妻を助手席に乗せた車を、繰り返し衝突させた夫
わたしたちの夫婦関係は、20年以上かけて、どんどんこじれていった。
その間、何度も話し合って、やり直そうとした。
正確に言うと、わたしが「もう無理」というたびに、夫が「諦めるのは早い。もう一度やってみよう」というから、そうしてきた。
ところが、夫は、関係修復に向けて努力すると言いながら、相反する行動をやめない。ひどい時には、「今度こそ、2人で再出発しよう」と誓った数日後に、見事にわたしを裏切る。
これを何度も繰り返すうちに、わたしの精神はすり切れ、ボロボロになった。
性格もすっかり変わった。
何年も苦しくて、辛い状況から抜け出せない自分が嫌になり、死のうと思った。
最後のチャンス
死ぬ前に、もう一度だけ、夫婦としてやり直せないか、やってみようと思った。最後のチャンス、これでダメなら仕方ない。
2人の間では、何年にもわたり、いやというほど話し合いを持った。何が問題か、率直に話し合って、改善を試みてきた。でも、うまくいかなかった。
ただ、2人で一緒にマリッジカウンセリングを受けたことはなかった。
これをやってみて、ダメなら諦めよう、そう夫と話した。
2時間14万円のカウンセリング
最初に話をしたカウンセラーは、「どうやっても救いようがないほど壊れ切った夫婦」と思ったのだろう、無料面談の後、一切連絡が来なくなった。
次のカウンセラー、ピーターは、わたしには、とてもよかった。
最初のセッションは、夫とわたし、個別に話をした。
ピーターは、洞察力に優れた人で、わたしが長年意識下に沈めていた不満と、心の底から求めているものをわずか60分で、非常に明確に示してくれた。
一方、夫は特によいと思うことはなかったらしい。それでも、次のセッションを一緒に受けることに同意してくれた。
2時間で約14万円。
人生を左右する決断について、トップクラスのプロからアドバイスを得るには、相応の費用がかかるのだ。
それでも、わたしはピーターのカウンセリングを受けられてよかったと思う。
許す必要はない
過去を忘れられない、裏切りと嘘を繰り返した夫を許せない自分に嫌悪感を感じるというわたしに対して、ピーターは「許す必要は無い」と断言した。
一方、夫に対しては「あなたは助手席に妻を乗せた車を運転中に、衝突事故を起こしたようなものだ。彼女は怪我をした、苦しんだ、でも車から降りなかった。あなたは、再び事故を起こした。彼女はそれでも、もう、あなたが事故を起こさないだろうと信じて、まだ助手席に座っている。その状況を分かっているのか?」と厳しい口調で言った。
当然のことながら、夫は面白くなかったらしい。
「君のことばかり持ち上げるセラピストには、もう会う必要ない」と言い、マリッジカウンセリングは、終わりになった。
「持ち上げる」……。
夫は「俺は悪くないのに非難され、妻はまるで被害者のように大切に扱われるのは不公平だ」と言いたかったのだろう。
プロの客観的な見解さえ受け入れないのであれば、関係修復など、到底無理だ。
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