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星界の涯

星界の涯

galaxy20,000yearslaterseries
第1弾
ファウンデーションの夢

第六部 ベイタ・ダレル

第20話 星界の涯
エピソード 46

夜が更けたリー・センターの家の外、中天にかかった淡い青色の銀河の流れを仰ぎ、側に佇む娘、ウォンダに声をかけた。

「やれやれ、これでいい。我ながら完璧だ。」リーが呟いた。

「ドースさんの申し出は心が痛かったが、望んでいた結末だったんだ。最初、ミュールが他人の感情を操作できる変異体だとは思いもしなかったからな。あれは驚いたが . . . 」

ウォンダが少し不満げな表情を浮かべ、横で口を挟んだ。「お父さん、それは自画自賛が過ぎるんじゃない?結局、何もしてなかったんじゃない!」

リーは微笑みながら、娘に目を向けた。「ウォンダ、それは親の心、子知らずだ。何年も前から準備をしてきたんだ。私が筋書きを書いたんだから。」

ウォンダは眉をひそめ、少し不満げに言った。「そんな、今回の大役を果たしたんだから、そのご褒美に教えてくれてもいいじゃない。」

リーは少しの間、考え込むように黙り込んだ後、ふと微笑みを浮かべた。「どうせ教えたところで、また私を嫌悪するだけに決まっているが、まあいいだろう。人類の故郷の星の古い諺にこういう言葉がある。“蛇のように狡猾で、鳩のように素直であれ”と。さらに、ファウンデーションのサルヴァー・ハーディンも言っているだろう。“いいことをするのにちゃちな道徳心に振り回されるな”と。それこそが第零の法則なのだ。ハリ・セルダンはデマーゼル、いや、ダニール・オリヴォーからここでその教えを得たのだよ。」

ウォンダは戸惑いながらも興味を引かれ、「どういうことなの、お父さん?具体的には?」と食い下がった。

リーは娘の探求心に満足しながらも、少し謎を残すように答えた。「あとは自分で考えなさい。ドースさんの体は、もうデマーゼル、もしくはダニールさんか、レオナルドさんが引き取りに来ているはずだ。そしてベイタさんは私の恋敵、ランデュのヘイブンにたどり着いている頃だろう。」

リーは書斎の端に置かれたホログラムに視線を移し、静かに頷いた。「ほんの数秒の差で、全てがうまくいった。ミスさんには気の毒なことをしたが、死ぬ直前にここが第二ファウンデーションだとわかってくれただけでも、本望だったに違いない。」

「第二ファウンデーションの人間は、感応力だけでは足りないんだ。演劇の才能も必要なのさ。」

ウォンダは驚きで目を見開いた。「じゃあ . . . “星界の涯”ってここ、第二ファウンデーションのことなの?」

リーは満足げに微笑んだ。「そうだ。銀河は星々の渦が空間を歪ませている。そのことは天体物理学を学べば理解できるはずだ。そして、ここでの始まりは終わりでもあるんだよ、ウォンダ。私の教えを生かして、銀河の未来を見据えなさい。」

ウォンダは父の言葉を心に留め、やがて深い決意を抱いた表情に変わっていった。

次話につづく . . .

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