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不死の従僕の居場所

不死の従僕の居場所

ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系
第1話
エピソード 163

不死の従僕の居場所

あらすじ

ファウンデーション暦492年、ミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星を出発し、人類の故郷・地球を目指して太陽系に入る。
かつてカビレ星系、地球はアタカナと呼ばれた。アルカディアの志を胸に、ミーターは地球の放射能汚染を浄化するという課題に挑む。

メルポメニアで発見した古文書『スペーサーとアルファ』には、地球とアルファの住民の起源であるニフと核戦争の記録が記されていた。ニフ人は一部が宇宙へ移動しシンナックス人となり、残る者たちは地球の環境浄化に尽力した末にアルファへ移住した。

また、イルミナは、ケルドン・アマディロ博士が「核反応増強装置」を用いて地球を放射能で汚染しようとした復讐計画を語る。

ついに太陽系に到着したミーターは、防備を整えてアルファへ降り立ち、謎の少女と出会う。彼女の語る星の名称が古文書の記録と食い違うことにミーターは驚くが、アルファ人の特異性に迫るべくさらなる探求を進める。

本文

イルミナはミーターを迎え入れると、ホログラム越しに厳しい視線を向けた。

「ミーターさん、ご無事でご帰艦は結構ですが、わたしについて、あのアルファ人のツムギさんに何か失礼なことを言いませんでしたか?『女というか、人間じゃない』とか。」

ミーターは一瞬動きを止め、肩をすくめた。「聴こえていたのか。」

「ええ、それにしても、鼻の下を伸ばして。わたしに対する言葉とはまるで違うじゃないですか。丁寧語なんか使って。」イルミナの声は冷たかった。

「礼儀ってもんだよ。」ミーターは溜め息をついた。「銀河の反対側に来て、不躾な態度を取るわけにはいかない。それに、まだ古代銀河聖語をお前みたいには話せないからな。」

イルミナは冷笑を浮かべた。「まあ、お言葉ですこと。あんなにどぎまぎして女性と話すミーターさんだとは知らなかったわ。そんなにツムギさんって美人だったんですね。」

ミーターは顔を赤らめた。「確かに可愛かったのは否定しないが、彼女は上半身に何もつけていなかったんだ。」

「まあ!」イルミナの驚きの声が船内に響いた。

ミーターは話題を変えようと、真剣な表情を作った。「イルミナ、こんなことで言い合っている場合じゃない。アルファの神秘がだいぶ解明された。」

「どういうことがわかったんですか?」イルミナの興味が引き出された。

「まず、カビレの意味だ。俺たちは太陽系の太陽をカビレと呼んでいたが、なぜそう呼ばれたのかがわかった。そして、地球がなぜアタカナと呼ばれてきたのか、地球が太陽系内でどの位置を回っているのかなどもだ。」

イルミナの視線がミーターが抱える奇妙な物体に移った。「それから、その荷物は何ですか?おみやげですか?地上で何人と会ったんですか?」

「二人だけだ。」ミーターは説明を始めた。「ツムギさんがあとで年配のモノリー先生を連れてきた。そのモノリー先生からこれをもらった。きっと役に立つと言われたよ。」

「それって何ですか?」

「アルファ人が『繭ベッド』と呼んでいるものだ。」ミーターは慎重に答えた。「モノリー先生は『直感で役に立つと思った』と言っていた。」

「ところで、他にわかったことは?」イルミナの声には期待が込められていた。

「数え切れないほどある。」ミーターの声には自信がにじんでいた。

「たとえば?」

「放射能除染の方法ですか?銀河復興の手がかりですか?歴史消滅の逆転換?」イルミナは問い詰めた。

「正直言って、まだ半分不確かだが、大まかなことは見えてきた。」

「どういう意味ですか?」

「モノリー先生がそれとなく教えてくれたんだ。曖昧で回りくどい言い方だったが、俺の直感が騒いだ。」

「教えてください、そのことを、ボス。」

ミーターは深呼吸し、語り始めた。「ジョン・ナックの教えの真髄だ。モノリー先生はこう言った。ジョン・ナックが地球にいた頃、アルファ人に語ったとされる言葉がある。『ヒトとは、森羅万象と交信できるのは当然であるなら、もっと確かなこととは、ちょっとした差異のあるヒトに対してはより深く融け合うことができるはず』とね。」

イルミナは考え込んだ。「それがどういう意味なんですか?」

「自然との交流、そして兄弟同士の分離という二つの課題を指している。」ミーターは慎重に説明した。「ホモ・サピエンスの弱点は、この分離から始まる。」

「つまり、ジョン・ナックはアルファ人とシンナックス人が、分離してはいても決して仲たがいしないように戒めたんですね。」イルミナは感心したように言った。

「その通りだ。」ミーターは頷いた。「彼ら二つの星は別の展開に進むが、それぞれ意味のある形態として存在する。」

「例えば?」

「アルファは原初的なニフ人の形態を残し、科学技術を文字記録に頼らず、発声言語の口伝で伝える文化を保つ。一方、シンナックス人は機械技術を駆使し、銀河を飛び出して他の銀河に到達する。」

イルミナは静かに頷いた。「第1ファウンデーションと第2ファウンデーションの確執も、その最たる例ですね。」

「そうだ。」ミーターの目が遠くを見据えた。「そして、不死の従僕は太陽系内にいる。」

イルミナの目が大きく見開かれた。「なんですって!」

「推論を重ねると、そういう結論にたどり着く。」ミーターの声は静かだが確信に満ちていた。

次話につづく . . .

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