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忘れられない卒業発表

 先日、河出新書から発売された小説家の高橋源一郎さんと書評家の斉藤美奈子さんの「この30年の小説、ぜんぶ」が面白いです。
 「文学」で「社会」を解体していけないか、という試みの本で、とんでもない量の本を読んでいる二人だからこそ、並べられる本のチョイスが秀逸でした。
 その1冊だけでは実像が見えてこなくても、同時代の作品を並べることで、だんだんと立ち上がって来る社会像がありました。
 さて、この本の冒頭と終盤は、緊急事態での文学が語られます。
 冒頭が2011年3月11日の東日本大震災に発表された作品。
 終盤が2021年のコロナ禍に発表された作品。
 どちらも緊急事態から生まれた言葉たちで、それは、敗戦直後の坂口安吾の作品やカミュの1940年代に発表されたカミュの「ペスト」にも似ています。
 緊急時に心に響く言葉や作品もあれば、日常では心に響くのに緊急時にはちょっと読むのがキツイものもあります。

 先日、僕の推しメンであるSKE48の10期生、五十嵐早香さんが卒業発表をしました。
 まあ、なんというか、凄まじい無力感に苛まれましてね。
 noteの別の記事に書いたのですが、自分の決意を中原中也の「月夜の浜辺」の釦のように、どうしても捨てられずにいたものです。
 話を戻すと、SNS上での多くのメンバーやファンの方々の言葉が、「まるで透明になったみたい 全部自分をすり抜けていく」という布施明の「少年よ」みたいな状態になりましてね。 
 卒業発表した時のショックもなんですが、日常生活でじわじわとやってくる悲しみの方がきつくてですね。
 宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」に通じる依存が自分の中にもあったのか、とゾッとしました。
 「このままではいかん!」と鎮魂の(死んでないですが)意味をこめて緊急企画を考えました。
 

 早速ですが、皆さんの体験を見て行きましょう。

2012年卒業発表

 まずは、天河明人(あきにゃん)( @akiten7 )さんの体験から。

 今出舞さんは、2012年4月23日に卒業を発表しました。
 彼女が卒業公演の時に言った言葉は、未だに様々なことを考えさせられます。「推す」って何だろう?「報われる」って何だろう?そんな言葉が頭の中でぐるぐるします。
 松井玲奈さんの著書である「ひみつのたべもの」の中に彼女に関する記述が出た時に、ああ、今でも仲良くやってるんだなあ、とほっこりしたのを覚えています。 


 次は、マルーンキティ( @hkmaroon9000 )さんの体験から。
 

 平田璃香子さんは2012年10月23日にダイアモンドホールで開催された『制服の芽 出張公演』で卒業発表をしました。
 平田璃香子さんが初代リーダーを務めたというのは、SKE48にとってとても大きなことだったのではないか、と過去の映像を観ていると思います(特にメイキング映像や円陣での何気ない目線の持って行き方なんかが)。
 僕の初めての推しが中西優香だったので、偉大な平田さんの後に果たしてチームSやSKE48を背負っていけるのかが心配だった思い出があります。
 この記事の募集中に他の平田璃香子さん推しだった方からDMをいただいたんですが、現在活躍している古参メンバーたちのロールモデルにもなっていたことも知りました。それだけ、生まれたばかりのグループの柱となる大事な存在だったんだと思います。
 そんなメアリーダーに対して、ファンの方々のリクエストアワー2012での「羽豆岬」のプレゼントは本当に粋だなあ、と思います。


 凄く「箱推し」を感じるエピソードで、競争が主流だった48グループにおいて協奏ができた素晴らしいことだったと思います。
 彼女が呼びかけたのではなく、多くのファンの方が動いて、メンバーが祝福していた光景は、彼女が愛されていたことが分かる素敵な光景だったと思います。
 

2013年卒業発表



 次は、マンチャン( @7VLyCWkNwkRKCto )さんの体験です。


 2013年1月15日、小木曽汐莉さんは卒業発表をしました。 
 まずは、ツイートで書いてくださいました、向田茉夏さんのアメブロを読んでみましょう。


 もう、ブログの行間の大きすぎる空白が、言葉にならない言葉たちのようで、読みながら彼女の心に空いた穴の大きさを感じさせます。
 マンチャンさんの「膝から崩れ落ちた」という言葉が、絶望感の大きさが伝わってきます。これからを予感させる発信をしていただけに、余計に衝撃が大きかったと思います。

 ううむ、こちらの追加ツイートからも衝撃の大きさが分かりますね。

 次は、ミンツ( @loveoforegon )さんの体験です。

 小林絵未梨さんは、2013年1月15日に卒業を発表しました。 
 僕のブログをよく読んでいる方なら、気付いてらっしゃった方もいたかも知れませんが、まずはあいあいとなるぴー、そして、先日はなるちゃんと劇場を支えてくれたメンバーについて書いてきました。
 そして、なるちゃんについて書いていた時に浮上してきたのが、彼女なんですよね。
 今出さんの時と通じる本人の頑張りと活躍の場のバランス、「報われる」とは何かを考えさせられました。握手会のエピソードは目頭が熱くなりました。
 いずれ彼女については、書きたいと思っています。

 次はエドよっすぃー@さきぽん8年間ありがとう( @EDrenalove )さんのコメントです。

 一つ補足しておくと、最後のツイートの前に僕が「チョコの奴隷」の発売日を間違えていたことがあります。申し訳ないです。
 さて、エドよっすぃーさんの「いったい何が起こってるんだ」というコメントは、多くのSKE48ファンの方が同じ戸惑いを抱いたのではないかと思います。
 くーみん、秦さんの卒業もそれぞれ衝撃でしたね。

2015年卒業発表

 次は岩崎貴能(いわさき きよし)( @shiokaze8001 )さんの体験です。

 古川愛李さんは、2015年2月1日に卒業発表をしました。
 彼女の卒業発表を知った時に、ふと、色々なチームやユニットから彼女を引き算しました。すると、彼女が作っていたチームK2や二次元同好会の空気の良さの基盤を彼女が作っていたんだなあ、と改めて意識させられました。
 卒業してからも、変わらずにSKE48を好きでいてくれるのも嬉しいです。

 次はみのるん(井川実)@京都( @ikawa_don )さんの体験です。

 荻野利沙さんは、2015年2月4日に卒業発表をしました。
 まゆゆも注目の5期生だった彼女は、研究生として6期生たちをかおたんやわんちゃんと一緒に育てた大事なメンバーでもあると思います。
 卒業発表後に会うことが出来なかったという悲しみは、僕も凄く共感できます。
 そういえば、推しがデビューしてから一度も顔を合わせたことがないことに今、気付きました。

 次はきくりん( @marukiku042 )さんの体験です。

 松井玲奈さんは2015年6月10日に卒業を発表しました。
 玲奈ひょんの卒業発表というSKE48の歴史の中でもターニングポイントの一つである出来事だと思います。
 僕が卒業を知ったのは、一夜明けてからですが、期待と不安で言えば「不安」の方が大きかったのを覚えています。
 それはトヨタスタジアムでの卒業コンサート発表ぐらいまで、僕の頭の中で漂っていました。
 Tokyo WR( @MitiWr )さんも同じく玲奈ひょんの卒業を挙げてくださっていますね。

2017年卒業発表


 次は3001年宇宙の旅( @3001nenucyu )さんの体験です。



 
 大矢真那さんは2017年6月26日に卒業を発表しました。
 そして、松井珠理奈さんは、2020年2月7日に卒業発表しました。
 どちらもSKE48にとって大切な存在です。
 だからこそ、卒業発表は衝撃でもありました。
 特に二人の関係性を考えると、同じタイミングになるのでは、と僕的には思っていました。
 真那のSKE愛を考えると、いつかは来るでしょうけど、そのいつかがずっと先だと思っていただけに衝撃でした。

2018年卒業発表

 次は、まこっぴ@ほののんほのの~♪ヽ(●´∀`●)ノ( @KsDD_makoppi )さんの体験です。


 市野成美さんは2018年2月15日に卒業発表をしました。
 劇場の守り人であったなるちゃん。
 彼女の卒業は、まさか、この日が来るとはという気持ちと、ひょっとすると劇場にはなるちゃんがいるから、という気持ちもあったのでは、という得も言われぬ罪悪感を抱いたのを覚えています。
 同じくたいち(@onedrop1979 )さんもなるちゃんを挙げています。

 なるちゃんが持つ説得力というのが、僕はあると思っていて、なるちゃんがキャプテンというのもそこに繋がるのでは、とふと思いました。

 次はBJ-STARFIELD(BJ スターフィールド(ナウルと同い年)( @174cd7adeefc43f )さんの体験です。

 一色嶺奈さんは、2018年12月28日に卒業を発表しました。
 れなひゅーに限らず、ドラフト2期生の5人は一人一人が違うベクトルの個性があって、Creepy Nuts「かつて天才だった俺たちへ」の中で「いくぜ、1、2、3、4、5」という歌詞が大サビの前にあるんですが、毎回、ドラフト2期生5人の顔がインサートされます。
 話をもどすと、ひゅーさんの総選挙速報8位からの快進撃は、本当に素晴らしくてこれからの未来を感じさせられるものでした。
 BJ-STARFIELDさんのご自分にたいする憤りは、僕も先日、これでもかというほど感じてましてね。
 卒業した後も、彼女がSKE48での経験を大事に思ってくれていたというのが凄く嬉しいですね。
 いつか、自分が感じた無力感の棘が緩むことがあるのかな、とふと意識しました。

2019年卒業発表

 次はよかよかたん( @yokayokatanaraz )さんの体験です。

 小畑優奈さんは2019年2月12日に卒業発表をしました。
 正直、珠理奈センターからゆななセンターへ2作をかけてセンターを継承して行っただけに、ゆなな推しでもない僕でも、「いったいこの先どうなるんだ!」と衝撃を受けたのを覚えています。
 SKE48を推していて5本の指に入るぐらい衝撃的な卒業発表でした。

 次は、氷の国のまる。( @manbou7773 )さんの体験です。

 北川綾巴さんが卒業発表をしたのは、2019年7月2日です。
 珠理奈がいない2018年夏のチームSを引っ張っていった彼女は、センター経験者でありチームSリーダーという稀有な存在になっていました。
 未来のセンター候補たちを支えながら、自分も活躍していくというモデルを作り始めていただけに、非常に卒業は残念な卒業発表でした。
 もう少しだけ居てほしかった、そんなメンバーの一人です。

 次はアオイ( @rWaBtPw7tSPIJL9 )さんの体験です。

 高柳明音さんは、2019年10月5日に卒業発表をしました。
 いやあ、平和にミッドナイト公演が終わるなあ、と思いきや、突然の卒業発表で衝撃を受けたのを覚えています。
 「屋台骨」、「本当に報われていたのか」という二つの言葉が凄く印象的でしてね。
 ちゅりが主演した「マジカルラジオ」やレギュラー番組の「暗黙の了解」のおかげで、より深くSKE48のことを好きになれました。
 しかし、選抜についてはナンバー2、ナンバー3ポジションが多く、一度、彼女がセンターの曲というのも見てみたかったな、とコメントを読みながら思いました。 
 
 次はゆうくん@なるぴーぽー( @yukun0757 )さんの体験です。

 片岡成美さんは、2019年12月15日に卒業発表をしました。
 彼女が頑張った量と報われた量が果たしてつりあっているのかは、分かりませんが、なるぴーというシアターの女神が、皆さんから愛されているのが分かるエピソードですね。2020年12月29日に行われる予定だった卒業公演は、2021年1月20日に行われることになりました。
 劇場近くのお店でなきながらスマホで観ている方々というのが、劇場には入れないけれど、せめて近くで観たいという思いが伝わってきます。

2020年卒業発表

 次はしっぽ猫( @MAXlina226 )さんの体験です。

 木内俐椛子さんは、2020年10月15日に卒業を発表しました。
 りかぴに関しては、「渚のイメージ」のWセンターの一人として戦列にデビューした印象がとても強くてですね。「うおっ!10期はこの二人がまず前に出るのか。若い!」という印象が非常に強かったです。
 彼女が選んだ道、「辞めたくない」という言葉。
 youtubeの公式動画で「渚のイメージ」を観る度に、色々な「if」を考えてしまいます。
 彼女について、SKE48で残っている記録は少ないですが、それでもいつか書いてみたいと思う卒業発表でした。

2021年卒業発表

 次は、さかえ( @108Konbu )さんの体験です。

 野島樺乃さんは、2021年4月21日に卒業発表をしました。
 アイドルの卒業するタイミングというのは様々ですが、彼女の場合、さかえさんが挙げているように、SKE48に在籍したまま活動の幅を広げていくという選択肢もあったと思います。
 しかし、それでもゼストに所属しながら新しい歌手活動をしていくというのは、これからの歌で勝負していきたいと思っている後輩たちの良いロールモデルになっていって欲しいなと思います。
 卒業公演を観るまで受け入れられないという言葉も凄く共感できますね。

 次はsunougon( @kASSLfw46fhCTj2 )さんの体験です。

 深井ねがいさんは、2021年12月23日に卒業を発表しました。
 推しの卒業の実感が湧かないというのは、まさに僕が今、リアルタイムで体験していることなので、凄く分かります。
 そして、卒業したことで、これまで推しがくれたものが、見えてきたというのが良いですね。
 ちなみに、深井ねがいさんは現在ソロ活動を頑張られていますね。
 どうか、誠実な人柄が新しく出会う人達も幸せにしていって欲しいです。

2022年卒業発表

 最後に栄、覚えていてくれ。 SKE48の楽曲と映像( @SKE90947313 )さんの体験です。

 五十嵐早香さんは、2022年2月15日に卒業発表をしました。
 こうして書いて行くと、冒頭で書いた推しの卒業もSKE48という大河の中のわずかな支流に見えてきました。個人個人にとってはとても大きな悲しみや絶望も、喜びも楽しみも、全部この大河が飲み込んでいく。
 大河に流れる水はメンバーたちの汗や涙かも知れません。
 いや、ひょっとすると、我々ファンの涙や叫び声も含まれるかもしれません。
 この大河は時に激しく、時に静かに、流れ続けます。
 そんな大きな河だからこそ、たまに手をつけて、時に掬ってみます。
 水なので指の隙間からどんどん零れて、掌はすぐに乾いて、僅かな一滴しかのこりません。
 しかし、そのわずかな一滴のドラマを僕は愛おしく思います。
 その一滴はアイドルのドラマかも知れませんし、推しているファンの方のドラマかも知れません。
 ただの一滴でもその人にとってはとても大事なものです。
 だから、これからも、それを逃さずに見て行きたいと思います。

 皆さん、本当にコメントをいただき、ありがとうございました。
 僕にとっては、何よりも響く緊急時の言葉でした。
 残り僅かな期間ですが、最後の瞬間まで推していきたいと思います。

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栄、覚えていてくれ
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