あるのか?玉ねぎめっちゃ薄くスライスできるやん?お前もう俺的には卒業だよ?
いや、むしろ大人の調理実習みたいなおじさんは帰ったほうがよいのではないか?そうですか、すまん。
でもよ、あんたも俺も同じJPYを払っているわけですよ。しかし、同じJPYを払った人間に、おじさんが損をさせるわけにはいかない。どうにか、どうにかしなければならない。くそう・・・・死ぬしか・・・ないのか・・・
まあ、これだけ妄想をしているけど現実は一言も言語を発していません。きっと外からみたらたいそうキモイんだろうと思う。
挨拶するにしても、これまでのように
「ブシュシュ、、ドゥゾユロシュクオナガシマシュ・・・」
ではいかないのである。ここは何とかしなければならない。そうでなければ僕はここを去らなければならない。迷惑防止条例怖い。必死で考えた。
そうだ、患者さんにご挨拶するようにすればいいんだ。俺は生まれ変わったんだ。10代20代の頃の俺とは違うんだ。
「よろしくお願いします。私は素人で殆ど経験がなく、何をしていいのかわからないことが沢山あり、そわそわしてしまいます。そのとき、挙動がたいへん不審であることが殆どです。その場合にはどうぞご指示をください。単純な作業であればおっしゃることはすぐに行います。何卒よろしくお願いします。」
吹かれた。
二人の共同作業の詳細はこうだ
俺「タイマー9分にセットします!」
「次に必要な器具はこれですね?用意しておきます」
「すみません、次私がおこなうのはどれですか(数え切れず繰り返す)」
「洗っていただいてありがとうございます、あとは拭きます!(拭いておきゃ許される)」
「ぼくがきると全然玉ねぎスライスじゃないですね、これブロックってやつですよね!」
「ふっとうしています!(見ればわかる)」
「がんばります!」
「やります!」
「これが少々という量なのですね!」
「小さじ1/2確認しました!」
「すみません、これ落としました。僕が食べます!」
僕なりに頑張りましたが、
終わった後、料理教室の先生がペアのねーちゃんに
「面白いひとでしょう。。。」とフォローを入れていました。
患者さんに対する外来での礼節を保った接遇にはならず、
ぬいぐるみをきたパフォーマーみたいになってた。
ひどく疲れた僕にマカロニグラタンはおいしかったな。
料理というものは大変に難しい。
相性のよい具材を選択するのは、起炎菌を想定し抗菌薬を投与するよりもさらに複雑な思考が必要である。最終的に宿主の嗜好という大きなパラメーターに動かされる。不確定要素だらけだ。
調味料の配合はまるで病態から集中治療の薬剤の選択を考えるよう。時間と速度はまるでγ計算をするかのよう。ラシックスの持続投与は単独ルートでなければならない。
そのような、素材についての基礎的な知識を欠かすことができない。
さらには、複雑な手技が必要である。
よって自分からしてみれば合併症や侵襲の点を除けば、
中心静脈カテーテルを入れるほうが自分にとっては容易だと思った。
こんな頭を使う難しいことがみんなできるんなら、
みんな医者になればいいと思った。
来月も行く。もう趣味じゃなくて修業じゃんこれ。
次書くことがあれば、内容についても掘り下げていきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?