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おすすめの本「鯱もなかの逆襲」

 いきなりですが、僕が住んでいる愛媛県宇和島市は、過疎化が進んでいて、事業継承もなかなか上手く行っていません。
 市役所で働いていた頃、町おこしなどで都会から若い方が働きに来ても、半年から1年で去っていくということもありました。
 もちろん、事業継承も上手く行っているケースは少ないです。
 どちらかというと、ご高齢の方が補助金などの関係で廃業届を出しにくる現場に立ち会うことの方が多かったです。
 町おこし協力隊の方に話を聞くと、産業に携わる方の多くが、「うちは何もないから」とか「何できたん?」と言っていたそうです。最初は謙遜かと思っていたそうですが、本当にそう思ってらっしゃるようで、「こんなに素晴らしいものがあるのに」と語っても「いやいや」と言われるばかりだったそうです。
 ずっとその場所にいる方やずっと作り続けている方よりも、ちょっと「よそ者」の方の方がそのものの姿を正確にみられることもあるかもしれません。


 僕がそんなことを考えたのは、古田憲司さんの「鯱もなかの逆襲」を読んだからです。
 表紙には「金なし、コネなし、従業員なし」という絶望的な文字が並んでいます。ただ、これは本当に、今地方で広がっている状況です。「この状況でいったいどうやって。普通なら終わりだぞ」と思いながらページをめくりました。
 まず、第1章のは、まさに今日本の様々な歴史あるお店や会社で起こっている現象だと僕は思いました。後継者不足と事業縮小。普通なら、ここで終わってしまうはずです。実際に先代の方は店をたたむ準備もされていたそうです。
 しかし、それまで「鯱もなか」に携わっていなかった「よそ者」の古田さんの目から見た「鯱もなか」は、とても魅力的に映ります。この「よそ者」の目を持っている人が周囲にいるかいないかが凄く重要だと思いました。もちろん、慰めや気を遣ってという言葉もあるかも知れませんが、本当に良いものは人の心を動かすと思います。自分のやっていることの魅力を再認識することで、モチベーションが全く変わってきますよね。閉じる方に行くのではなく開いていく方に変わっていく気がします。

 開いていくというのは、今までになかった方法を試していくことにもつながると思います。古田さんは、これまで「元祖 鯱もなか」でやっていなかったことをどんどん試していきます。SNS、プレリリース、そしてこれからのメタバース。固定観念に縛られず、様々なことを試行錯誤していきます。
 そして、「バズった時のための準備」が書かれている第3章は目から鱗で、確かに「バズるといいな」と思いながら投稿することはあっても、「バズった時にどういう導線でお客さんを流して、どう好きでい続けてもらうのか」ということまでは意識できていませんでした。
 
 また第5章の「小さな事業体が戦うための秘訣」も非常に勉強になりました。特に自分が属するコミュ二ティーが、どれぐらいこれに当てはまっているだろうと考えさせられました。特に後半は、そこまでやるなんて、と言いたくなる面倒見の良さというか、情けは人のためならずというか、とても勉強になりました。

 で、ここまで読んで、「どうせ、あれでしょ? 経営者の成功話をゲップが出るまで聞かされるんでしょ? 自社製品の自画自賛とか?」と思われた方もいるかも知れません。しかし、この本の中では古田さんが、失敗したことや悔しかったことも書いてくださっています。「鯱もなか」の現在地やこれから目指すところまできちんと書いてくださっています。
 また、「それは古田さんだから出来たんでしょ?」と思われる方もいるかもしれません。確かに、古田さんは「元祖 鯱もなか」を継ぐ前に様々なお仕事をされていて、会社を復活させるための「足腰」というか「基礎体力」にあたるものはあったのではと僕は思います。ただ、僕らでもマネできるノウハウが沢山、書いています。えっ、ここまで教えてもらっていいんですか?というものもありました。

 この本の中では、「元祖 鯱もなか」さんのファンが雪だるま式に広がっていくことも書かれていますが、毎回、チャンスが訪れた時の機転の利かせ方は、スタートアップ思考的というか、このスピード感も見習いたいな、と思います。特に、どの店舗にどのコラボ商品を置くかは勉強になりました。
 ちなみに、僕はSKE48ファンなので、中坂美祐さんや野口由芽さんの名前が登場するのも嬉しくて、最後の対談で出てきたあるメディア化の話は是非、実現してほしいな、と思います。
 まだまだ挑戦し続ける「元祖 鯱もなか」さん。
 また5年後ぐらいに「逆襲」の続編が出たら読んでみたいなあ、と思っています。今度は、「元祖 鯱もなかの帰還」ですかね(スターウォーズ風です)。

 机上の空論ではなく、実際に自分でやってみたからこその当事者の説得力を感じる「鯱もなかの逆襲」。あなたが今、頑張っていることにきっと役立つと思いますし、復活までの熱いドラマもあります。
 是非、読んでみてください。

  

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栄、覚えていてくれ
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