関西の茶碗展2023より(御本立鶴茶碗 野村美術館)
この夏から秋にかけて関西の多くの美術館で「茶碗」にまつわる展覧会が開催されています。会期が残すところわずかとなっている展示もあり、この機会に作品を取り上げたいと思います。
2023_cha-discount.pdf (kyohaku.go.jp)
御本立鶴茶碗 李朝時代(17世紀) 野村美術館
野村美術館では、2023年秋季特別展として「茶碗 茶を飲む器の変遷と多様性」が開催されています。後期展示は10月21日(土)から12月10日(日)となっており、中でも注目作品の一つがこの茶碗です。
鶴がぴんと立っている姿から、「立鶴」と呼称されるこの茶碗ですが、お世辞にも上手いとは言いにくい愛嬌のある鶴の図柄で、一見しただけではその凄さが分かりにくい茶碗とも言えます。
この絵の作者は?
このかわいらしい鶴の絵ですが、作者は三代将軍徳川家光と伝わります。家光公の絵といえば、”へたうま”で最近人気を博したことでご存じの方も多いのではないでしょうか。例えばこちらの「兎図」。かわいすぎます。。
お次は「木兎図(ミミズク)」の絵。くりくりっとした目が印象的です。
いずれも、決して技巧に優れた作品ではありませんが、とても魅力的な絵です。これを踏まえてもう一度「立鶴茶碗」を見てみると、不思議とかわいく見えてきます。そして、この絵を図柄として茶碗をデザインし、朝鮮半島の陶工に発注したといわれるのが、小堀遠州です。
小堀遠州とは
小堀遠州(1579-1647)は大名でありながら茶人や作庭家としても優れ、素晴らしい作品が現在にも伝わります。彼の茶の湯は「きれいさび」と称される優雅さを特徴とし、遠州流として現在にも受け継がれています。
この御本立鶴茶碗、遠州が愛玩した後、江戸中期の大茶人で有名な出雲松江藩主、松平不昧(1751-1818)に渡ります。不昧公によって蒐集された茶道具を記録した松平家の「雲州蔵帳」には、「御本立鶴 伏見屋切八 金十枚 位三百両」と記録されているそうです。
徳川家光公の画と小堀遠州の造形、そして松平不昧公へと渡った特異な来歴を持つこの茶碗、ぜひ野村美術館でご覧ください。
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