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潜れる理由

 ちくま新書から出ているイギリス文学者である北村紗衣さんの「批評の教室」が非常に面白いです。
 東京大学大学院を出て、キングス・カレッジで学んだ彼女の、シェイクスピアを始めとする舞台や映画に関する批評の視点は、これからブログを書いて行く上でも凄く勉強になりました。映画好きや小説好きの方にもおすすめです。
 この著作の中で「精読すること」についての章で、作品内の事実を拾いながら、作品が語ろうとしていることを読み解くヒントを彼女は提示しています。決して作者ではなく作品である、ということ。この辺りはロラン・バルトの「読者の誕生と作者の死」を連想させられるところもありますが(実際にバルトを引用しているところもあります)、わざわざ作者が表現したものがどんな意味や構造を持っているのか、ストーカーのようにじっくり読む面白さを僕らに教えてくれます。
 この著作を読みながら、あるメンバーを僕は思い出しました。

 先日、SKE48の10期生、五十嵐早香の生誕祭がありました。
 僕は五十嵐早香推しなので、初めての彼女の生誕祭を感慨深い思いで観ていました。
 遠い外国から移動を繰り返して、SKE48のオーディションを受けてくれたことや、心に傷を負ってもSKE48に復帰してくれたこと、一つ一つがありがたい、と感じながら。
 生誕祭の主役である早香先生と並行して、実は気になったメンバーがいます。
 それは、同じく10期生の伊藤実希さんです。
 彼女の躍動感あふれる表現は本当に素敵で、カメラに抜かれた時の表情も非常に素晴らしかったです。

 いったい、何故、彼女は新人にも関わらずこんな素晴らしい表現ができるんだろう。 

 そこで、彼女のことを調べていくことにしました。
 まずは公式動画をご覧あれ!


 ううむ、6年間のバスケや2年間の陸上の経験が下地となって彼女のパフォーマンスを支えていたんですね。いやいや、実はそれだけではないんです。
 実は現在研究生公演で踊っている「We're Growing Up」公演の曲についての考察も非常に素晴らしいんです。
 ちょっとセトリ順に並べてみますね。

① チャイムはLOVE SONG

 まずは、初回の「チャイラ」の考察。
 もう、こんだけ丁寧に考察してるんなら、僕のブログ、要らないんじゃないですか?


 ①分からない単語、気になる単語をピックアップ。②雰囲気がなんとなく把握できたら5W1Hで考えるという読解の仕方をしてるんですね。
 面白い。
 「5秒」についての読み解き方も凄く面白いですね。そうか、「希望」っていう読み解き方もあったのか、という発見の面白さ。僕らはひょっとすると、気付かずに通り過ぎていくものを彼女は、いったん立ち止まって捕まえているのかもしれません。まさに歌詞の世界を精読しているんですよね。

 ちなみに僕のチャイラの大好きなポイントは「1、2、3!」の掛け声のとこですね。
 あとは、日常の時間の中に突如生まれるキラキラとした「5秒」間の美しさと切なさを感じるところでしょうか。

② 校庭の仔犬

 もうね、いとみきちゃんは今すぐ近代詩か現代詩の研究を専攻してほしい。
 それぐらい着眼点が素晴らしい。
 タイトル「仔犬」の「子」に何故、人偏をつけるのか?という問題の発見。研究は問題を発見するまでが一番難しいと言われていますし、その発見した問題がいかにリーチがあるもので作品の新しい一面にアプローチできるかが大切になってきますが、この「仔」という字の発見はそれが全部できています。
 昭和世代の方なら校庭に犬が迷い込んで来るということは、あるあるだと思うんですが、それを生まれたばかりの恋心に例えているところが素晴らしいですね。僕は校庭にくる犬は、みんなが授業つまらねえなあ、という気持ちが凝縮されて生まれたエレメンタルだと思っていましたよ。
 ちなみに、僕のこの曲のスキポイントは、なんといってもメンバーのワンちゃん化ですね。個人的には、前の推しだったみいぽぽのが見たかったですよ…。ええ…。いかん、暗くなりそうでした、次に行きましょう!

③ ウイニングボール

 メモの最後の2行でズバーンっとやられましたよ。
 確かに48グループも成長を楽しむグループですよね。
 応援している野球部はいってみれば他人なんですけど、その「他人の物語」に感動できること、誰かの涙に同じように涙を流せるというのは、アイドルを応援することにも繋がると僕は思います。
 これも良い解釈ですねえ。もう、他のSKE48の曲もやって欲しい。

④ 今 君といられること

 確か、みなるんが好きな曲でもありましたよね、「今君」。
 秋元康の歌詞では1番のAメロで風景が丁寧に描かれる曲が結構ありますが、これは叙景詩的なんですよね。切ない気持ちを風景に乗せて行く。揺れる心や絶対に触れられない時間というもの。
 僕も「ラムネの飲み方」公演の中で好きな曲の一つです。
 

⑤ Doubt!

 「お互いの素直になれない恋心」はまさにですね!
 振り付けの解説も凄く公演を観る時の注目ポイントになります。
こちらも「今君」と同じく切ない曲なんですが、同じ別れを連想させられる曲でも、こちらの方が曲の二人の関係がややこしくて、なんとなくSKE48の女の子っぽくて好きです。
 

⑥ 恋を語る詩人になれなくて

 これもタイトルの意味と作中の女の子の詩集から、思いを言葉に出来ないということを結び付ける考察が素晴らしいですね。ちなみに、リルケは初期に恋に関する詩を結構、書いてますね。
 そして、SKE48の曲でしばしば出て来る「太陽」の解釈も素晴らしいです。
 「野に咲く花」の解釈は、そのまま「Stand by you」にも使えそうですね。
 「詩人」については、秋元康がつけたSKE48の曲のタイトルの中でも1、2を争うほど素晴らしいものではないでしょうか?
 ちなみに僕のタイトルベストは「無意識の色」です。意識しないけれど、僕らが共有しているSKE48の色を連想させられます。

 本日、2021年11月6日までの時点ではここまでですが、この続きも凄く気になるので、SKE48の楽曲が好きな方は、いとみきちゃんのブログは是非是非読んでみてほしいです。
 個人的には「渚のイメージ」の解釈が凄く気になります。


 希望に溢れた未来へのイメージした曲だと僕は解釈していますが、「渚」という砂浜と海に隣接した場所は、まだ研究生の彼女たちにぴったりなんですよね。海は曲中でオレンジ色に染まります。SKE48カラーです。そこで楽しむイメージは、まさにSKE48で活躍するイメージを僕らにさせる曲だと僕は解釈しています。
 はたして、彼女はどんな解釈をするんでしょう。


 ちなみに、彼女は他のアイドルさんの曲も詳しいです。
 参考までに。

 もうね、「ズルいよ、ズルいね」が最高なのは、その通りなんですよ。
 坂道だと欅と日向はわりと聞いているんですが、「制服と太陽」良いですよね。自分の進路について考えたことがある人なら、凄く刺さると思います。そして、「青春の馬」!!もう、僕も力をもらってる曲です。ハロプロは明るくないんですが、BYOOOOONSはわりと好きです。いとみきちゃんの好きな曲も聞いてみたいですね。

 さて、話を戻すと、彼女はこんなに曲を大切にして、様々なアイドルの曲にも親しんでいるんでしょう。
 そのヒントは彼女の生誕祭の中の手紙にありました。
 ちょっと、読んでみましょう。
  

「みきたん、お誕生日おめでとう。
 

 本日はこのような素敵な生誕祭を開いてくださった関係者の皆様、いつも応援してくださっている皆様、10期生の皆様本当にありがとうございます。

 以前は誕生日になると一緒に食事に行ったり出かけたりしたけれど、大きくなるに連れて友達との付き合いが増え、今ではSKE48の活動に専念しているので一緒に出かけたりするのは少なくなってしまったけど、嬉しくもあり寂しく思う時もあります。

 でも、10期に合格して10期生の皆と楽しく頑張っている姿を見ると10期生で良かったと感じているし、とても誇らしいです。

 実希がSKE48に合格したのは高校2年生17歳の時でした。

 お母さんが17歳の時は将来について決意することなどなく過ごしていましたが、実希は幼稚園の卒業式で『将来はアイドルになりたい』と発表していましたね。

 小さい頃から体を動かすことが大好きで、テレビの前やDVDをつけてキャラクターやアイドルと同じように歌ったり踊ったりしていたことが思い出されます。

 小学5年生の時に初めてSKE48のオーディションを受けてから今に至りますが、オーディションでは東京まで行ったのに名前だけ言って帰ってきたこと、最終審査まで残ったのに思うような結果が出ず2人で涙して無言で帰ったことがありましたね。あの時は声をかけてあげられずごめんね。

 アイドルになりたいと、アイドル一筋でオーディションがある度に応募すること6年間続けてきました。

 だんだんいつまで続けるのかなと応募写真を撮りながら内心思ったこともありましたが、そんなことは聞けるはずもなく続けて行く限りそばでずっと応援してきました。

 絶対アイドルになるんだと強い意志があっての6年がこの10期生の皆に巡り会うための意味のあった6年間だと確信しています。

 SKE48に合格してからは進学校ということもあり学業との両立に苦しみまいたね(どちらも体に叩き込んで覚えるタイプだもんね)。

 なのに、いつも大切な時期に学校の定期テストと重なり朝までテスト勉強や振り付けも覚えたりしていたけれど、10期で初めてである劇場公演のメンバーに選ばれずとてもとても悔しくて涙を流した時も、落ち込んでいる実希を見てまた声をかけてあげられなかった。

 それでもいつも頑張ってきたから実を結び、10期ゼロポジで優勝してアシスタントを務めたり、『SKE48のへーきん!』で二冠を取ることができ、先輩方にまじりセンターをさせていただいたね。

 少しずつですが成長し、アイドルらしくなっていく姿を見ることができて、私の中では大きな自慢になっています(普段は面と向かって恥ずかしくて褒めたりしてないけど、実希はいつでも私の中で一番です)。

 実希の中でSKE48の比重がだんだん大きくなって学校を卒業できるのか心配になりましたが、先生方のかけてくださった言葉もあり無事卒業することができました。

 進学するのか悩んでもいたけれど、『自分の今したいこと、やりたいことをしたらいいんだよ』と先生のアドバイスもありSKE48一本に決めることができました。

 そして、夢であった10期生で新しい公演をすることができました。

 新しい公演に関わってくださった関係者の方や先輩方はもちろんのこと、10期で何度も話し合いをしたこと、何度も振りを合わせて皆が一生懸命で汗を流して踊っている姿や毎回ソロダンスやMCでは自分なりに考えて変えて公演に立っている姿を見ると未だに涙してしまいます。

 最後になりましたが応援してくださってる皆様、公言したにも関わらずこの1年マイペースが治らず、SHOWROOMも時間通りになかなか始まりません。

 こんな実希ですが、これまで応援してくださりありがとうございます。これからも変わらず応援してくださると実希の力になると思います。

 実希へ

 これからもアイドルという職業に恩返しできるようまず自分自身が楽しんで、SKE48の象徴でもある歌やダンスを頑張って、皆さんにこれからも応援していただけるように大好きなSKE48の活動を、大好きなアイドルの活動を常に感謝の気持ちを持ってやり続けていってください。

 これからもずっと一番近くで応援しています。

 母より」

 僕らは、いつもメンバーを知るのはアイドルになってからです。
 いや、人によってはオーディション配信の頃から知ってるよ、という方もいるかも知れませんが、僕らの前に登場するまでのドラマは、なかなか知ることができません。
 手紙の中にあるように、時には涙して無言で帰った日のことや、いつまで続けるんだろうというお母さまの心配、それでも彼女が諦めずに挑戦しつづけてきた6年間を想像するだけで、僕は目頭が熱くなります。
 自分が元気をもらってきたアイドルという職業への恩返し。そして、今度は誰かに元気を送る側になる。
 ずっと憧れていたSKE48だからこそ、1曲1曲は彼女にとって大切な宝物なんでしょうね。
 今も彼女は少しずつ成長しています。

 そして、頼もしい言葉も残してくれています。

 ずっとアイドルになるという夢の為に頑張ってきた彼女だからこそ、曲を大切にしながら、素晴らしいパフォーマンスをしてくれるんでしょうね。
 10期の仲間たち、そしてこれから接していく機会が増えるであろう先輩たちとSKE48に新しい風を吹かせて欲しいです。

※なんとなく、イメージした曲を貼ってお別れです。

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栄、覚えていてくれ
こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。