【虎に翼 感想】第85話 誰もが拠りどころを持つ
多幸感のある二人
内心、涼子は玉を連れて、寅子が教えてくれた神奈川県の施設へ行ってしまうのかと思っていた。
神奈川県っていっても相模原じゃないよな……と、余計なことを考えていたのだが、脚本家の方は意識していたようだ(吉田恵里香さんのポストより)。
ほらここに、障がいのある者、世話をする者とかの立場に関係なく、多幸感のある二人がいるではないか。
「涼子……ちゃん」
強制的に呼び名を変えることから始めるのは良い傾向だ。私たちはそれを『らんまん』で学んでいる。ぎこちなさが微笑ましい。
東京にいる女子部の皆にも、新潟の情報はそろそろ伝わっているだろうか。梅子&よね、香子が偶然同じ日に『Light house』を訪れちゃって再会したりしないかな(期待)。
稲は、『Light house』で週2日、働くことになった。
稲が「潰れてしまわないか心配」するように、彼女たちの問題は決して円満解決したわけではない。年齢を重ねれば涼子一人で玉の世話をすることは難しくなる。稲がいよいよ体の自由が利かなくなったときはどうするのかなどの問題を、先送りにしているだけともいえる。だが今は、起こっていないことは一旦措くとして、関係を構築することが大切だ。
稲が美味しそうな総菜を作っている。都会と田舎の味、華族と庶民の味の融合を成し遂げ、味にうるさそうなお客にも好評だ。
寅子と航一にとっても、水曜日のランチデート?がお決まりコースとなっている。しかも、杉田兄弟主催の麻雀大会に、優未同伴でどうかと寅子を誘ってくれたのだ。
立ち聞きごめんあそばせとばかりの涼子もうれしそうである。
ウマが合う二人
麻雀大会当日。
三条支部の前で待っている優未の元へ、仕事を終えた寅子と航一が合流する。
刺身の話で意気投合し、寅子を置いて歩きだす航一と優未の姿から場面が転換したら、寅子が間に割り込んでいて笑った。しかも優未の肩になれなれしく手をかけている。今までそんなことしてたっけ?(笑)
この母から娘への嫉妬が微笑ましいものであることにホッとしている。
悲しみを共有する二人
3人が到着すると、大会会場はすでに盛り上がっていた。
優未を見て突然、泣き出す杉田太郎。
あのとき、高瀬と森口の話をしていた弟の杉田次郎が、航一におしゃれだと言ってそそくさと立ち去ったこととも繋がる。
杉田太郎は、昭和20年8月1日~2日にかけての長岡空襲で娘と孫娘を失っていた。だから優未にその面影を見てしまったのだ。その後、妻も亡くし、今は一人で暮らしている。
弟の次郎は、「まだ死を受け入れられていない」と、兄の気持ちを代弁する。あのときの「皆、戦争で誰かしら大事な人を亡くしている。いい大人だし、そこは乗り越えていかないと」の言葉は、兄の姿を見ているからこその言葉だったのか。
航一の「ごめんなさい」が意味するものは何なのか、まだ明確には分からない。
だが初めて見せる一面だった。
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寅子の口から出た「拠りどころ」の言葉。
稲が、いずれ去ってしまう佐田親子に依存することを避けたかった。
涼子と玉の関係が濃密になりすぎないように、稲が割って入ることで、二人の関係もお店の味もいい塩梅で融合が図られた。
優未に声をかけた同級生たちも、片方の子がもう一人の子に執着している様子に見えた。学校の先生は同級生たちに役割を命じたが、他方、優未からすれば、“緩和剤” の役割を担わされるのはごめんだったろうね。
杉田太郎は、娘、孫、妻を立て続けに亡くし、拠りどころが仕事しかなくなってしまった。“依頼者を救う” ことに執着し、ミスリードしてしまわないよう、弁護士や事務職員は常に注意を払う必要がある。
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麻雀大会は散会となり、寅子、優未、航一の3人で仕切り直し、食事をすることとなった。
航一は、今は何を拠りどころにして生きているのか。
「(口に指をあて)秘密です」
このシーンをリピートしてしまったことも秘密にしておきたい。
ふざけてる場合じゃないと怒られそうだが、「戦時中に何が」との寅子の思い切った問いに対する答えから目をそらしたい気持ちの表れと思っていただきたい。
昭和27年。終戦から7年経ち、美佐江のような新しい種類の若者たちも登場し、皆が前へ進むフリをさせられていたのかもしれない。だが、誰一人として大事な人の死を受け入れられていなかったのだ。
次週予告
美佐江の話はもう終わりか?!
航一の慟哭の理由は何か。
朝鮮人の裁判。朝鮮戦争の話はそろそろ出るのか?
来週も重い話が続きそうだな、寅子!
「虎に翼」 7/26 より
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