
禁帯出の事実
第89話 禁帯出の事実
SF小説 ボー・アルーリン
銀河暦12066年 第7アルカディア号船内
第7アルカディア号は、銀河外縁部の彼方へと進んでいた。ボー・アルーリンとイリーナを乗せたこの船は、惑星コンポレロンを離れ、ダール人たちを指導する盟友カーリス・ネヴロスの待つ惑星サリプへ向かっていた。
サリプ——銀河の果てに近いこの星は、伝承と謎に包まれた場所だった。ボーは窓越しに宇宙の漆黒を見つめながら、ふとレイチ・セルダンの言葉を思い出した。
かつて、レイチは父ハリ・セルダンについて語ったことがある。それはまるで、遺言を信頼できる相手に託すような口調だった。ハリが70歳を過ぎた頃、かつての友人であり、当時の銀河図書館館長だったラス・ゼノウが、ある報告を携えてきた。
——「理想的な世界が見つかった」
ラスはそう言い、銀河図書館の膨大な記録の中から、ハリの理論に適した惑星を発見したのだった。そこは未開の星だったが、大気は人間に適し、水も豊富で、環境の改善を必要としない。古い記録には、その星の名が記されていた。
——ターミナス。
その名を聞いた瞬間、イリーナが驚きの声を上げた。
「それって、惑星サリプの古代の言い伝えに出てくる星よ、ボー!間違いないわ!」
ボーは目を丸くした。「どうしてそんなことを?」
「サリプの伝統では、大切なことは文字に残さないの。言い伝えで子孫に継承するのよ。」
「文字を使わない . . . ?」ボーは考え込んだ。「そんな文化が実際にあるなんて、神話のようだ。でも、すごく興味深い。もっと詳しく聞かせてくれないか?」
イリーナは微笑み、語り始めた。
「昔、彷徨えるシンナックス人という一団がいた。彼らの何人かは約500年前、惑星ダリバウ、惑星サリプ、惑星ヴォレグに定住したの。そして彼らの航宙船の一部は最終的に惑星ターミナスに到達し、そこから外宇宙へと旅立っていったのよ。」
「でも、言い伝えなのに、そんな詳細がどうして分かる?」
「それはね、彼らの目的と計画が、残った者たちにも共有されていたからよ。そして時が経つにつれ、サリプの人々も外部との交流を始めたの。特に惑星サンタンニとの関係を深めることで、銀河世界の一部としての認識が強まったのよ。」
「なるほど . . . ごめん、疑ってしまって。」
ボーは感嘆しながら言った。「でも、文字を使わずに情報を伝承するなんて、サリプの文化は本当にすごいな!」
イリーナはうなずきながら、もう少し正確な説明を加えた。
「正確に言うなら、文字を知っていても、最重要なことは文書に残さないの。図書館で言うところの . . . そう、『禁帯出』の扱いね。」
「つまり、もともとそういう文化や知恵は、惑星シンナックスから来たものだということか?」
「ええ、もっと正確に言うならシンナックス人の祖先、ニフ人の知恵よ。」
一方、地球——
銀河の遥か遠く、地球に降り立ったR・ダニール・オリヴォーとレオナルド・エンノビエッラは、ある目的地へ向かっていた。
彼らの乗るシンパシック・ハーヴェイ号は、ゆっくりと降下し、目の前に広がる青い海へと近づいていく。そこは、かつてシンナックス人の故郷とされた伝説の地——ニフ列島だった。
過去と未来が交差する時、禁帯出の真実が明かされる。
(次話へ続く . . .)
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