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セクション33A2D17


二万年後の銀河 シリーズ
第二弾
ミーターの大冒険

第三部 コンポレロンへ

第6話 セクション33A2D17
エピソード 106

ミーターの体は4年間かけて完全に復旧し、修理されたファー・スター2世号に戻された。イルミナも当然無事だった。彼女の本体はターミナスの帝国辞書編纂図書館の地下にあり、遠隔でどこへでも移動できるのだ。いわゆる共時偏在の存在である。ミーターはそのおかげで、ファー・スター2世号に彼女を乗せたまま銀河横断の旅を続けていた。

ファー・スター2世号は惑星シンナの軌道上にいた。時折、ミーターは地表の探索を重ね、再び銀河を横断するための決意を新たにしていた。彼は惑星シンナから見上げる極光に、何かしらの兆しを感じていた。ただ、イルミナのちょっかいが耳障りなこともあったが、それでも彼女とのやり取りを面白いと感じる瞬間もあった。

やがて、ファー・スター2世号はシンナの軌道から発進し、宇宙潮流に沿って光速近くに達し、ジャンプを繰り返した。目的地はコンポレロン。しかし、その先にある最終目的地アタカナへたどり着くには、「反ミュール」や「不死の従僕」と接触しなければならないようだった。

ファー・スター2世号の操縦席で、ミーターはイルミナに語りかけた。

「我らの使命とは何か、わかるか?」ミーターはイルミナを見つめながら、静かに問いかけた。「ガールが構想した『歴史消滅からの転換点』が、いよいよ迫っているんだ。しかし、座して待つわけにはいかない。それが我々の使命だ。」

ミーターはさらに、イルミナ自身の存在について説明を始めた。「お前の存在は『極素輻射体』の秘密に深く関わっている。そして、アルーリンのことだが、これはハリ・セルダンの時代にまで遡るんだ。」

ミーターは500年前の話を続けた。

「ウォンダが18歳の時、彼女の両親と妹、そしてベリスがサンタンニ星に旅立った。ウォンダはトランターに残り、おじいちゃんのハリ・セルダンの世話をしながら、アマリルの肩代わりとして心理歴史学の研究に没頭したんだ。もっとも、彼女の多くの日課は極素輻射体を自由に操ることだったがな。」

ミーターは話を続けた。「極素輻射体は、それを操る人間の感応力に同調する特性を持っている。そして、ウォンダ自身もその影響で感応力が強化されていった。ある日、彼女はある方程式の暗号が感性にピタリと符号するのを感じたんだ。その時、ハリ・セルダンが彼女の研究室を訪れ、こう唸ったんだ。『なんとこの暗号はターミナス方程式!!』」

ミーターの目が輝いた。「二人はホノグラフに映し出された紫の球体に近づいた。すると、反対側に赤い斑点が投射された。セルダンは叫んだ。『こっちはターミナス方程式の逆関数だ!完全に呼応している!』ウォンダもそうだと言った。『おじいちゃん、そうなのよ。私にはこの二つが完全に調和しているとしか思えないわ!』」

ミーターはイルミナを見つめ、問いかけた。「イルミナ、この記録が何を意味するのか、アルカディアがどれだけ苦心して説こうとしたか、わかるか?」

イルミナは感嘆の声を漏らした。「凄いわ、ミーターさん。なんとなく、わかる気がするわ。」

ミーターは頷き、さらに続けた。「アルカディアは言ったんだ。『その時、ハリはウォンダとともに、本来行くべきターミナスへ旅立った気分を共有したんだ』と。そして、赤い反射球が銀河の反対側にあるアタカナ――人類の故郷の星だ。しかし、その星は今、緑や青に輝いていない。病んでいる、とも言ったんだ。」

ミーターは決意を込めた声で言った。「これからお前と共にその真相を究明しなくてはならない。」

イルミナは興奮した声で問い返した。「でも、教えて、その暗号って?」

「セクション33A2D17だ!」ミーターは短く答えた。

イルミナはさらに疑問を投げかけた。「ミーターさん、この方程式ってどういう暗号なの?」

ミーターは自信に満ちた表情で答えた。「イルミナ、心配するな。もう解けている。だから俺たちは今、銀河をファー・スター2世号で航行しているんだ。そして、お前がここにいる理由もそれなんだ。」

彼はハニスがトランターで入手した「クリプト・リーダー」を使い、ファー・スター2世号と帝国辞書編纂図書館の記憶装置に暗算連結したことを思い返しながら言った。

イルミナは笑みを浮かべた。「ミーターさん、帝国辞書編纂図書館って、わたしのことじゃないの?」

ミーターは黙って微笑み返した。

次話へつづく...

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