熱量とインタラクティブ
SHOWROOMを立ち上げた前田裕二は、SHOWROOMを立ち上げた際、何か一つのカテゴリーに特化しないと他の配信アプリとの差別化ができないと考えたそうです(詳しくは彼の著作『人生の勝算』をチェック!)。様々な選択肢がある中で、アイドルに特化したものでまずは勝負しようと前田さんが考えた最大の理由を、「熱量」と彼は書いています。
それまで投資銀行マンでアメリカに住んでいた彼は、SHOWROOMを立ち上げ、広げる為に様々な場所に営業へ行っていました。その中で、秋葉原の地下アイドルの現場に営業に行った時、現場の熱量に刺激を受けたそうです。「ニッチではあるが、こんな熱量のあるコンテンツは見たことはない」と。
前田さんは、「人を動かすもの、惹きつけるものは熱量である」と確信します。
SHOWROOMにおいては、「クオリティ」というものの価値観が少しずつ、変化が起きていると同じく著作「人生の勝算」の中で語っています。完成度よりは面白さと送り手側と受け手側の関係が重要であると。インタラクティブ(双方向性)があり、配信を面白くするのは、送り手側だけでなく受け手側も担っているそうです。コメントの面白さや「前向き課金」としてのギフティング等、「この部屋面白いな」と思う部屋の質は送り手だけでなく受け手も良いそうです。配信者の笑顔が自分の笑顔にもなる。幸福な関係ですね。
SKE48で僕が一番に思い浮かべたのが、平野百菜です。
僕はそこまで48グループのSHOWROOM配信をチェックしているわけではないので、断言はできませんが、それでも彼女のルームは48グループトップクラスの「クオリティ」を確保していると思います。
一例を挙げると、「風船トランポリン」や「ボーリングボクシング」等、思わず僕の大好きなお笑いコンビ「金属バット」の「三味線弓道」のネタを思い出すぐらいの奇想天外な思考で彼女は配信をします。
「AKB映像倉庫」のアーカイブには、アバターの様子までは残っていませんが、ルームの方々がももたん好みのアバターに統一されているのも面白いですね(ほら、お食事中に読んでくださっている方もいるかも知れませんしね)。
さてさて、少しだけ話をSHOWROOMに戻すと、前田さんは著作の中でファンビジネスを4象限に分類しています。縦軸は偶像(更新が少なく、低密度)と身近(更新が多く、高密度)。横軸はファンの数の多さと少なさ。彼は秋元康は4象限のうちの縦軸の下のゾーンをターゲットにしていて、SHOWROOMはこの層との相性の良さも挙げています。まるで、スナックや床屋のように毎日やっていて、気軽に入れると。そして、努力や工夫次第で一気に人気が出る土壌があるそうです(逆に手抜きだとすぐにバレてしまう怖さもあると)。
そう考えると、SHOWROOMを900日も続けられる彼女とファンの方々の熱量は本当に素晴らしいと思います。
ちょっと彼女のアメブロを読んでみましょう。
ただの900日のお祝いにせずに「9」にかけたアイディアで盛り上げる彼女の頭の柔らかさを感じます。
思えばももたんは、SHOWROOMの様々なイベントで結果を残しています。
フルーツやテーマパーク、様々なものをゲットしています。
※詳しくはこちらのブログをご確認あれ!
ただ、嬉しいことばかりではありませんでした。
bis出演をかけたイベントでは残念ながら、落選しました。
しかし、この時読んだ手紙が素晴らしいので、2020年4月26日の配信をちょっと確認してみましょう。
「応援してくれたみんなへ
イベントが始まって今日まで、応援ありがとうございました。
イベントが始まる前は、不安の(方)が大きかったです。
毎日アイドルをやってるけど、1日3時間も配信したことないし、立候補した先輩・同期・後輩をみたら、もものことを応援してくれる(涙をふきながら)…。応援してくれる人いるのかな、って心配に…(涙をふくために一旦中座)。立候補したのに凄く…(再び涙をふく)。弱気になっていました。
でも、イベントが始まると、初日から沢山の人が応援してくれて、配信のスケジュールをみんな真剣に考えてくれて。それだけでも、嬉しかったのに、『頑張ろう』ってみんなでみんなに言ってもらえて、ももはファンの方と一緒に頑張っていくぞっていう気持ちが、更にパワーアップしました。
もものファンの方、ファンじゃない方も朝早くから生で配信見に来てくれて、星投げ、カウントギフト、ありがとうございました。嬉しかったです。
朝はみんなお仕事で忙しかったり眠かったりするのに、面白いコメントをして、ももを笑わしてくれて、ありがとうございます。夜も変わらずみんなコメント面白くて楽しかったです。ももは毎回笑ってばかりだったような気がします。カラオケやダンスをすると、コールをしてくれたり、みんな優しくて毎日感謝しかありませんでした。
結果は、みんなが一生懸命応援してくれたのに、期待に応えられなくて、ごめんなさい。
でも、今回イベントに参加して、それ以上にファンの方と気持ちが一つになって、凄く嬉しかったです。
ももにとって…(涙で手紙が読めなくなる)。
みんな応援してくれる気持ちが嬉しかったです。
4位との差が大きくなっても、みんな諦めずに毎日ももの順位を上げようとしてくれて、本当に嬉しかったです。このイベントで初めて「#ももたんをbisまでお届け」で拡散してくださいってお願いしました。
今までももは「#〇〇」でお返事してください、拡散してくださいって言ったことがなかったので、今回お願いしてみて、SHOWROOMは面白い楽しいコメントをしてくれてるのに、「#」では、みんな真面目にもものことを考えてくれて、善意を上げたいっていう気持ちが凄く伝わって、嬉しかったです。
ファンの方ってこんなにもものことを思ってくれてんだなって、分かりました。
毎日ありがとうなんだけど、このイベントの一週間、ほんとにありがとうございました。
本当に本当にありがとうございました。
直接ありがとうを伝えたいけど、今は無理だから、また握手会・劇場が再開されたら、直接御礼を言います。
本当に一週間ありがとうございました。
明日からもまた、毎日アイドルは続くので、応援よろしくお願いします。
みんな大好きです。
ももより」
この手紙を読みながら、平野さんとファンの方々の関係って本当に素晴らしいなと感じました。前田さんが考える「熱量」を感じる関係だと思います。
しかし、ももたんの「熱量」は徐々に運営にも伝わっていきます。
そう、若手で作られた青空片想い選抜です。
あまり、ももたんを意識してなかった僕のような、はぐれSKE48ファンでもパフォーマンスで、「爽やか~」と目を細めながら惹きつけられたものです。
そして、「熱量」の関係で言えば、忘れてはならないのが「大富豪は終わらない」のイベントです。
これまでも何度かCMに出ていましたが、ドラマの出演権をかけてのこのイベントでは、ファンの皆さんとももたんが「熱量」と共に進みます。
そして、彼女は見事に1位を獲得します。連続でどうぞ。
いよいよドラマの収録。
完成版は今でもyoutubeで観られます。
本人の性格とは少し違うかも知れませんが、そこが演じることの面白さ。
正直に書くと、ショートフィルムで果たしてどこまで8人の良さを引き出せるかと心配だったんですが、これが良くてですね。
特にももたんが静かに証拠を突き付けていく彼女の演技に引き込まれました。
「熱量」は先輩メンバーにも伝わっています。
須田亜香里が書いた生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「大好きなももたんへ
15歳のお誕生日おめでとう。
私はあなたの初恋の人です。誰か分かったかな?
お手紙かけて嬉しいです。
出会ったのはもももたんがまだ小学生の頃。ももたんがSKE48に入ってくれたから出会えたね。
SKE48に入ってくれてありがとう。
ももたんは若さが武器になる一方で、デビューしてからも劇場公演に立てる時間が限られていて、悔しい思いをしたり、我慢しなきゃいけないことがあったよね。
でも、だからこそももたんは当時も今も変わらずにできることには『これでもか!』ってぐらい全力で挑戦しているのだと思います。
その姿が本当にかっこよくて、可愛くって、最高にアイドルだと思います。
ももたんのファンの皆は絶対幸せだと思う。私ももたんを見ていると本当に幸せだから。いつも頑張り屋さんなももたんが大好き。泣いてるところも、はしゃぎすぎてうるさい時も、うんちが大好きなところも全部全部大好き。
でも、もう私も身長を抜かされたし、そのうちうんち好きじゃなくなったり、大人になっていくのかな?と思うと少し寂しい気もするけど、結局私はどんなももたんも大好きな自信がある。ももたんのハートが大好きだから。
これからも成長していく姿を日々見られることが楽しみです。
ファン思いで頑張り屋さんなももたんは『もっと頑張らなきゃ』とか『これ以上どうしていいかわからない』と不安になることもあると思うけど、悲しい気持ちにならないでね。迷ったり悩んだり苦しかったりするのは、自分がそれだけ本気で向き合っている証拠だから、ちゃんと自分の頑張りを認めてあげてね。
ダメだから悩むんじゃないよ。がんばれているから悩むんだよ。
答えはひとつじゃないから色んな人に相談して、ワクワクしながら探していこう。
私にもまたいつでも頼ってね。両思いなんだから遠慮しちゃダメだよ。
そしていつかももたんにたくさんの後輩ができた時、悩んでいる後輩がいたら同じように助けてあげてね。ももたんはきっと背中を見せてくれる先輩になれると思うよ。
ももたん自身がアイドルでいることを楽しんで、心から笑顔でいてくれたらそれがももたんの大切な人の笑顔になるよ。
これからも嬉しいことに悔しいことに色んな気持ちに正直でいられるももたんでいてね。
ももたんの夢は皆の夢、私の夢でもあります。
これからもアイドルとして色んな形で私たちを楽しませてね。
これからもずっと好きだよ~。
SKE48チームEリーダー、須田会・須田亜香里より 」
初めてこの手紙を読んだ時は、「だーすー、卒業するのか!」と心配になるぐらいすごい未来へのリーチがある手紙で、ももたんとファンの方との関係や「熱量」が伝わってくる素敵な手紙でした。
握手会というアイドルとファンのインタラクティブを加速させた場で、アイドルとしてのアイデンティティを獲得していった(あくまで広義の意味での)須田亜香里が、SHOWROOMという同じくインタラクティブの場で人気を獲得していったももたんへと送るメッセージと考えると、これは凄く深いものがあるのではと思います。
ファン思いであり、悩みながらも成長していく。
そんな誠実で熱量のある彼女の笑顔は、やっぱり見ていてこちらも笑顔になります。
アイドルの身近さが10年代よりも加速していく20年代。果たしてももたんは、次にどんな展開を見せて行くのか。勿論、遠い視点だけではないです、明日の配信を楽しみにできる存在、ももたんが持つ「熱量」は20年代のアイドルのスタンダードになっていくかも知れません。彼女が作る新しい文体こそが「握手会2.0」へのヒントかも知れません。
こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。