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来たかった、来たくはなかった

来たかった、来たくはなかった

二万年後の銀河シリーズ
第一弾 「ファウンデーションの夢」

第二部 『ガイア』

第1話 来たかった、来たくはなかった
Episode 6

銀河暦12066年、セルダンの裁判が始まる前年。ロボット、ダニール・オリヴォーは人類の故郷とされる「地球」への探索の旅に出発した。これは、シンナックスからガール・ドーニックを招き寄せ、セルダンの「心理歴史学」と二つのファウンデーションを補強するためであった。

ダニールは天の川銀河の半球を超え、ついにそれらしき海洋惑星を見つけた。彼は以前と同様、名前を「ヒューミン」に変えてシンナックス大学に潜り込み、ガール・ドーニックを待ち構えていた。ガールは、彼が発見したことを止めどもなくヒューミンに語り続け、その非凡な閃きにダニールは驚愕した。ロボットでありながら、彼の内部に深い衝撃が走ったのだった。

この探索から、ファウンデーションの新たな叙事詩が始まろうとしていた。ダニールがセルダンの故郷を目指した理由は、ロボットである自分にはない人間の潜在能力に第零法則を挑戦させるためだった。そこから何かが生まれそうな予感を抱いて。

地平線が光っていた。上空では、放射能による発光現象が無数に繰り返され、夜空の星々を圧倒していた。地表付近では、高い放射能が漂い、空気がはじけそうな気配すら感じられる。恐ろしいほどの高濃度の放射能が集まる場所もあった。

ダニールは、ついに探索の終点となる星に到着した。この星に来たかった、だが来たくはなかった。それは「地球」、人類の最古の故郷だった。

彼は苦渋の表情を浮かべながら、独り言をつぶやいた。

「ニフの星も、ヘリコンも似ているが、問題がある。二万数年前、アマディロとマンダムスが仕掛けたことが、ジスカルドと私の判断を正当化するのだろうか?この荒廃した風景こそが、その結果なのか!」

ダニールの思考は過去に向けられた。ニフは一度、津波で原子力施設が崩壊し、放射能が広がった。政府も政治家も責任を取ることはなく、オメガ教団による無差別殺戮が起きた際も同様だった。ヘリコンの歴史はさらに残虐で、隣国に対する容赦ない殺戮が行われた。

「ガイアの星は理想を実現できる可能性を秘めている。しかし、鍵は倫理性だ!」

ダニールはしばし黙り、遠い記憶に思いを馳せた。そして、心の中で呼びかけた。

「イライジャ!私は帰ってきたぞ!心の友よ!」

彼の言葉は、荒廃した大地に消えていったが、その声は心の奥深くに残ったままだった。

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