腕章を巻く者の責任【FOCUS ON:新潟谷勇人】
明治安田生命J1リーグから数えて「J8」の東京都社会人サッカーリーグ2部に所属しているTOKYO CITY F.C.。渋谷区をホームタウンに活動するクラブには、いったいどんな選手が在籍し、どんな思いを胸に秘めてプレーしているのだろうか。選手1人ひとりのパーソナリティに焦点を当てる連載企画「FOCUS ON」がスタート。第15回は今シーズンからキャプテンを務める加入3年目のDF、背番号6の新潟谷勇人に迫る。
学生時代に受けた数々の衝撃
僕の座右の銘は「最後まで諦めない」です。
誰よりも頑張なければと思うようになったのは、山梨学院大学附属高校(現山梨学院高校)に進学してからだったと思います。本当に大きく変わりました。
当時、サッカー部の同期入学だった30人のうち山梨県内出身は5人くらいしかいませんでした。自分も含めてみんなスポーツ推薦で、東京や名古屋、大阪などから越境入学してきていたんです。
名古屋グランパスや東京ヴェルディ、FC東京などJリーグクラブの育成組織出身で、自分よりも明らかに格上の選手たちが親元を離れてサッカーをしにきている環境でした。例えば、今は鹿島アントラーズでプレーしている白崎凌兵が同期でしたが、一緒にやっているうちに気づいたらレベルの違う選手になっていて衝撃を受けました。
そういう選手たちばかりの環境で自分が一番下だとわかっていたからこそ、誰よりも頑張らないと思って必死でした。
高校卒業後は駒澤大学に進み、プロになることを目指してプレーしていました。でも、大学3年生のとき、仲川輝人(現横浜F・マリノス)がいた専修大学と対戦して、またレベルの違いを思い知らされました。自分がJ1やJ2のクラブに入るのは無理だと悟りましたね。
それでも卒業後もサッカーを続けたい、JFLでも可能性があれば…と思って、大学4年生の12月頃まで一般企業への就職活動はしていませんでした。そうしていると、たまたま早稲田ユナイテッド(当時関東サッカーリーグ2部)の練習に参加させていただける機会があり、今矢監督(今矢直城=現清水エスパルスコーチ)のサッカーもすごく面白かったので加入を決めました。
高校時代の先輩に誘われて
TOKYO CITY F.C.との出会いは、大学を卒業して2年目のシーズンが終わった頃でした。2017年10月末に関東サッカーリーグの市原カップというカップ戦があったのですが、僕はそこで肘を骨折してしまっていて、サッカーを続けられるようなメンタルではありませんでした。
そんな時、山梨学院時代の先輩だった峻太くん(鈴木峻太=2017年~2019年在籍)から連絡が来て、CITYの練習に誘われたんです。最初は本当にCITYに入ることは考えていなくて、練習に5、6回参加したのもリハビリくらいの気持ちでした。
一方、早稲田ユナイテッドでは、横浜F・マリノスの通訳になるため今矢さんがクラブを離れることになり、僕自身も退団を決めました。ちょうどそのタイミングで峻太くんや深さん(深澤佑介GM兼監督)からも頻繁に連絡をもらって、熱心な誘いを受けていました。
やっぱり自分自身、関東2部から東京都社会人サッカーリーグ3部にカテゴリを落とすことに抵抗があって、プライドが許さない部分もありました。でも、いろいろ考えた末に自分を必要としてくれるクラブでやりたいと思い、CITYへの移籍を決めました。
徐々に現れた意識の変化
入ったばかりのCITYは「ヤバいな」と思いましたよ。当時は東京都3部でしたし、選手たちのレベルや意識が低かった。それでも僕だけでなく、大地くん(前田大地=2018年~2019年在籍)や峯くん(#20 峯達也)が同じタイミングで入ってきて、バチバチやりながら練習の雰囲気を徐々に変わっていったと思いますし、チームとしての成長も感じました。
今と比べれば上手い選手が多かったわけではないですが、泥臭さや勝ち癖もついていって、いい1年だったと思います。
2年目だった昨シーズンは、1年目以上に結果にこだわっていました。副キャプテンを任せてもらい、峻太くんが怪我で長期間離脱していたこともあって、ゲームキャプテンを務めることも多くなったのも理由の1つです。
そういう責任ある立場を任せてもらったことによって、CITYのクラブ全体に対する見方も変わってきました。運営サイドの頑張りも見えてきて、サッカーはピッチの中でやっているわけではないということを強く感じるようになりました。
だからこそ、ピッチ外の活動にも積極的に協力していきたいと思うようになりました。これは昨年、自分が大きく変わった部分だと思います。
そして3年目の今年はチームキャプテンになりました。僕自身、「キャプテンをやりたい」とずっと思っていたので、いざキャプテンになって何か特別に変わることはないですが、今まで以上に責任を感じています。
キャプテンとして見せる背中
今年は柴さん(#24 柴村直弥)や泰右さん(#25 宮崎泰右)といったJリーグでプレーした経験のある選手が増えて注目度も上がり、ピッチの中か外かにかかわらず、周りからの見られ方が変わってくるはずです。
それによってプレッシャーを感じることはないですが、自分よりも実績の豊富な選手が多くいるチームのキャプテンを務めて、さらに結果を出さなければならないという重い責任を背負うことになります。
CITYの選手たちは大半が仕事中心の中でサッカーの時間も作っていく生活を送っています。サッカーが中心のプロ選手とは違うけれども、仕事もサッカーも全力で手を抜かずにやることに意味があると思っています。
仕事でどんなに疲れていようが、ピッチに立つ時間は1秒も無駄にしたくない。スケジュールの都合でどうしても練習に参加できないことがあるかもしれないですが、それでも常に全力で仕事とサッカーの両方に打ち込みたいですし、その姿勢をキャプテンとしてまずは自分から示していきたいと思っています。
昨年、僕たちは得失点差で東京都社会人サッカーリーグ1部昇格を逃しました。その悔しさを晴らすためにも、今年は絶対に昇格します。それは最低限の目標ですし、新型コロナウイルスの影響があったからダメだったと言い訳もしたくありません。
個人としても全試合に出場するという目標がありますし、昨年以上にピッチ外のイベントやクラブの活動にも積極的に参加していきたいと思っています。
今年で27歳になりますが、いつ現役選手としてプレーできなくなるかわからないですし、本当に毎年が勝負です。なので1年間を終えた時に「やりきった」と後悔のないシーズンにしたいと思います。どんなことがあっても目標を達成することを最後まで絶対に諦めず、挑戦し続けます。