【NEO部】#1 “I like drinking.”って言っちゃいけないの?
こんにちは。
旺文社ココマナ編集部のNEO岸です。
私、日本生まれ日本育ち、しらすと日本酒が大好きないわゆる純ジャパです。
特に英語ができるわけではないのですが、人生紆余曲折がありまして、旺文社で英語学習教材の企画・開発にたずさわっています。英語を話す機会があればがんばってトライしてはみるものの、日本人がやりがちな英語のまちがいをよくやってしまいます。
ヘンな英語使ってたら教えてくれよ~とは思いますが、たぶん私がまちがえまくっているので、ネイティブのみなさんも指摘してたらキリがないんでしょう。
そこで我が編集部では、日本人のヘンな英語に対するネイティブの正直な意見を聞いてみる部活を発足いたしました。要するに「〇〇って英語、じつは××って意味だったの!?」的なことを紹介していきます。
Native English Opinions(ネイティブの英語の意見)ってことで、その名もNEO部。
前置きが長くなりましたが、さっそく第一回いってみましょう!
■「飲むの好きなんです」を英語で
みなさん、お酒は好きですか?
私はだいぶ好きです。
今のご時世だとむずかしいですが、ふだんは知り合った人と仲よくなってきたら、よくこんな会話をします。
「あのー、お酒って好きですか?」
「はい、好きです」
「ではこんど飲みましょう!」
これで一気に距離が縮まったりするわけです。
「飲まない」、「飲めない」って言われても、お茶に誘うんですけどね。
NEO岸はお酒もお茶もどっちもいける口です。
では、「飲むの好きなんです」
これを英語で言ってみてください。
↓
I like drinking!
って言ったそこのあなた。
NEO部へようこそ!
このフレーズでOKか、ネイティブの声を聞いてみましょう。
■「お酒を飲むのが好き」でも“I like drinking.”はNG
Q.「お酒が好き」は“I like drinking.”でいいか。
75%のネイティブがNo.ときました!
ちなみにこのデータ、旺文社刊行の『コアレックス英和辞典』内のコラム「PLANET BOARD」の調査から引用しています。成城大学社会イノベーション学部心理社会学科川村晶彦教授により、英語圏在住のネイティブスピーカー約100人を対象に行われた貴重なデータです。くわしくは記事の最後をご覧ください。
さて、引き続きネイティブのコメントを見てみましょう!
■NATIVEの意見
●It connotes that I drink too much.(自分がふだんからお酒を飲みすぎる傾向にあると暗に言っていることになる。米♂ 30 代)
●“I like drinking.” makes it sound like you have a drinking problem.
People aren’t typically proud of their drinking habits, at least not my
friends or peers.(こういう言い方をすると自分にお酒がらみの問題があるように聞こえる。大体飲酒癖があるのはあまり褒められたことではない。少なくとも僕の友人や仲間の間ではそう思っている人がほとんどだ。米♂ 20 代)
●It sounds like you are an alcoholic, but if you are, then go ahead and
say “I like drinking.”(アルコール中毒患者みたいに聞こえるが,でも本当にそうなら言ってもいいとは思う。米♀ 20 代)
●Saying “I like drinking.” sounds simplistic and not a mature thing to
say.(こういう言い方は短絡的で大人の発言とは思えない。英♀ 30 代)
●This makes you sound like an alcoholic!(この発言だと,アルコール中毒患者みたいに聞こえる! 英♂ 30 代)
ウーン、冷ややかな反応!
完全にアル中だと思われている…。
■教えて! バーダマン先生
like「好き」って言っただけなのになんでアル中になるんでしょうか?
こんなときは先生に聞いてみましょう。
NEO部も部活ですから、ちゃんと顧問の先生がいるのです。
アメリカ出身にして早稲田大学名誉教授、ネイティブの感覚にも日本語にもくわしいバーダマン先生! 教えてください~。
英語ではお酒の話題は日本よりもずっとデリケートな話題として考えられています。お酒に関する話題のときは,曖昧な表現や控えめな表現が用いられることが多いと言えます。
ふむふむ。
「アルコール大好き!」みたいなストレートすぎる表現は避けたほうがよいってことですね。
でも、控えめな表現って?
A: Do you drink?
B: Yes, I enjoy a drink every now and then.
A: お酒はたしなまれますか?
B: はい,時折飲みます。
enjoyが使えるんですね!
たしかに「楽しんでます」くらいなら、適度な感じがします。
once in a while 「時々」などといってもよいそうです。
■今回の活動報告
というわけで、ネイティブとお酒の話をするときは、うっかりアル中認定されないよう控えめに言うのがポイントです。
ほんとうはevery dayでも、every now and thenがベストアンサー!
みなさんもネイティブの思いがけない反応に出くわしたら、ハッシュタグ#NEO部をつけて教えてくださいね。
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記事中のデータ、NATIVEの意見について
旺文社刊行の『コアレックス英和辞典』に掲載されている主要なコラムの1つ「PLANET BOARD」に収録されたデータ及びそのためのアンケート調査から引用。調査は、成城大学社会イノベーション学部心理社会学科川村晶彦教授により、英語圏在住の英語話者約100人を対象に行われた。川村教授をはじめ、『コアレックス英和辞典』の編集に関わるたくさんの先生方の「ネイティブスピーカーが実際に使っている英語の実態を知りたい、伝えたい」という思いから、ネイティブのリアルなコメントを米・英、年齢・性別ごとに収集している。英語学習者のために行われた調査としては、調査項目数、回答者数の規模や母語話者の結果だけでなく日本人学習者の結果と比較検討を行っている点等からいって他に類を見ない貴重なデータ。
調査の詳細は以下の書籍を参照:Akihiko Kawamura, Lexical pragmatics : teaching English communication and pragmatic skills to Japanese learners, (Hituzi Syobo, 2018)
※NEO部では、『コアレックス英和辞典』に未収録の調査結果をご紹介することもあります。
NEO部とは
日本人の英語に対するネイティブの意見を研究する旺文社ココマナ編集部の部活。NEOはNative English Opinionsの略。部員募集中。
NEO部顧問 ジェームス・M・バーダマン
米国テネシー州生まれ。ハワイ大学大学院でアジア研究専修、修士。1976年に来日し、以降さまざまな大学で教鞭をとる。早稲田大学名誉教授。中級レベルの英語で読める英語随筆をnoteにて連載中。
Vardaman's Random Notes ~バーダマンの英語随筆~