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なんというと逸材だ!
なんという逸材だ!
ファウンデーションの夢
第一部
ダニールの地球探索
第4話 なんという逸材だ!
「努力を惜しまないことだ。天才は“成すべきこと”を為し、秀才は“為しうること”を為す。しかし、ハリは自分を秀才にすぎないと言い切るんだ。」
彼は目の前で盛んに喋る若き学者、ガール・ドーニックの言葉を聞きながら、遠い記憶を呼び覚ましていた。その記憶には、一万三千二百年前――歴史消失の危機を迎える前の銀河が広がっている。
驚くべきことに、ガールにはその時代の知識や記録に触れる“感応力”があったのだ。ガールはハリに匹敵する逸材だ!彼の能力は天性のものだが、いまだ発展途上であり、危険なほど未熟だ。
「まだ時期尚早だ」と、ロボットであり、彼の未来を監視するR・ダニール・オリヴォーは内心でつぶやいた。ガールの才能と知識を無駄にするつもりはない。しかし、今の段階でそれを自由に使わせるわけにはいかない。彼の力が、ニフ人たちが築いた成果を脅かす可能性すらあるのだ。
彼、ガール・ドーニックの能力は、惑星ターミナス建設に使わせて貰う。いや正式には第1ファウンデーション設置に。すでにガールを補佐する連中は決まっている。私をこの星までプッシュし、フォローしている憎らしいほどユーモアに溢れたやつらだ。
しかしニフ人。――地球からの記録を継承し、その自然を完璧に移植した集団。彼らはまず、大学の図書館にこもって地球時代の全知識を百科事典として編纂した。次に、彼らは独自の宗教を考案し、精神的な影響力を周囲の星々に広げていった。その後、貿易で経済的な支配力を確立し、科学技術でさらなる覇権を握った。そしてついに、軍事力すらも行使し始めたのだ。
「ここまでだ。この段階はいかん。」
ダニールは、彼らの行く末がもたらす銀河規模の影響を案じていた。若きガールをこれ以上彼らに関与させるわけにはいかない。
ダニールは思案を重ねた末、ガールをこのまま学会に送り出すことを断念した。彼の数学の才能と微弱な感応力は、十分に貴重な資質だ。しかし、それ以上の知識や力を彼に与えることは、歴史の均衡を崩す危険性を秘めていた。
「申し訳ないが、記憶の一部を消去させてもらおう。」
ダニールは静かにそう決断した。
この決断から約500年後――。
若きガール・ドーニックの隠された才能は、彼と共に活躍する翻訳・通訳ロボットと盟友となる女性の手によって、再び銀河の舞台に現れることになる。彼の中に眠る知識は、銀河の全歴史を復活させる鍵となるだろう。
だが、この時点ではまだ、R・ダニール・オリヴォーでさえ、その未来を知る由もなかった。
次話につづく . . .
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