最適解
第68話最適解
第68話 最適解
SF小説 ボー・アルーリン
窓の外に拡がる惑星サリプの紫紺の世界に一瞬チラリと目を向けるとまたボーは、隣に座るホルク・ミューラーに向き直った。ホルクはボーの問いかけを待っていた。そのボーの姿は一見冷静だったが、彼の鋭い眼差しは、その頭脳が常に何かを計算していることを物語っていた。
「さて、ホルク。」ボーはホロパネルから目を離さずに口を開いた。「今私が述べた前提を基に、キミが最適解として想起できる私の質問は何だろう?」
ホルクは笑いを堪えながら首を振った。「先生、僕をからかうのはやめてくださいよ。それを言うなら . . . 『近似値』ですよね。『運動』の近似、『振動や非線形現象の線形化』、それに『アルゴリズムの収束性解析』も絡んでくる。ああ、『構造や電気回路の微小変化の影響』も忘れてはいけませんね。」
ボーは少し驚いたように目を細め、椅子にもたれかかった。「恐れ入った。では、その『心』とは何だと思う?」
ホルクは一瞬考え込んだ後、にっこりと笑った。「そうですね。ユーゴといえば、次にくるのが父レイチですよ。そして、その次が僕です。」
ボーは静かに頷いた。「いいね、続けたまえ。」
「それから . . . ベリスです。どうしてわかるんですか?」ホルクの声に好奇心が満ちていた。
ボーは微笑み、手を組んだ。「以前、父レイチとの話を聞いたと言ったね。それもキナの兵法書についてだったか。」
ホルクは満足そうに頷いた。「そうです。先生、あの話はとても興味深かったです。」
ボーは少し首を傾げた。「それで?」
「先生、惑星ターミナスってどのくらい遠いんですか?」ホルクが問いかけると、ボーはほんの少し笑みを浮かべた。
「驚くね。」ボーはテーブルに投影された宇宙地図を指差した。「その質問でキミの頭脳に今描かれている微分の解は?」
ホルクは地図を眺めながら答えた。「そうですね . . . 『銀河辞書編纂図書館』です。それから、ハリの奥さん、ドース。」
「彼女はキミの義理の祖母にあたる。」
「そうです。」ホルクはさらに話を続けた。「極素輻射体とウォンダ、『心理歴史学』から抽出される『精神学』、あるいは『精神感応力』ですね。それにもう一つ挙げるなら . . . 『惑星シンナックス』でしょうか?」
ボーはその言葉に答えず、しばらく目を中空に向けたまま、深い息をついた。
次話につづく . . .