「積立投資」はそんなに偉いものではない
積立投資って、そんなにありがたいものでしょうか?
いいえ。個人投資家が資産形成で株式投資するのに、別に必須でもないし、絶対やらなければいけないというものではないです。
また小淵が逆説的なことを言って注目を集めようとしている。と思っていますか。
いいえ、積立投資の呪縛にとらわれて混乱しているのはあなたの方かもしれません。
最後まで読んで頂ければ、意味がわかりスッキリすると思います。難しくはありません。
決めた資産配分にいち早く到達しよう
例えば、これから20年の投資期間がある人で、投資に回せる余裕資金として今1,000万円持っており、リスク許容度を考えた結果そのうち6割(600万円)をリスク資産に配分しようとしている人がいた場合、もっとも効率的な買付タイミングは次のうちどれでしょうか。
今すぐ、一度に600万円分を買付(一括投資)
年に1回30万円ずつ、20回に分けて買付(時間分散)
月に1回25,000ずつ、240回に分けて買付( 〃 )
日に1回……( 〃 )
分に1回……( 〃 )
秒に……( 〃 )
明らかに、「最初に1回、一度に600万円分を買付」です。
いち早く目標の資産配分に到達して、できるだけ長くリスク資産の状態で持つのが最良です。それこそが「長期投資」です。
※ 資産配分を決めたことでリスクは調整したのですから、だらだら時間をかけてリスク資産部分を買っていく必要はありません。機会損失をしませんよう。
ではなぜ積立投資するのか?
それは、今、1,000万円持っていないから。
以上です。
生涯にわたってリスク資産に投じる予定のお金を、今、全額持っている人は、積立投資(時間分散)などする必要は無いのです。決めた資産配分をさっさと作ってしまえばいい。
1,000万円のうち今1,000万円持っているから、(そのうちの6割)600万円分を今買付
これがベスト・オブ・ベスト。モタモタしている暇はありません。
――さて、では1,000万円持っていない人はどうしましょう。
1,000万円のうち今500万円だけ持っているなら、(そのうちの6割)300万円分を今買付
1,000万円のうち今20万円だけ持っているなら、(そのうちの6割)12万円分を今買付
今お金を持っていないなら、買付はできない。
このどれか、または中間のどこかになりますね、必然的に。
誰にでも理解できる、当たり前のことしか言っておりません。
毎月一括投資することが、結果的に積立投資に見える
では、投資に回せるお金を"今"持っていない人はどうするか。次の給料日まで待ちますよね。次のお給料をもらって、色々引いた結果、余裕資金が40,000円となった人は、こうなります。
今40,000円持っているから、(そのうちの6割)24,000円分を今買付
それでこの月は終わりです。
翌月またお給料をもらうと、こうなります。
今40,000円持っているから、(そのうちの6割)24,000円分を今買付
それ以降も同じです。
今40,000円持っているから、(そのうちの6割)24,000円分を今買付
今40,000円持っているから、(そのうちの6割)24,000円分を今買付
今40,000円持っているから、(そのうちの6割)24,000円分を今買付
……
結果的に、積立投資のようになっている。それだけのことです。
毎月手動で買付するのが面倒だったら、証券会社のサイトの機能で、「積立設定」でもしておけばいいでしょう。毎月24,000円分を自動で決済してくれて便利です。
※ 証券口座で「積立設定」するのなんて、その程度のことでしかありません。面倒だから自動化する。ただのライフハックです。
「積立投資をやる!」から「常に一括投資!」へ
見てきたとおり、積立投資は別に積極的にやるようなことではなく、投資の原資がちまちま(たいてい毎月)増える会社員のような人が毎月一括投資していると、結果的にそうなっている、というレベルのものです。
結果的に積立投資になることは別に悪いことではないですし、「積立投資してます」と言っても間違っていないし全然いいと思います。
ただ、「積立投資をやる!」という考え方、積立投資を目的化してしまうと、ともすると「積立投資さえしていれば完璧」のように思え、結果リスクを取らなすぎたり、逆にリスクを取りすぎたりしてしまうことがあるので、それは避けるべきだと思います。
大事なのは自分のリスク許容度に合った資産配分を維持することです。
「積立投資をやる!」から「常に一括投資」へマインドをシフトしましょう。
定期定額・定期不定額・不定期定額・不定期不定額
"毎月"である必要さえありません。2ヶ月に1度でも、毎分でも、長期的な投資の成績に大した差はうまれません。
定期定額
定期不定額
不定期定額
不定期不定額
定期的である必要さえありません。定額である必要さえありません。どれも大差ありません。このうちどれかが特別有益になる理論はありません。余裕資金が生まれたらどんなタイミングでもどんな金額でもいいから一括で買付しましょう。
まぜたっていいのです。
実際私は、毎月33,333円つみたてNISAで楽天VTIを買い(定期定額)、余裕資金がある程度たまったときにETFのVTIを買っています(不定期不定額)。
こうすることで、お金を使いすぎた月や、余裕資金が多くできた月など、どんな場合でも柔軟に投資に回せます。
定期定額
定期不定額
不定期定額
不定期不定額
このうち、「定期定額」を積立投資とよんでいるに過ぎません。ドルコストとよぶ人もいるかもしれません。呼び名など取るに足りないことです。
※ 投資に回せるお金が少ない月は、積立設定を解除したっていいんです。
多くのメディアが積立投資を強調しすぎ
それにしても、実に多くのメディアが、積立投資の有用性を説いています。
それは、発信者側に、このような利点があるからだと思います。
投資期間当初の投入金額を小さく見せて、新規顧客が投資を始める抵抗感をやわらげられる
現金での貯蓄の感覚と似せて、お金をリスク資産に投じることを習慣づけてもらえる
投資開始直後に多少値下がりしても金額的には小さいダメージで済むので、リスク許容度を見誤った新規顧客からの苦情を躱せる
積立投資の万能感を顧客に植え付けておけば、過剰なリスクをとってくれるかもしれず、その場合手数料収入増加が期待できる
つまり、積立投資とは、投資家が増えることでメリットを得る個人や法人にとって都合のいい言葉であり考え方に過ぎないということです。
銀行や証券会社、国(金融庁)、出版社、ファイナンシャルプランナー、アフィ報酬を得られる個人ブロガー、広告収入目当てのYouTuber、などなど。
または、なんとなーくで積立投資がいいと思って発信している無数の一般人たち。
この性格はドルコスト平均法と似ていると思います。
私たち個人投資家は、積立投資を魔法の杖のようにありがたがるのではなく、(リスク許容度に合った資産配分を維持するために)常に一括投資したときに結果的にそうなっているもの、と思うのが望ましいと思います。
山崎元さんの記事
このnoteを書いていたら、ちょうどトウシルに山崎元さんが同じテーマの記事を投稿されていました。とても参考になる内容です。
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