【弁護士事務所での働き方】~なぜ90分後にお茶を取り替えるのか
私がパラリーガル(法律事務職員)になりたいと思ったのは、大学生の頃でした。
大学卒業時にも就職活動をしましたが、私の能力不足でまったく採用されなかったので、一旦、別の仕事をしながら、再チャレンジできる機会をうかがっていました。
無事、24才で最初のA法律事務所に採用され、以後、約20年間、計3つの事務所に勤めました。
その間、パラリーガル・法律事務職員として心がけていたことをご紹介します。
本日は、“お茶出し” についてです。
また簡単そうなテーマだ、とは思わないでください。意外と気を遣う業務なのです。
私は、最初に勤めたA法律事務所では、電話番とお茶出しと裁判所へのおつかいの仕事がほとんどで、パラリーガル的な仕事は、当時50代の男性事務長の担当でした。
そのため、パラリーガルとしてのキャリアを積みたいと思い、B法律事務所に転職したという経緯があります。
ただ、これは、雑務をしたくないという意味ではありませんでした。ですので、お茶出しも重要な仕事ととらえていました。
湯のみを持ったときに熱くない温度か(70~80℃くらい)、薄くないか濃くないか、複数人に出す場合は濃さ・量は同じになっているか。
例えば、100℃でお茶を入れて、お客様(依頼者)が湯のみを持ったときに激アツだったら、気が利かない事務員だと思われます。
「気が利かない」=「細かいところに気がついてもらえない事務所だ」と思われる可能性も出てくるし、実際、日ごろから全てのことに気を配っておかないと、パラリーガル業務においても細かなことにアンテナを張れなくなってくるものです。
事務員のお茶出し一つで依頼をやめるということはないにしても、小さな「がっかり」の積み重ねが、次に何かあったときに依頼してもらえなくなる原因になりえます。
CMをバンバン流して一見さん狙いの事務所ならそれでもよいかもしれませんが、次の依頼が来るかどうかは、多くの事務所では、大事なことのはずです。
気づかいのできる事務職員がいることで、依頼者は安心してくださいます。
さて、タイトルの話ですが、私は、お客様が最初にいらしたときにお茶を出してから、約90分後に取り替えるようにしていました。なぜでしょうか。それは、
“話が長引いているよ” という合図を送るためです。
もちろん案件にもよりますが、90分くらい話せば、あらかた話は出尽くしていると思われます。弁護士は忙しいですから、雑談モードに入らないうちに、一旦、切り替えるタイミングを提供してあげましょう。
場合によっては、話中に依頼者がヒートアップしてしまうこともあります。弁護士に怒りをむける展開になっては危険です。“事務員も話を聞いているよ” と知らせてあげる意味も、ときにはあります。
また、依頼者が泣いてしまっているタイミングで会議室に入っては、恥ずかしい思いをさせてしまいますから、そのようなときは逆に “話は聞こえていません” と思わせるために、落ち着くまで待ってから、素知らぬふりをして取り替えましょう。
ちなみに、2回目はお茶ではなくて紅茶にしていました。同じ味だと気持ちが切り替わらないですから。コーヒーは好き嫌いが分かれそうなので、まだ紅茶のほうが無難かなという感じです。紅茶の種類も、ダージリンのような無難なものがよいのではないでしょうか。私の勤めていたC法律事務所では、弁護士の好みでアールグレイにしていました。ティーバックですけど。Wedgwood (ウェッジウッド)のカップに注いで、3gのシュガーとミルクを配置して出していました。
意外と喜んでいただけていましたよ。紅茶を飲む間に少し雑談をして、キリが良くなってお帰りいただいていました。
以上