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ガザ、ジェノサイドと民族浄化の200日、抵抗の200日--生きることが抵抗だ

ガザ地区南端のラファに近い地中海岸で日光浴を楽しむガザの人々の動画に「Palestinians who love life and insist on it」とキャプションが付いていた。「insist on」とは「こだわる」とか「強情を張る」とか「言い張る」とかいった意味だ。「あくまでもそれを欲し、他のなにものでも妥協しない」ぐらいの強い含みがある。この一文を訳しつつ自分の考えを足して投稿した(4月18日)。

「生きること/命を愛し、より生きようとするパレスチナ人」

 パレスチナ人を表す言葉にsteadfastness (アラビア語の発音はsmud、不動/不断)がある。パレスチナ人は抵抗を運命づけられて生まれてきて、生きることの全てが抵抗だ。戦争の最中に海辺で日を浴び、遊ぶことも。

ガザの人々は生きることで、生き残ることで、より強い意志を持ち、より生きようとして生きることで抵抗の態度を示している。生きている人々が生き残れなかった(殉教した)人々を記憶し、破壊された街を記憶し、再建を誓うことで抵抗している。驚いたことに、というか、ある意味当然なのかもしれないが、ジェノサイドの日々が長くなるほどに、破壊が拡大するほどに、その抵抗が依って立つ背骨が太くなっていくように見える。

親を殺されたガザの子どもの動画にしばしば「将来のハマス」などのキャプションがつけられて回ってくる。実際にハマスの軍事部門であるアル・カッサム旅団の戦闘員の85%はイスラエルに親を殺された息子たちだ、とのことなので、あながち間違ってもいないのだろうが、ガザはしばしば「レジスタンスの温床だ」とか「戦闘員の孵卵器だ」とか言われることについて、PIJ政治局(アラブ関係/国際関係部ヘッド)のイスハン・アタヤは、2023年10月28日に実施されたオンラインメディア『Thr Cradle』のインタビューで以下のように説明した。

アタヤ「ガザのパレスチナ人は『保育器』ではなく、レジスタンスの不可欠な部分です。ガザのパレスチナ人は、不屈の精神と抵抗の精神をもって敵と対峙する現場を率いている。ガザのパレスチナ人は、(現在展開されている)前例のない大虐殺の全てと、パレスチナの人々を再び避難させ、脅迫し、抵抗の意志を打ち砕こうとするこの殲滅戦争、シオニストが手を下す米国政府主導の殲滅戦争にも関わらず、敵と対峙する現場を率いている」
Ataya: The Palestinian people in Gaza are not an "incubator" they are an integral part of the resistance. They are the ones who lead the scene of confronting the enemy, with their steadfastness and defiance of it, despite all these unprecedented massacres and the war of extermination led by the US administration by Zionist hands to re-displace the Palestinian people, intimidate them, and break the will of resistance.

ガザのパレスチナ人がより強く、より長く抵抗し続けられるように現場を整えるのが、武装抵抗に身を投じた戦闘員の役割なのかもしれない。当然のことだが、戦闘員がいなくなれば(パレスチナの抵抗勢力が政治的解決を得る前に武装解除すれば)、ガザのパレスチナ人は今ほど力強い抵抗を続けることはむずかしくなるだろう。

「ジェノサイドと民族浄化の200日間」の総括を示す『Cradle』の投稿を全訳する。すさまじい数字だ。しかもまだ増えている。知っていてこれを止められないのは人類の恥辱だ。(訳文中の*マークは訳注。文末参照)

ガザ地区への侵略が始まって以来200日目を迎えた今日(2024年4月23日)、イスラエル占領軍はガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイド犯罪と民族浄化の犯罪を継続しており、すでに3万5000人近くが殺害され、ガザ地区のインフラの80%以上が破壊された。
On the 200th day of the aggression on the Gaza Strip, the Israeli occupation continues its crimes of genocide and ethnic cleansing against the Palestinian people in Gaza, having already killed nearly 35,000 people and destroyed over 80% of the infrastructure of the strip.

これらの犯罪が続くなか、パレスチナ人レジスタンスの各ファクション/各派は不屈の精神を持つガザの人々を守るため、「アルアクサの洪水作戦」の一環として抵抗を続けている。
Amidst the ongoing crimes, the Palestinian factions have continued their resistance as part of Operation Al-Aqsa Flood in defense of the steadfast people of Gaza.

今日の早朝に実施されたロケット弾攻撃作戦により、イスラエル軍の陣地と、ガザ周辺地区 Gaza envelope の入植地*への砲撃が成功した。スデロットにある標的を攻撃したPIJ(パレスチナ・イスラミック・ジハード)の軍事部門、アル・クッズ旅団**によるこの作戦は、今週実施された4回目のロケット弾攻撃となる。
Earlier today, rocket operations succeeded in bombarding Israeli positions and settlements in the Gaza envelope. The operation by Al-Quds Brigades, the military wing of the PIJ, which struck its target in Sderot, marks the fourth rocket barrage launched this week.

イスラエル軍の陣地とイスラエルの入植地へのロケット弾集中砲火***は、占領軍に対し、(200日に及ぶ)彼らの犯罪と破壊にもかかわらず、レジスタンスは依然として堅固であり、戦う能力を維持しているという明確なメッセージを送るものだ。
The firing of rocket barrages on Israeli positions and settlements sends a clear message to the occupation that the resistance remains steadfast and capable despite their crimes and destruction.

アルアクサの洪水作戦は、イスラエル軍の無敵幻想を打ち砕くことに成功し、パレスチナの大義を世界の大衆の議論の最前線に引き戻した。
Operation Al-Aqsa Flood has succeeded in breaking the illusion of the Israeli military’s invincibility and returned the Palestinian cause to the forefront of global public discourse.

今日ガザ地区で目撃されている恐怖の数々にもかかわらず、10月7日の出来事が歴史の流れを不可逆的に変え、新たなパラダイムを生み出し、パレスチナ解放への道を切り開いたことも記憶しなければならない。
Despite the horrors being witnessed in the strip today, it is important to also remember that the events of 7 October have changed the course of history irreversibly and created a new paradigm, setting the path towards Palestinian liberation.

この200日間にガザ地区は以下の諸々を目撃/経験した。
In 200 days, the Strip has witnessed:

● 死者3万4,183人 34,183 deaths
● 行方不明者7,000人 7,000 missing persons
● 殺害された女性9,752人(全体の29%) 9,752 women killed (29% of total)
● 殺害された子ども1万4,778人(全体の43%) 14,778 children killed (43% of total)
● 飢餓で死亡した子ども30人 30 children have died from starvation
● 殺害された医療従事者485人 485 medical staff killed
● 殺害された民間防衛隊員67名 67 civil defense killed
● 殺害されたジャーナリスト140人 140 journalists killed
● 負傷者7万7,143人 77,143 injured
● 避難者200万人 2 million displaced
● ガザ地区出身の被拘束者5,000人 5,000 detainees from the Gaza Strip
● 拘束された医療従事者310人 310 healthcare staff detained
● 拘束され、名前が判明しているジャーナリスト20人 20 journalists detained with known names
● 全壊または一部損壊された学校と大学412 412 schools and universities completely/partially destroyed.
● 全壊または一部損壊されたモスク556 556 mosques completely/partially destroyed.
● 占領軍の標的となり破壊された教会3 3 churches targeted and destroyed by the occupation.
● 全壊または一部損壊された住宅38万 380,000 housing units completely/partially destroyed.
● 閉鎖された病院32 32 hospitals put out of service.
● 閉鎖された保健センターと保健機関213 213 health centers & institutions put out of service.
● 占領軍の攻撃対象となった救急車126 126 ambulances targeted by the occupation army.
● 破壊された考古学遺跡と文化遺産206 206 archaeological and heritage sites destroyed.

[訳注]

*ガザ周辺地区 Gaza envelope の入植地:「Gaza envelope」はガザ地区の周囲を包む/包囲する「防衛の前衛」である市町村を統合する比較的新しい呼び名で、ガザの戦闘員たちが10月7日に急襲したキブツ群もこれに含まれる。Gaza envelope の多くの集落(全部かもしれない)は、パレスチナ人が1948年のナクバの際、武力で追放された最後のパレスチナ人集落群の後に作られたものだ。この時に故郷を追われたパレスチナ人の多くはガザ地区に避難し、国連が借り上げた難民キャンプに仮の住処を得た。

**PIJ(パレスチナ・イスラミック・ジハード)の軍事部門、アル・クッズ旅団:ガザの武装レジスタンスの中でハマスの軍事部門アル・カッサム旅団に次ぐ規模を持ち、10月7日の越境作戦をハマスと共に主導した。グループの創設はハマスより早い。PIJは武装抵抗にほぼ特化しており、政治的野心は比較的薄く、(これまでは)PAともあまり敵対的でない関係を保ってきた。ハマスとPIJの軍事部門はイランの支援を受けている。またPIJ政治局のリーダー達はハマスの政治局リーダー達と同様にしばしばイスラエルに超法規的に殺されている(暗殺されている)ため、国外に拠点を置いている人もいる。軍事部門の部隊名「(アル)クッズ」とはエルサレムのこと(標準的なアラビア語の発音だと「クドス」に近いらしい。「クッズ」はそのパレスチナ方言とのこと)。イラン・イスラム革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ(コドス)」も同じ固有名詞のペルシャ語読み。

***イスラエルの入植地へのロケット弾集中砲火:ガザ地区のレジスタンスがガザ周辺のイスラエル領土を標的にロケット弾を発射する理由は、note「抵抗勢力のロケット弾に込められた意味-先住民と入植者」に訳出した。ロケット弾発射への理解が深まると思う。

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