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もう一つの基盤

第70話もう一つの基盤

第70話 もう一つの基盤(ファウンデーション)
SF小説 ボー・アルーリン

ホルク・ミューラーはボー・アルーリンから、壮大な計画を耳にした。その名も「もう一つの基盤」。セルダンプランを陰から支えるためのこの構想は、ファウンデーションの未来における安定性を強化するものだった。だが、その実現の第一歩として、ホルクには信じ難い任務が課せられた。妹ベリスの夢の中に入り、そこに現れるであろうドース・ヴェナビリ、亡くなったはずの義理の祖母と接触するというものだ。

その夜、ホルクとボーはベリスの寝室の隣にある部屋に集まった。母のマネルラは最初、この奇妙な計画に難色を示したが、ボーの説得に折れ、最終的に許可を出した。ベリス自身も不満げな表情を浮かべつつ、渋々計画に同意し、ベッドに横たわった。

目の前には、ダール人の技術によって開発された「夢潜入装置」があった。半透明のヘルメット型のデバイスは、青白い光をわずかに放ち、未知の領域へ誘うかのようだった。ホルクは深呼吸をし、装置を慎重に頭に装着した。

「これで本当にうまくいくのか?」ホルクは不安を隠せなかった。

「君の使命は重要だ。」ボーは静かに言った。「ドースに接触し、彼女の協力を得ることで『もう一つの基盤』が動き出す。」

ホルクは緊張を抱えながら装置を起動した。瞬間、彼の意識は現実から切り離され、夢の中に吸い込まれていった。

目を開けると、そこは無限に広がる砂漠だった。夜空には無数の星々が輝き、銀河全体が彼を包み込んでいるようだった。風もなく、静寂がすべてを支配している異次元のような空間。その中に、ぼんやりとした光が見えた。ホルクはそれを目指し、歩き始めた。

光の中心には、フィオーナ・ホーキング、いや、ドース・ヴェナビリが立っていた。彼女は人間とロボットの中間のような姿をしており、優雅さと冷徹さを同時に漂わせていた。

「お前は誰だ?」ドースの声は低く響き渡り、夢の空間全体に染み込むようだった。だが次の瞬間、彼女の目がホルクを捉え、顔に微かな驚きが浮かんだ。「いや、お前はホルク・ミューラーか。ジョラナム・ラスキンの部屋で会った少年だな。」

ホルクは少し戸惑いながら答えた。「その通りです。あなた孫ベリスの兄であり、ボー・アルーリンに頼まれてここに来ました。」

「目的は何だ?」

「セルダンプランを陰から支える『もう一つの基盤』を構築するためです。そのために、あなたの知識と協力が必要です。」

ドースはしばらく沈黙した後、深い息をついた。そして、自分の過去を語り始めた。彼女はハリ・セルダンの妻として生きたこと、人間を手にかけたことでロボットとしての機能を失い、家族を離れる決断をしたこと、そして現在はトランターでセルダンの活動を陰ながら見守っている理由を説明した。

「過去の罪と向き合う覚悟が必要だ。しかし、お前の言葉に心が動かされた。姉のウォンダを頼りなさい。」

「ウォンダ?」ホルクは首を傾げた。

「彼女は極素輻射体を操る天賦の才を持っている。彼女こそが『もう一つの基盤』の指導者にふさわしい。お前は今まで通りボーと共にベリスを支えてもらいたい。」

ドースから受け取った記憶の断片を胸に、ホルクは夢から目覚めた。隣室に戻ると、ボーが待っていた。

「どうだった?」ボーが問いかける。

「彼女は協力すると言った。そして、ウォンダがそのプランをリードするって。」ホルクは疲れた声で答えた。

ボーは満足げに頷いた。「それなら計画を始動する時だ。」

こうして、「もう一つの基盤」は静かに動き始めた。未来を照らす新たな希望として、銀河の運命を背負う準備が整ったのだった。
ウォンダの活躍は、ボーの物語にもう一方の車輪として輝き出す。

次話につづく . . .

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