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ホルク1人の教室

第67話ホルク1人の教室

第67話 ホルク1人の教室
SF小説 ボー・アルーリン

惑星サリプの穏やかな夕暮れが訪れる中、ホルク・ミューラーは師であるボー・アルーリンの書斎にいた。窓の外ではサリプ独特の青紫の夕焼けが広がり、心地よい静けさが部屋を包んでいた。

「ホルク、キミの数学の才能は本当に素晴らしい。」ボーは穏やかな声で切り出した。「ゲーム理論や記号論理学の分野では、私を超える可能性があると思う。」

ホルクは照れくさそうに笑った。「いえ、そんなことありません。先生の知識には到底及びませんよ。」

ボーは微笑みつつ、窓の外を眺めた。「私が学んだ惑星コンポレロンはここからあまりにも遠い。それに、惑星サンタンニやトランターの大学も、今ではかつての栄光を失ってしまった。キミをどこかの大学に送るべきだとは思うが . . . 」

ホルクは驚いた顔で言い返した。「僕を大学に送るつもりなんですか?嫌ですよ!先生と一緒にいる方が、いつでも難問を質問できるじゃないですか!」

ボーは笑いを堪えながら頷いた。「それも一理あるな。ここサリプでの生活も重要だ。キミは父レイチの代わりとして家族を支え、地域社会と関わりを持つべきだ。それが未来のキミの役に立つだろう。」

「それなら、記号論理学の一対一の学習会をお願いできますか?」ホルクの目が輝いた。

「もちろんだ。では、話を進めよう。今、ダール人を指導しているリーダーは誰だ?」

「カーリス・ネヴロスですね。彼の人望と熱意は素晴らしいです。」ホルクは即答した。

ボーは満足そうに頷いた。「その通りだ。ダール人たちは彼のおかげでこの惑星の人々と調和し、共に助け合っている。そのカーリスのようなダール人がいた。ハリ・セルダンはかつて一人のダール人を見出した。」

「ユーゴ・アマリルですね。」ホルクは得意げに答えた。「セルダンはユーゴをダール地区から引き抜き、心理歴史学の理論を大成させました。」

「そうだとも。」ボーは声に力を込めた。「ユーゴの数理的直感は『極素輻射体』という画期的な装置の発見に繋がった。彼がいなければセルダンの計画は成功しなかったかもしれない。そして、この理論を支えたのが『人類の集合的振る舞い』という基本概念だ。」

ホルクは深く頷きながら言った。「偶然にも、ユーゴ・アマリルの名前はダール語で『統一、復活、再生』を意味するんですよね。」

ボーは満足そうに微笑んだ。「その通り。さて、ここまでの話は理解できたかな?」

「はい、完璧です。」ホルクは自信に満ちた笑顔を浮かべた。

次話につづく . . .

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