PLAY NEWの体現者【FOCUS ON:広住祐也】
明治安田生命J1リーグから数えて「J8」の東京都社会人サッカーリーグ2部に所属しているTOKYO CITY F.C.。渋谷区をホームタウンに活動するクラブには、いったいどんな選手が在籍し、どんな思いを胸に秘めてプレーしているのだろうか。選手1人ひとりのパーソナリティに焦点を当てる連載企画「FOCUS ON」がスタート。第2回は今季新加入のストライカー、背番号9の広住祐也(@YuyaHirosumi)に迫る。
3年越しのCITY加入
僕とTOKYO CITY F.C.との出会いは数年前にさかのぼります。
2016年に設立されたFC.BANDELIE(現東京都社会人サッカーリーグ2部)の立ち上げメンバーの1人が立命館大学時代の先輩で、両クラブがいい関係を築いていたこともあってCITYのことを知り、当時のメンバーの何人かともつながっていました。
まだCITYが東京都リーグ3部を戦っていて、ちょうど深澤佑介監督が就任したばかりの頃に何度か練習や練習試合に参加させてもらう機会もありました。その後もずっとCITYの動向は追っていましたし、SNSなどを通じて発信しているものもずっと見ていました。
そして、昨年限りで三井住友海上サッカー部を辞めて、今年からCITYでプレーすることに決めました。出会った頃から感じていた魅力が今のCITYにも変わらずあり続けているし、自分もその中に入ったら、企業のサッカー部とは違うものが得られるのではないかという思いが強くなっていたんです。
実は昨年でサッカーそのものを辞めようかとも考えていました。でも、まだどこか諦めきれず、CITYに入ることにしました。
サッカーとともに歩んできた人生を改めて振り返ってみると、自分は運に恵まれたキャリアを送ってきたなと思います。
サンフレッチェ広島ジュニアユースからユースには昇格できませんでしたが、広島皆実高校に進んで、2年生の時に先輩たちの全国高校サッカー選手権大会優勝を間近で見ることができました。3年生の時に出場したインターハイでのプレーがきっかけで声をかけてもらえて、立命館大学に進学することもできました。
サッカーを続けてきた中で、たくさんの指導者やチームメイトと出会うこともできました。どうしたらみんなとうまくコミュニケーションが取れるだろう、どうやったらいいコンビネーションを作れるだろう、この指導者が求めるものはどうやれば表現できるだろう…といったことを常に考えていましたね。なので性格的にも自己主張するより、周りに合わせて、染まっていくタイプだと思います。
FWとしてサンフレッチェのジュニアユースに入ったのにDFをやるように言われて、高校1年生の途中で「FWに戻してほしい」と志願したんですけど、自分の意思を貫き通したのはその時くらい。それからはずっとFWとしてプレーしています。
ゴールにこだわりながら…
今年、CITYがチームとして見据えるのはもちろんリーグ優勝と東京都リーグ1部昇格になります。昨年は勝ちきれない試合が多くあったことが昇格できなかった最大の要因だと思うので、スタメンでも途中出場だったとしても、大事なところでゴールを決めて、チームを勝たせることがFWの僕に求められる役割になります。
ただ、昔ほど「自分が絶対試合に出たい」というのはなくて、あくまでチームにフィットしてどんな形でも勝利に貢献したい気持ちが強いです。ポジションが被るハマチ(#3 濱野友旗)のことも、ライバルとして意識するのではなく、一緒に出たらどうすればうまくいくか、どんな形ならお互いの特徴を活かせるかと考えながらプレーしています。
もちろん自分がスタメンで出場したら、前線からの守備でも体を張って、交代で出てくる選手にバトンをつなぐことも重要です。その逆もまた然りで、どんな形であれチームのために何ができるかを考えながらプレーすれば、いい影響をもたらせると思っています。
とはいえゴールを決めれば目に見える形でチームへの貢献を示せると思うので、そこだけはこだわってやりたいですね。自分もまだまだ成長できると思っているので、若い選手たちに負けないように頑張ります。
CITYに入ってやりたかったこと
そして僕がCITYに加入することを選んだ大きな理由でもある、ピッチ上のサッカー以外の面でも積極的に貢献していきたいと思っています。green birdさんと一緒にやっている渋谷区内の清掃活動はもちろん、パートナー企業をはじめとした応援してくださる皆さんとも交流する機会がたくさんあると思うので、楽しみにしています。
つい先日、「渋谷発おうちdeワクワクこどもの日」というオンラインイベントに参加させていただきました。サッカー以外の活動もCITYの魅力だと思っていましたし、そこで自分が加入して何かできたらと考えていた矢先だったので、「これこそがCITYに入ってやりたかったことだ」と思って、オファーを受けた時には迷うことなく「やります」と返事をしていました。
準備期間が短く探り探りな部分もありましたが、子どもたちが積極的に参加してくれて、素直にめちゃくちゃ嬉しかったです。新型コロナウィルスの影響で全国的に休校が続く中でストレスを溜めていると思いますが、僕が逆に子どもたちからパワーをもらえましたね。
子どもとふれあうのは好きなので、自分自身も楽しんでできましたし、今後もこういう活動をもっとやっていきたいと思いました。
ピッチ外での活動も含め積極的に発信していくことはクラブにも、選手個々にとってもプラスになります。そして自分の仕事にも生きてくると思います。例えば今回のオンラインイベントでは、エクササイズ中に画面を通して床にボールをつく音を気にしている親御さんの姿が見えたので、途中からボールが跳ねない内容に変更したんです。
事前にしっかりと準備をしたうえで、反応を見ながら臨機応変に対応していくようなことは、普段の仕事でやっているプレゼンの段取りとも似ています。僕の場合、保険の代理店に対して勉強会を開く際の資料の準備などで培った経験が生きました。
そういう相乗効果は他の場面でも実感します。CITYに入ってからは三井住友海上サッカー部時代とは違って平日の夜にも練習があるので、サッカーの練習に参加するためにどうスケジュールを組むか、どうすればより効率的に仕事を終わらせられるかをすごく考えるようになりました。
仕事とサッカーから生まれる相乗効果
サッカーの面でも、社会人になってこんなにアドバイスをもらえる環境は今までありませんでした。立命館大学も選手主体のチームだったので、6、7年ぶりに人から自分のプレーに対して指摘を受けて、いろいろなことを教えてもらいながら、自分のプレーを見直すことができています。
阿部さん(#21 阿部翔平)や柴村さん(#24 柴村直弥)から受けるアドバイスはどれも的確で、まだ加入してから日は浅いですが、CITYならもっとレベルアップしていけるという感覚をつかめてきています。
ただ、やはり僕たちはサッカーだけやっているわけではなく、仕事をしたうえでサッカーもやっています。こうやってサッカーと仕事を両立させながら、両方とも、さらには人間的な価値も高めていけることこそが社会人サッカーの魅力だと思うんです。
だからこそ、CITYに入ったからにはピッチの中だけでなく、ピッチの外でも自分が持っているものをどんどん還元していきたいと思います。
仕事で渋谷区のベンチャー企業とやり取りすることも多いので、その中で企業同士がつながったり、CITYをより大きくしていくためにいろいろな企業を紹介できたりしたら面白いと考えているんです。
そしてCITYには元Jリーガーから、大学サッカーを経験した社会人、学生など様々なバックグラウンドを持つ選手がいるので、彼らから話を聞いているだけでも、自分の社会人としての幅が広がります。
僕自身も自分が経験してきたことを、より若い選手たちに伝えていきたいですし、ピッチの中でも外でも積極的に物事に取り組んで、CITYのために全身全霊で尽くしていきたいと思っています。