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新連載 わたしが推したい一曲 第1回SKE48「手紙のこと」~一番楽しい時間について~

言葉について

 SNSの登場以降、僕らは一日で多くの言葉を読むようになりました。
 場合によっては多くの言葉も発信するようになりました。
 それは時に誰かの心を動かしたり、時に誰にも気づかれずに流れていったり。一週間前のSNSのタイムラインなんて誰も覚えていないぐらいの早さで言葉は流れていきます。
 これは、もしかすると、SNSの言葉が鍵垢のような特別な場合を除いて、不特定多数に向けたものだからかも知れません。そこまで残る言葉は少ないかも知れません。
 
 それじゃあ、誰かのために書いた言葉はどうでしょう?
 たとえば、手紙の言葉です。
 先生が生徒たちに送るための手紙のような大勢に向けた手紙もあるかも知れませんが、大事な誰かのために送る手紙の言葉はきっと、その人のための特別な言葉だと思います。
 僕は、先日、初めて推しの五十嵐早香さんに手紙を書きました。
 何度も何度も書き直して、なんなら一回、ポストに入れたものを出してもらって、もう一回書き直して。それでも、僕は今日この瞬間の方がいい手紙が書けたのではないか、と思います。それぐらい手紙の言葉って、思い入れを持てるものなんだな、と自分で書いてみて思いました。
 何度も言葉を書いては消して、また書き直して。
 手紙の色は本当にこれでいいのか、封筒はもっと上品なものはないだろうか?
 読みながら、「この人はなんでこんなにモタモタしてるんだろう?」と思われた方もいるかも知れません。でも、この遅さこそが手紙の魅力だと僕は思います。
 相手のことを思って手紙を書く時間。
 そして、手紙が届いた後のこと。
 僕はいただいた手紙は全部捨てずに保存してあります。
 質量としてずっと、頂いた応援メッセージや気持ちが残っています。
 だから、僕にとっては、いただいた手紙はお守りのようなものです。
 誰かにとっても大事にとって置いてもらえるような手紙を、自分も書けるようになりたいな、と思います。
 


相手のことを考える時間の貴重さについて


 SKE48の「手紙のこと」は2009年10月25日に始まったチームSの3rd公演「制服の芽」公演の最後に来る曲です。元気さや激しさが伝わってきそうな曲が多い「制服の芽」公演では、異色の曲でもあると思います。とてもゆっくりとしたメロディのこの曲は、先ほど僕が書いた手紙を書く時間の持つ、良い意味での遅さのようで、聴く度に何か大事なものを思い出させてくれます。
 大事なものとは何か、もう少し具体的に書いてみたいと思います。

 この曲の主人公は「君」に手紙を書こうとします。
 でも、なかなか上手く書けません。そこで、話しかけるように手紙の言葉を書いていきます。この話しかけるように手紙を書くというのは、すごく手紙の文が書きやすくなりますね。「君」のどこに惹かれたかを考えていくのですが、プラスの面ではないんですよね。むしろ、悲しそうな顔の時の方が印象に残っている。これは、相手の悲しさを癒したいという思いからかも知れませんし、守りたいという思いからかも知れません。ただ、この曲の主人公の優しさが伝わってきて、僕は2番の歌詞が大好きです。
 しかも、この手紙を結局、出さないのがまた切ないんですよ。
 不特定多数に読まれる言葉って、どうしても自分のことを良く見せようとしてしまいませんか?僕はします(即答)。
 でも、この曲で描かれる主人公の言葉は、飾らない等身大の言葉なんですよね。
 そして、この曲の中で一番、美しいと思う箇所がこちらです。

なぜ 今 僕は 君に手紙なんて
書こうとしていたのでしょう?
おそらく それは 君のことを考えるのが
一番楽しい時間だから

SKE48 Team S「手紙のこと」より引用

 noteを書いていると、ついつい閲覧数や「スキ」の数が気になることがあります。また、こういう言説で進めて行った方が読者の受けは絶対にいいよね、と思うズルい自分が顔を出しそうになる時があります。
 でも、この「手紙のこと」を聴くと、大事なのは数じゃないよね、と気づかされます。誰かに受けたいとかでもないです。noteの前にブログを書いていたんですが、ブログを始めた頃、「この曲ってこんなにいいんですよ!そして、中でもこの部分が僕は好きなんです!」とか「こうなったら、推しの公式ブログの魅力を毎週書いてやる、徹底的にな!」とか、もっとまっすぐな気持ちで書いていたのを思い出します。文章をどこかにアップした後よりも、その文章を書いている時間、もっと前の好きな曲や好きなメンバーを考えている時間。その時間が一番楽しかったんです。
 「手紙のこと」を聴くと、あの時間にもう一度戻りたくなります。
 そして、誰かのための手紙を書くように、言葉を丁寧に紡いでいきたいと思います。

 あなたは、誰のことを考えている時間が、一番楽しいでしょう?

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栄、覚えていてくれ
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