WF-1000XM4をちょっと使ってみた
先月末に注文したSONYのフラッグシップフルワイヤレスイヤホンWF-1000XM4が数日前にようやく来た(だいたい買ってから3週間くらい)ので、ちょっと使ってみた。
概要
ユーザーエクスペリエンスはめちゃくちゃいい。音質は、ハイレゾ音源をワイヤレスで聴くならLDACが効いてくるが、それ以外の音源ならLDACとAACで大差はない。とはいえ先代のWF-1000XM3より圧縮音源においてもいい音だった。長年愛用のWI-1000Xと同じ音質をこの小ささに収めたのは進化を感じる。
動機
WF-1000XM4が発表されたとき、最初にLDAC対応が目に入った。LDACとは、SONYが開発したBluetoothの転送コーデックで、従来のAAC等が320kbps程度でしか送信できないところを990kbps相当程度まで転送できるのが特長である。つまり、高音質なのである。
折からの半導体不足で、在庫僅少な店が多くとりあえず様子見をしていたが、京都四条に新しくできたエディオンでたまたま聴いてみたところ想像以上に音が良かったのでソニーストアで注文した。(在庫があったならエディオンで即決していたと思う。)
エディオンで予約注文するのが筋だろうが、ソニーストアは紛失あんしんサービスが利用できた上、10%クーポンが発券されていたのでこちらにした。なおAmazonでは少々割高ではあったが数点在庫があった。色はプラチナシルバーにした。オタクは色を選ばないので、納期が短そうな方を選んだというのもあるし、今まで使ってきたイヤホンがだいたい黒だったのでたまにはいいかなと思ったというのもある。
WF-1000XM4をエディオンで聴いたとき、これをフルワイヤレスで出せる時代が来たかと感動した。同時に隣に置いてあった先代のWF-1000XM3も聴いてみたが、15秒聴いただけでこれは違うと感じて、取り外した。店員には怪訝な(そんなに気に入らなかったか?みたいな)顔をされたが、それだけ差は歴然だった。
ここ3年くらい首掛け型のSONY WI-1000Xを愛用(酷使)してきた。さすがにもうボロボロでSONYのアルファベット4文字のロゴのうち半分くらいは剥げて見えなくなっている。これも京都ヨドバシで試聴していいなぁでも高いなぁと思って大阪方面の新快速に乗ったが、居たたまれなくなって大阪で降りて梅田ヨドバシで買ったという逸話付きの機種である。この時も、ワイヤレスイヤホンでこんな音が出せるようになったかと感動した。この時店員に、「この(WI-1000X)の先っぽについてるイヤホンは3万くらいのSONYの有線イヤホンと同じ構造なので、ワイヤレスになっても同じ値段なのはすごいですよ(1000Xは3.3万円だった)」と言われ、次の日になって口車に乗せられたなと気付いた。
体験
ユーザーエクスペリエンス(UX)の話である。音が良いのは周知の通りなので、ざっくり言えば音以外のこの機種の満足度の話だ。音の話は後述。
エディオンで試聴したとき、スマホの設定アプリからBluetoothを開いて、量販店あるあるの大量に出てくるデバイスリストから選ぶやつをやろうとしたら店員に止められた。スマホを開いて数秒したら画面にGoogle Fast Pairのダイアログが表示され、ボタンを押すだけでペアリングは完了した。Air PodsとiPhoneのインテグレーションは素晴らしいみたいなことをApple信者は言うが、Androidも負けてないなと感じた。というか、多種多様なAndroidデバイスと多種多様なワイヤレスイヤホンを簡単にペアリングできるGoogle Fast Pairの方が何倍もすごい。
実際に届いたときも同じようにFast Pairでペアリングした。もちろん従来の方法でもペアリングできるが、Fast Pairはステータスバーに左右イヤホンとケースの残量が通知されたり、Find My Device(スマホに最後にイヤホンを接続したときに、そのスマホがどこにあったかを調べる/イヤホンにBT接続されている場合大音量で音を鳴らして見つけやすくする)が使えたり便利である。便利ではあるが、ステータスバー通知は頻繁に更新されそのたびにポップアップが出たり、逆に通知が表示されないことがあったり微妙な点もあった。
ケースから取り出したら即接続など、もはやフルワイヤレスでは当たり前になっている機能は一通り全て搭載している。そりゃあ3万円するからね。ただ、NFCワンタッチペアリングは非対応だ。Android非搭載(Fast Pair非対応)のウォークマンだと繋ぐのに一手間かかって歓迎できない。
SONYのHeadphones Connectアプリは素晴らしい出来だと思う。全ての設定が一つの画面に集約されており、オタク好みの「どのコーデックで送信しているか」などの表示も出る(ビットレートまで出たら最高だが)。WI-1000Xでも同じアプリが使用できたが、様々な点で進化していると感じた。まず、最初にソフトウェアアップデートが通知されたが、WIの時はアップデート中は一切使用ができなかったが、WFはソフトウェア転送中はであれば同じように利用できる(インストール時はさすがに切断される)。また途中で接続が切れたときは一時停止状態になり、復帰後に再開してくれる。
Headphones Connectのサウンド設定
1. 外音コントロール
ノイズキャンセリングやアンビエントサウンド(外音取り込み)が設定できる。
WI-1000Xの時と大してソフトウェア的なノイズキャンセリング性能は変わっていないように感じる。WF-1000XM4はイヤーピースが密着性の高いものになっているので、その分だけ程度は性能が上がっているようには感じる。まぁ田舎暮らしだと公共交通機関をあまり使わないのでそこまでマストな機能ではないし、これはWFのノイキャン性能が低いわけではなくWIの性能が今でも通用するくらい高いことによるので悪い点ではない。
アンビエントサウンドはWI-1000Xから大幅にレベルアップしているように感じた。WI-1000Xのアンビエントサウンドは不自然すぎて会話が成り立たないレベルだったが、WF-1000XM4の方は会話できるほどに自然である。
総じて、まぁこんなに小さいのにすごいと思った。
2. スピーク・トゥ・チャット
使ったこと無いので割愛。そもそもイヤホンしながら長い会話をしようとするな。
3. イコライザー
イコライザーはOff派だが、LDACでもイコライザーが効くのはWIからの進化点である。
4. Bluetooth接続品質
音質優先と接続優先であり、接続優先がデフォルトである。LDACは後述の通り音源がハイレゾで無ければあまり違いが判らないが、それでも音質優先にすべきである。
AAC接続だとしても音質優先と接続優先では音質に大きな差を感じた。ビットレートを簡単に調べる法が無いのでよくわからないが、接続優先モードではAAC 128kbps程度にビットレートが制限されるのではないかと推測する。AACは固定ビットレートではあるものの128kbpsや320kbpsなど何種類かあるはずだ。なお、接続優先だとLDACはオンにできない。
LDACをオンにするためには、音質優先にした上で本体設定のBluetoothからLDACをオンにしないといけない。ここの設定が統合されていないのはOSの仕様なのかな。
5. 360 Reality Audio
私には何もわからない。
6. DSEE Extreme
AACで繋いでいるときだけオンにできる。が、LDAC接続していても設定を変更可能である。音は全く変わらない。設計上微妙な点である。
なお、AACで繋いでいるときにオンオフするといったん音が途切れて少し違うような音になるが、イコライザーとかではないので劇的に音は変わらない。正直ほとんど差を感じることはできなかった。
Headphones Connectのシステム設定
1. 音声アシスタント
使わないのでコメントできないが、一応Googleアシスタントに設定しておいた。
2. タッチセンサーの機能を変更
小型化優先なので仕方ないが、操作性は良くない。再生コントロールと音量コントロール、外音コントロール、割り当てなしから選べる。左右1つずつの2つしか設定できないので、どれかを捨てろということになる。どれも捨てられないけど。音量だけは辛うじてスマホを手探りで操作して調節できるので初期設定のままの、左に外音コントロール右に再生コントロールを設定している。
3. 外音コントロール操作設定
タッチセンサーで外音コントロールを割り当てているときに、押すごとにモードが変わる(押し続けるとその間クイックアテンション機能が働いて、押している間だけ外音が取り込まれる)。選択対象を「ノイズキャンセリング」「アンビエントサウンド」「オフ」の3つから2つ以上選ぶことができる。初期設定は前の2つだけ、つまりノイキャンと外音取り込みが交互に切り替わる。ここで気付いたが、アンビエントサウンド(外音取り込み)機能の名称が製品内でぶれている。アプリ内では全て「外音取り込み」機能と書いているが、イヤホンから流れるガイダンスでは日本語で「アンビエントサウンド」と言う。ここは統一してほしかった。
4. 最適なイヤーピースを判定
使ってみたが、普通に密閉されていると出た。結局自分でイヤーピース付け替えないといけないから手間としては手動とさほど変わらない。
仕組みとしてはイヤホンから音を出して、それをマイクで拾って耳の中での反響を見て密閉度を計測しているのだろう。
5. 自動電源オフ
普通に便利機能だが、ここでバッテリー持ちについて書いておきたい。
連続再生してみたが、LDAC、ノイズキャンセリングありで6時間以上持った。とても優秀である。もちろんケースにもバッテリーが付いているので、充電器が無くてもより長時間再生できる。WI-1000Xでもバッテリーの持ちはすごいなぁと思っていたので、進化に驚いた。
6. ヘッドホンを外したら音楽を一時停止
便利機能である。
7. 通知音と音声ガイダンス
WI-1000Xでは英語しかなかったので多言語対応されているのは良い。
8. ソフトウェアの自動ダウンロード
オン推奨。
音質
本題である。最初エディオンで1000XM3と比較したときと比べ物にならない差を感じた。長年連れ添ってきたWI-1000Xと同じ高音質をこんなに小さなボディに入れ込んだとは…。とはいえこの体験は言語化不可能なので実際に聴きに行ってほしい。
LDAC対応は嬉しいが、正直に言うと私はAACを見くびっていた。Apple Musicが音楽サブスク大手初のロスレス配信で脚光を浴びたが、従来の配信音源の最高音質である320kbpsとCDレベルのロスレス音源に音質上の大差はない。最低でも私にとって聴き分けは困難であった。つまり、AACでも320kbpsなら一般的な音源ならLDACと差が数値的には出ないということだ。
元の音源がサブスクやCD取り込み程度の音質ならLDACに対応している価値はあまり無いが、試聴したときはそのような音源でも1000XM3と圧倒的な差を感じた。(ただし、ビットレート設定: 接続優先と音質優先の設定が異なっていた可能性がある。M4は確実に音質優先に設定した。)転送コーデック以外の面でも、最初に書いた「15秒でわかる音質の進化」を遂げている。
Androidの設定からリアルタイムにLDACとAACを切り替えられるのでいろいろ聴き比べてみたが、確かに若干の違いはあるもののこれは好みの問題の範疇だと感じた。椎名林檎の同じ夜(無罪モラトリアムより)をSpotify最高音質とロスレス音源でLDACやAACの比較試聴をしてみたが、Spotifyとロスレスの差より、LDACとAACの差の方が大きかった。好みの問題だが、椎名林檎の声がLDACの方がダイナミックに、AACの方が聴きやすい綺麗な音になる。
これの音源がハイレゾになるとコーデック事情は大きく異なる。Taku Inoueの名曲Miracle Night(天海春香、菊地真、双海亜美、双海真美、水瀬伊織)をハイレゾ(24bit/96kHz)で聴くと段違いだ。転送ビットレートの差が明らかに出ていて、AACだともやがかかったようなぼんやりとした残念な音になる。これは絶対LDACで聴いた方が良い。
オーディオ沼は深いのであまり入りたくはないが、エージングの効果というものは確かにあると思う。WI-1000Xも買ったときはこんなはずじゃなかったという音でがっかりしたが、数十時間使えばいい音になってきた。まぁこれは聴く側の慣れ説があるが、どちらにしろ音は最初微妙でもずっと使っていればよくなったと感じることが多いのは経験則的に確かだ。今のところのWFさんは買いたてのWIのときと同じような微妙な音であと一歩足りない感がある。強制的にエージングする気は無いが、しばらくは使ってみないとわからないと思う。買いたてのWI-1000Xと買いたてのWF-1000XM4が同じ音なら、WF-1000XM4は同等のポテンシャルを秘めているということになるので期待大だ。もしこれで改善がみられなければ、私の好みの音じゃなかったか、所詮フルワイヤレスの限界かという話になる。
おすすめ度
私はワイヤレスオーディオはSONY一択だと感じている。LDACに惚れ込んだのもあるが、やはり電波を扱っているのだからオーディオ専業というより兼業総合メーカーの方が良い。ウォークマンなどのBT送信側の機器も開発しているし。
LDACはどうせロスレス音源以下であれば効果が無いので、LDAC非対応であるiPhoneを使っている人でもおすすめできる。AACでも先代機種より十分高音質であると感じたからだ。ただAir Podsやその他数多のフルワイヤレスイヤホンと土俵が同じになるので、その中で飛び出ているかは知らない。他を聴いていないので。
Androidであっても、別にハイレゾに全く興味が無いならこれじゃないとダメとはならないだろう。他のイヤホンと比較検討したらいいと思う。
そして、Androidでハイレゾを聴くならほぼこれ一択だろう。ハイレゾをワイヤレスでなんて(そもそもLDACはハイレゾ音源を可逆圧縮で送るものではない)と思うかもしれないが、片手間に聴いていてもわかるくらいにハイレゾの効果がある。mora qualitasやAmazon Music HDを契約しているならなおさらだ。逆に言えば、WF-1000XM4使うなら是非ハイレゾを聴いてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?