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夢への訪問者

第71話夢への訪問者

第71話 夢への訪問者
SF小説 ボー・アルーリン

Place:惑星サリプ
Date:銀河暦12,063年

夢への訪問者

静かな夜、ベリスは惑星サリプの自室で夢の中を彷徨っていた。柔らかな光の中、彼女の前に現れたのは、かつて母マネルラが語っていた祖母ドースの姿だった。

「ベリス、あなたが探している答えを持ってきたわ。」
ドースは優しい声でそう告げると、微笑みながら話を続けた。
「ボー、ホルク、そしてあなた自身の願いを聞き入れるわ。ハリに第2の基盤の可能性を示唆し、彼を導く手助けをしましょう。」

「第2の基盤?」
ベリスはその言葉にハッとする。

「ハリには、第1の基盤の限界を補完する新しい集団の設立を提案させます。それには、ウォンダやウォンダの恋人、ステッティン・パルヴァーのような精神感応能力を持つ者たちの力が必要になるでしょう。彼らが果たすべき役割を、ハリに気付かせます。」

ベリスはその言葉の重さを噛み締めながら問いかけた。
「でも、どうやって彼にそれを伝えるのですか?彼の心に、私たちの願いをどう届けるの?」

ドースは微笑みを崩さず答えた。
「それは私の役目よ。ただ、あなたには別の使命がある。惑星ターミナスに向かう道で、あなたが担うべき役割を果たしなさい。」

その夢が覚めたとき、ベリスは深い確信を胸に抱いていた。それは、彼女がこれまで感じたことのない決意だった。

翌朝、ベリスは母マネルラと向き合って話を切り出した。

「母さん、私たちが惑星トランターに戻らない理由がわかった気がする。」
マネルラは少し驚いた顔を見せたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「それを聞かせてくれる?」

「夢のお告げよ。お祖母様の言いつけよ。惑星ターミナスの役目は銀河辞書編纂図書館なんですって。私たちのお仕事って、そこの科学者たちの社会基盤を支えるためなんです。よく私が読んでいる本に出てくる話しに「背水の陣」という考えあるのよ。私は「背水の陣」を築く覚悟を決めたわ。」

「背水の陣?」
母が問い返すと、ベリスはまっすぐに母を見つめた。
「どんな困難があっても後戻りしない覚悟。ターミナスで、新しい未来を築くための礎となるの。」

「でも、あなたの心の中には、まだ会いたい人がいるんじゃない?」
マネルラは娘の心の奥を見透かすように微笑んだ。

「姉さんに会いたい。本当はそれが私の本音よ。」
ベリスは俯きながらそう打ち明けた。

マネルラもそうだった。しかし、ベリスのその健気さにこころ打たれて、彼女は、「まあ!」と言っただけであったが、ベリスの言葉はマネルラ自身の任務とは、とも考え始めるきっかけを与えた。亡き夫の遺志を継ぐものとして。

次話につづく . . .

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